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なぜ今、釈放か――。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、24日、●其雄(せんきゆう)船長(41)の釈放を公表した那覇地検の判断には、周辺の漁業者らから戸惑いや憤りの声が上がった。(●は「擔」のつくりの部分)
衝突時のビデオ解析で「立証は堅い」と信じていた海上保安庁の職員は落胆の表情を浮かべ、幹部は、海上警備で海上保安官が萎縮(いしゅく)しないか、などの懸念も出た。
「起訴して当然だと思っていたのに……。国に見捨てられた気分だ」
沖縄県・与那国島の与那国町漁協の中島勝治組合長(44)は、那覇地検の判断に憤りを隠せない様子で語った。
衝突事件以降、現場周辺海域で中国船を見かけることはなかったといい、「せっかく毅然(きぜん)とした対応を続けていたのに、甘い姿勢を見せた以上、すぐに中国の漁船がどさっと来るようになるはず。どうせ政治判断なのだろうが、政府にはがっかりだ」と不満をあらわにした。
宮古島の小禄貴英(よしひで)・宮古島漁協組合長(61)も「今回の判断で、今度は尖閣周辺で我々が中国に拿捕(だほ)される恐れもある。国は尖閣が日本の領土という主張だけは、強く示し続けてほしい」と訴えた。
◇
「こんなことならビデオを早く公開すべきだった」
ある海保幹部は、そう悔しさをにじませる。海保が所持しているビデオ映像は、事件が起きた7日に、損傷した巡視船「よなくに」と「みずき」から撮影したもの。「よなくに」の船尾部分を、漁船が斜めに航行しながら接触した様子や「みずき」の右後方を平行に走っていた漁船が左側にかじを切って右舷の中心部付近に衝突した様子が鮮明に映っていた。海保は、この映像に漁船や巡視船の航跡データを組み合わせれば、漁船側が衝突してきた状況は立証できる、と自信を持っていた。
海保内部では当初、積極的なビデオ公開の意見も出た。だが、中国側に配慮する官邸サイドの意向もあり、立件方針が決まった7日夜になり、一転して非公開に。
映像公開については、24日夕、馬淵国土交通相が「今後の推移で判断する」と述べただけで、別の海保幹部は「海上の警備は危険と隣り合わせ。いざという時、現場の職員の士気が落ちなければいいが」と話す。
◇
24日午後に行われた那覇地検の緊急記者会見。「今後の日中関係を考慮し、捜査を続けることは相当でないと判断した」。鈴木亨・次席検事は感情を押し殺したような口調でそうコメントを読み上げた。
政治介入の有無についての質問も相次いだが、鈴木次席検事は「検察当局として決めた」「中国政府に配慮したものではない」と重ねて否定し、会見が進むにつれて「答えを差し控えたい」と口を閉ざした。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100924-OYT1T01202.htm?from=top
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