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北京発レポート!中国が漁船拿捕事件で
顔に泥を塗られたと怒り狂った本当の理由
〜船長釈放後もなお不安を残す日中間意思疎通の深淵
去る9月22日は、中国では暦のうえで正月に次ぎ重要な祭日にあたる「中秋節」。その日は数日間の日照りの後に降った雨も止み、急激に冷え込んだ。最近の中日関係は北京の秋よりも速く冷え込み、「中日友好」のスローガンも空しく聞こえる。9月29日には中日国交正常化38周年を迎えるが、この間中国では記念ムードよりも、9月7日に尖閣諸島(中国名では釣魚島)沖で逮捕された漁船船長が、釈放されるかどうかの一点だけに関心が集中していた。時事通信によれば9月24日、那覇地検は船長の釈放を決定したが、はたしてこれで中日間に小春日和は訪れるのだろうか。(北京在住ジャーナリスト 陳言)
■ 船長逮捕前後の日本の動きは中国でどう理解されたか
インターネットなどの近代的な通信システムが発達した現在、日本のニュースは中国にすぐ伝わるが、それ以上に「大使召還」(佐藤優氏)、「非常に無礼」(日本の大手新聞)などという言論人、マスコミの過激な言葉が先に飛び込んでくる。中国側からすれば、日本政府は問題の解決を日本の裁判所に任せてから後は動かず、世論は事件報道において、あまりにも冷静さを欠いているように見える。
中国政府も、それなりの行動を取らざるをえない。北京駐在の大使に抗議してもまったく意志が伝わらないのを見て、より効果的な行動を取っていく。
自民党政権時代では、このような現象は中・日の間にあっただろうか。外交の原理原則、透明性は重要だが、問題の解決にならなければ、それは外交と言えるだろうか。しかし、中・日は、今のところ解決の糸口をどのように探っているのか、不明のままだ。
そもそも9月早々、菅氏・小沢氏による民主党党首の選挙に領海問題(菅氏)、尖閣列島問題(小沢氏)が、こつぜんと両候補者の口から出ること自体、中国ではたいへん不思議に思われていた。9月6日に中国で発行部数の一番多い国際タブロイド紙『環球時報』の1面トップの写真は、その前日に領海問題に触れた管・小沢両氏の選挙写真で、そこには「中国を批判して票を取ろうする日本民主党の大物政治家」というタイトルが付いていた。
おりしも翌9月7日に尖閣列島で、中国漁船の船長が逮捕された。共同通信社の中国語サイトで第1報を載せた数分後に、『環球時報』の環球サイトに関連のニュースも掲載された。その日からほぼ本記事を作成する9月23日まで、サイトのトップは、ずっと漁船衝突、船長逮捕関連のものだった。ほかのサイトもほぼ同様の編集方針で、インターネットが普及してから、中国でこれほど長期間にわたって、同じ話題がずっとトップを独占することはなかったと思われる。
9月9日に船長の勾留期間が延長され、9月10日に『防衛白書』の公表、さらにそのあとに西南諸島への防衛力の増強計画など、偶然とはいえ、立て続けに日本側から中国に対抗する動きが多く出た。中国ではどうしても、これは中国船船長の逮捕をダシにして、アメリカの軍事基地を確保、民主党党内選挙の目玉づくりをし、同時に中国脅威論を作り出して日本西南の軍事力を増強していこうとする、日本の「謀略」かのように映る。
中国側は速やかに外交ルートで不快を表した。それは次官から大臣へ、さらに外交を担当する国務委員まで、時間が推移するにつれエスカレートしていく。日本政府からは何の反応もなく、マスコミは中国の抗議に反発し、とくに日本の大手新聞は国務委員の抗議に対して「非常に無礼」と報道した。
日本のマスコミは総動員体制で中国を批判しているかのように見え、中国のインターネット上では、中国を罠に陥れ、顔に泥を塗ったと映っている。またその記事は格好の材料にもなった。日本では国内向けに書いた記事でも、取材で話した言葉は刻一刻中国でも翻訳される。しかも記事全文ではなく、もっとも過激な部分がまず翻訳されていく。その影響もあって、もう中国も本格的に行動を取らないと、訳もなく虐げられていくとも思われた。
19日午前に前原誠司外相がNHKで、中国船船長が逮捕された事件について「今回は私は偶発的な事故だと思っている」と発言して火消しに動き出し、それは中国にもすぐ伝わったが、すでに時は遅すぎた。
■ 国内法で粛々と対応する日本 行動で対応する中国
9月7日以降の日本の主要紙は、「当然の対応だ。政府は国内法にのっとって、厳正に刑事手続を進めればよい」(9月9日付け読売新聞社説)との論調だった。9月21日付けの日本経済新聞の社説には、「圧力を強めれば、日本政府が司法に介入し、船長を釈放すると思っているのかもしれない。共産党支配下の中国と異なり、三権分立の民主主義国家では、そのような手法は許されないことを、中国側は理解すべきだ」と書かれている。
日本国内向けの社説なら理解されるのだろうが、このような論理展開が、はたして中国では説得力を持つだろうか。
9月19日、2度目の勾留延長が発表された20分後に、中国はさっそく、大臣クラスは日本との交流を控える対応をした。翌20日に南京で開かれた第2回中日経営者会議に出る予定だった中国の大臣、副大臣クラスは、すべて出席を取りやめた。それ以降の政府要員が出席するような会合も、ほぼ全部停止された。そうした対応はさらに物品展、文化関連の展覧会、観光と経済、文化、市民生活にまでどんどん拡大していった。
領海問題であるが、日本の国内法で片づけていこうとする日本と、それを譲れない中国。問題の核心は領海問題であるにもかかわらず、「船長の釈放に、中国は圧力をかけている」「中国国内の反日運動が激しくなれば、中国国内の動揺をもたらすから、中国政府はそう簡単に日本を許さないだろう」などという日本の思いが、新聞の社説から読み取れる。
日本政府は国内法で粛々と漁船衝突事件を処理しているのに、なんで中国はだんだんと冷静さを失っていくのか、日本のマスコミは理解できない。中国政府は何度も日本に交渉したのに、日本にはまったく動きはない。中日の意思疎通が、機能不全を招いてしまった。苛立ちで双方は問題の解決になかなか動きだせなくなり、行動だけがエスカレートしていく。
■ 第二、第三の交渉ルートがなく中日関係は本当に冷却していくのか
自民党が政権与党の時代は、自民党内の派閥ルート、さらに野党ルート、宗教ルートなど、中日間にはいろいろな交渉ルートがあり、多くの難題にも出合ったがほぼ大事には至らず、今日の関係を作り上げた。
しかし、民主党はまだ与党になって1年あまり。鳩山内閣の時には「東アジア一体化」という新しい外交コンセプトがあり、中国は鳩山内閣には信頼を置いた。ところが菅内閣となると、もう「東アジア一体化」のコンセプトをほとんど口にしなくなり、代わりに米軍による「抑止論」が台頭している。
透明性の高い外交、原理原則の重視などという建前によって、民主党は中国に対して公式の外交というルート以外に、別のルートを持てなかった。自民党がそんなに早く政権与党から野に下るとは十分予測していなかった中国も、民主党に対して意志を伝達するルートをあまり持っていない。
危険水域に入った中日関係が、そう速やかに回復するとは予測できない。しこりの残ってしまった中・日に、本当の相互理解ができるまでの道のりは遠い。
http://diamond.jp/articles/-/9499
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