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「週刊ポスト」10.1日号
平成22年9月20日(月)発売
小学館 (通知)
勝って憶える菅首相の右往左往哀し──
望まなくても「闇将軍」になる小沢一郎と日本の悲劇
〈政界再編の胎動〉
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〈死せる孔明 生ける仲達を走らす)とは三国志の故事だが、代表選で勝者となった菅首相とその支持者たちは、敗者である小沢一郎氏の影に怯えて早くも内紛を始めた。
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代表選に放れ、「一兵卒として頑張る」と宣言した小沢氏だが、党内での力の大きさは変わっていない。
そのことを図らずも証明したのは、代表選勝利直後の菅支持派の内紛劇だった。
続投を決めた菅首相は、「3年間で経済を立て直す」と強調して長期政権への意欲をにじませた。それを実現するために、菅首相は国会議員の半数、地方議員と党員・サポーターの4割の支持を集めた小沢氏に、党運営への協力を呼びかける動きを見せている。
「脱小沢」はあくまで反小沢勢力を結集して代表選を勝ち抜くためのスローガンであり、総理の座を守るためには、今度は「脱・脱小沢」に転向する必要があるとの計算である。
菅グループの大幹部は、菅氏にこう忠告したと語る。
「総理が解散しない限り、今後3年間は総選挙も参院選もないから、国政選挙に負けて退陣に追い込まれる心配はない。たとえ支持率が下がっても、小沢グループと手を握って党内基盤さえ固めておけば、少なくとも代表任期の2年間は総理を統けられる。
しかし、党内に200人もの反主流派がいる状態のままでは政権運営はおぼつかない。長期政権を狙うには、ポスト菅の有力候補である前原誠司氏や岡田克也氏、仙谷由人氏らに力をつけさせてはならない。彼らは支持率が下がった途端に小沢グループと手を組んで総理の寝首を掻きにくる。決して小沢さんを反主流派に置いてはいけない」
代表選翌日の菅−小沢会談は9分で終了し、小沢氏は「人事は代表の専権事項」と一切注文はつけなかった。それでも、菅首相は改造人事で「脱小沢」を修正しようと右往左往した。
最初に迷走したのが、幹事長人事だった。枝野幸男氏が参院選大敗の責任を取って辞任することは既定路線だったが、代表選投開票の数時間後に菅陣営内で「仙谷幹事長−前原官房長官」説がばっと広がった。
「200人の小沢支持派を抑え込むには強力な幹事長でなければ無理。仙谷さんが党に睨みを利かせ、前原さんが官房長官として次期総理の修行をする」(官邸筋)という構想だ。
実は、6月の最初の菅内閣の組願の際、菅首相は閣僚の大半を鳩山内閣から引き継ぎ、「脱小沢」路線の象徴として仙谷官房長官と枝野幹事長を決めただけで他の人事は仙谷氏の主導で行なわれた。
その結果、仙谷官房長官−枝野幹事長という凌雲会(前原グループ)コンビが官房機密費と党の政務調査費という2つの金庫と人事権を握り、菅グループは蚊帳の外に置かれた。
組閣当日、国家戦略相に内定していた菅側近の荒井聡氏が人事に納得できず、早朝4時に番記者の前で菅首相を電話で叩き起こし、「なぜあなたを3回も裏切った仙谷が官房長官なんだ」と悪態をついた一場面もあったほどだ。菅氏が敗れた過去の代表選で仙谷氏が対立候補の支援に回ったことを指摘した発言である。
そこで今回、菅首相は代表選中の1年生議員との会合で、「今回は政務官人事まで私が決める」と脱仙谷≠宣言し、人事権を取り戻しに動いた。
その機先を制するように流された「仙谷幹事長−前原官房長官」は、凌雲会が党と官邸の金庫を握ったまま前原後継へのレールを敷く構想であり、菅グループからは「また仙谷辞令だ」と批判があがった。
菅首相は仙谷主導人事の阻止に乗り出した。仙谷氏の官房長官留任を決めて閣内に封じ込めると、幹事長には民社協会の川端達夫・文部科学相の起用にこだわった。「中間派の旧民社党グループから幹事長を選び、挙党態勢をつくる」というのが表向きの理由であるが、本音は別にあった。
川端氏は党内で首相候補とは見られていない。公認権を持つ幹事長に前原氏や仙谷氏を据えると、党の実権を掌握して首相のライバルになりうるが、安全パイ≠フ川端氏なら心配はないという計算だ。
その後、「岡田幹事長」がすんなりと決まらなかったことも含め、民主党内の権力闘争は、代表選の開票の瞬間に「菅vs小沢」から「菅vs仙谷・前原」に切り替わっていたことを露呈した。
(写真)細野氏の離脱で前原グループに激震
「細野脱会届」に前原は狼狽
一方、小沢氏は菅官邸で勃発した内紛に一切言及せず、小沢支持派の有力議員も「国会が開くまでは地元に引きこもる」「しばらくはゴルフ三昧だ」などと、高みの見物の構えを見せている。
というのも、小沢支持派は敗れたとはいえ、得たものは小さくなかったからだ。
これまで小沢グループの中核はベテラン組の山岡賢次二光国対委員長、当選3回の松木謙公氏ら一新会の若手議員や1年生議員などであり、人数は多くても大臣や党の中枢を任せる人材が不足していた。
ところが、代表選では別のグループだった原口一博氏、海江田万里氏、細野豪志氏のサンフレッチェ≠ェ小沢支持を表明したほか、樽床伸二氏、松本剛明民ら当選4〜5回の有力議員が加わり、小沢支持勢力だけで「小沢政権のシャドーキャビネット」を組織できるだけの陣容が整った。代表選のテレビ討論番組でも、それらの政策通の論客が菅支持派の蓮舫氏らと政策論争を展開した。
「小沢さんが代表選に出馬したのは、総理として民主党の次代を担う人材を糾合するため」(小沢側近)という。小沢氏は代表選出馬で200人の勢力と、将来の後継者候補たちを手に入れたというわけだ。
特に今後の党内勢力図に影響を及ぼすのが、菅政権の中核である凌雲会のホープだった細野氏が小沢氏についたことだ。
細野氏は代表選直前、親しい議員などに「私の夢は前原政権をつくること」と語っていた。だが、代表選告示の2日後、
「政策で判断した。小沢氏が主張する一括交付金の問題は、国と地方の政治の仕組みを変える大改革で賛同できる」
と小沢支持を表明した。党内では「飛ぶ鳥落とす勢いの凌雲会のホープだから、菅支持に回れば入閣は確実。いずれ凌雲会を継ぐ立場を棒に振るとは」と驚きの声が上がり、凌雲会が仕掛けた偽装小沢支持″ではないかとスパイ扱いする報道まであったほどだ。
事実はもちろん違う。小沢バッシングに気を取られた大マスコミは気づいていなかったが、実際は細野氏の小沢支持表明の前日、菅陣営を大きく揺るがす「事件」が起きていたのである。
細野氏はその日、前原氏に「けじめをつけたい」と面会を求め、その場で凌雲会の事務局長辞任を申し出、さらに脱会届を突き付けていたのである。
前原氏は衝撃を受けた。思いとどまるように説得を重ね、「いつでも戻ってきてほしい。君のやりたいことがあれば希望はかなえる。だからこれは私が預かっておく」と脱会届を受理しなかったという。そして、菅陣営の本陣≠ノ内紛ありと知られないよう、この出来事は代表選が終わるまでグループ内の議員にさえ秘密にされたのである。
だが、細野氏は前原氏とたもと袂を分かったことを小沢氏の周囲に明かしており、そのこと自体、もはや凌雲会に戻る気はなく、「小沢の後継者候補」として将来の道を目指すことを選んだと見るべきだ。 同じ反小沢派の花斉会(野田グループ)からは、やはり将来を嘱望されていた松本氏が脱会して小沢陣営に加わっており、細野、松本両氏の離脱は、反小沢の主力部隊に大きな亀裂が入ったことを意味している。
ポスト菅を考えると、今回の菅支持派からは代表経験者である前原氏、岡田氏のほか、野田佳彦・財務相が名乗りを挙げると見られており、票が割れる可能性が高い。
その時に小沢氏が再出馬するのかはさておき、小沢陣営、樽床氏、原口氏らが独自の政策グループづくりに乗り出して、次を見据えた準備を進めている。
そうなれば「200人」の議員を抱える小沢氏の動向がキャスティングボートを握るのは間違いない。代表選で敗れながらも小沢氏のキングメーカーとしての影響力は高まった。
小沢「自民分断工作」が潜行中
本誌は「幻の小沢内閣構想」の一端を掴んだ。小沢氏が選挙中に手掛けていた「政界再編計画」である。
参院で少数与党である菅政権は、野党の協力がなければ法案を1本も成立させることができないという厳しい国会運営を迫られる。来年の通常国会では予算関連法案の審議が難航し、4月にも政権の危機を迎えるとの見方が強い。
菅首相や仙谷氏は野党との部分連合に期待しているが、自民党の谷垣禎一・総裁は「一刻も早い衆院解散に追い込む」と敵に塩を送る気配はない。みんなの党の渡辺喜美・代表も「菅内蘭は短命」と言い切る(48nにインタビューを掲載)。
続投した菅首相が国会運営に展望を描けないのとは対照的に、小沢氏は代表選のさなかに自民党分断工作を仕掛けていた。
なぜか自民党議員が複数の民主党議員に接触し、「小沢を支持すれば次の総選挙で組織票を回す」と切り崩しに動いていたのだ。
民主党の若手議員が証言する。
「旧知の自民党議員から2つの全国団体の幹部を紹介され、『これまではあなたの選挙区では自民党候補を応援してきたが、小沢内閣ができれば再編絡みで大きな動きが起きる。その時はあなたを全力で応援する』といわれた。小沢さんが国会のねじれ解消のために大きな布石を打っていたことを知り、小沢支持を決めた」
自民党分断工作の仲介役を務めた議員の証言も得た。
「小沢内閣になれば自民党の票田は徹底的に切り崩される。さらに自民党の一部には、もし小沢氏が公明党を連立に引き込めば、政界再編で与党入りするチャンスがなくなるという焦りもあった。だから公明党が動く前に、自民党の医療や農業関係などの組織をバックにする参院議員を中心に10人ほどが新党を結成し、小沢民主党との連立に動く構想が進められていた。代表選での小沢支援はその一環だった」
菅首相の続投によってこの計画は潰えたかに見えるが、実はまだ消えていない。
「菅首相が解散を余儀なくされ、自民党に政権奪回のチャンスが出てくれば計画は白紙に戻る。だが、総辞職となれば、再び小沢政権の気運が高まり、あの盟約が動き出す」(同前)と、現状は「ステルス部隊」として待機している状態なのだ。
菅首相は政権維持のために小沢氏の数を必要とし、仙谷氏らは「小沢一郎」という仮想敵がいなければ結束を維持できない。与野党のねじれを解消する政界再編さえ、小沢氏の剛腕がなければ進まない。かといって、その小沢氏が表の権力者として国民によく見える場所で政治を行なおうとしても、大メディアの作り出す世論に潰され、一兵卒になることさえも許されない。
小沢氏は自身が望むと望まざるとにかかわらず、「闇将軍」というレッテルを貼られる立場に置かれている。
(写真)参院の一部は与党入りに色気(自民党執行部)p-44
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