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沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海内で中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突した事件で、那覇地検は9月24日、公務執行妨害容疑で逮捕・送検し、拘置していた中国人船長を、処分保留のまま釈放すると発表した。
船長は8日未明に、中国籍の大型トロール漁船を日本領海内の尖閣諸島で操業。停船命令を出して追跡中だった石垣海上保安部の巡視船「みずき」に漁船を衝突させ、海上保安官の職務を妨害したとして公務執行妨害容疑で逮捕された。石垣簡裁は19日、29日までの拘置延長を認めていたのである。
そもそも、この事件では中国側は「政治解決」を、日本側は「司法解決」を望んでおり、お互い、相容れない状態が続いていた。
もちろん、衝突事件が発生した尖閣諸島沖は日本領海内であり、停船を命じた海上保安庁船に意図的に衝突させたことは、明らかに公務執行妨害罪の国内法で処理されるべき事案である。
しかし、小泉純一郎政権下の04年3月に中国人活動家7人が尖閣諸島に上陸を強行・逮捕されたが、当時、靖国神社公式参拝で中国側と冷却関係にあった小泉首相は高度な政治判断によって拘留することなく強制送還処分としたという前例があった。ましてや相手が民主党政権ということもあってか、中国サイドも当初は同様な政治判断で“一件落着"となると、日本側を甘く見ていたフシがある。
今回の日本政府の対応は、9月7日午前9時過ぎに衝突事件発生から12時間経ってから海上保安庁が同船長逮捕を決定したことからも分かるように、その間に当時の岡田克也外相(現民主党幹事長)の判断を仰いだうえでのことだったことは明らかである。
「反中」ではないが原理・原則主義者として知られる岡田氏は幹事長になり、もともと「中国脅威論者」として見られている前原誠司前国交相が外相を引き継いだ。
念のために付け加えると、この漁船がスパイ船だったとか、船長が人民解放軍の兵士だったなどといった報道があるが、こうした事実は100%ない。捜査のうえで海上保安庁や沖縄県警もそう判断しており、また前原国交相も「偶発」と言明していた。
そのうえで今回、問題がエスカレートしたのは、中国の国内事情も大きかった。
国連総会出席のためニューヨーク滞在中の中国の温家宝首相(中国共産党政治局常務委員・序列第3位)は21日、拘留中だった中国人船長を「即時、無条件」で釈放するよう日本に要求。受け入れられなければさらなる対抗措置に踏み切るとして、非妥協・強硬路線を言明した。
中国側はこれまでに、19日に閣僚級以上の日中交流停止を宣言後、22日に奈良市で開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)観光相会合前日に馬渕澄夫国交相が中国の祝善忠・観光局副局長の表敬訪問を拒否したところ、中国代表団は同日夜の同相主催の歓迎レセプションをボイコット。
そして同じ22日、全国知事会に対し10月28日に東京で開催予定だった日中知事交流・フォーラム出席取り止めを通告した。そして今月末に秋田県で開催される日中環境フォーラムへの程永華・駐日中国大使の欠席を伝えてきている。
この背景には中国国内の微妙な政治バランスがある。
中国では胡錦涛国家主席、温家宝首相の主導により、2012年の共産党大会、2013年の全人代において、習近平副主席への権力譲渡が既定路線だとみられてきた。
しかし、ここにきて習副主席の対抗馬とも目される、李克強政治局上級委員・副首相側が巻き返してきていた。さらに江沢民元国家主席ら保守派が対日、対米外交が弱腰だと責め立てる可能性もあった。かつて胡耀邦総書記が対日政策が融和的だとして失脚した例もある。
胡錦涛、温家宝も、今回の事件ではこうした党内のバランスに配慮して、日本に強硬的な姿勢で臨まざるをえない状況にあったのである。
その結果がボタンの掛け違いがおき、そして事態はエスカレートする一方だった。
菅改造内閣が発足2日目の19日に件の中国人船長の拘留延長を決定してから、中国側は日増しには態度を硬化させてきた。中国国内で反日デモから日本商品ボイコットの動きまで出て来ている。さらにはレアーアースの禁輸、さらにはフジタの4人の拘束といった事態まで引き起こしていた。
エスカレーションがこのまま続けば、中国側は程永華駐日大使の本国召還、丹羽宇一郎中国大使への帰国勧告、さらには日本の瀋陽総領事館、広州総領事館閉鎖までも視野に入れているとみられた。
実際、過去にはミラージュ戦闘機を台湾に売却したフランスに対し、広州の仏総領事館を閉鎖した前例もある、ある外務省幹部は「ここ20年間の日本外交の最大の危機だ」と憂う事態になっていた。
では、ここにきて急転直下、事態が「解決」に向けて動いたのはなぜか。
中国側の望む「政治解決」、日本側の望む「司法解決」、どちらも満たせないため、「人道解決」という道を選んだのである。
実は逮捕された中国漁船船長の祖母が逮捕当日である8日に亡くなっていた。中国の風習によれば死後19日、29日、39日目に区切りの葬儀がある。そこで19日目である27日を前に帰国できるようにすることは人道的な配慮となる。もちろん、中国最大の記念日である10月1日の国慶節前、というのも大きい。
こうしたシグナルを、中国側はひそかに官邸へ送っていたのである。
24日の記者会見で、仙谷官房長官は「検察の総合的な判断と理解している」と述べたが、政府内では明らかに「仙谷イニシアティブ」による解決が模索されていた。
今回、中国に強硬といわれる前原外相、斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長のふたりが総理の訪米に同行していない中、23日、仙谷官房長官を中心に関係省庁がひそかに3時間の会議を行ったという情報もある。
自民党は10月1日からの臨時国会でこの問題を追及するつもりでいた。しかし、その自民党もホンネでは中国との全面対決を避ける「解決」を望んでいた。経済界ももちろんである。
考えうる条件の中では、もっとも現実的な「解決」が今回は図られたといえよう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1255
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