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9月6日のレーバーデー・ホリデー(9月最初の月曜日)明けから、アメリカはすべての分野で活気づく。ワシントンではその週から11月2日(最初の火曜日)の中間選挙の当日までオバマ大統領率いる与党民主党と野党共和党による米議会の支配権争奪戦が繰り広げられる。それはいま始まったばかりだが、オバマ政権と議会民主党はすでに苦戦を強いられている。上院でも下院でも共和党に多数派を奪われそうなのだ。オバマ与党の苦戦の理由ははっきりしている。アメリカ選挙民はアメリカ経済の現在の悪さに怒り、先行き回復の遅れを心配していることだ。
2008年の金融危機打開に対して、オバマ政権が取り組んだ思い切った経済政策が「第2の大恐慌」を防いだという証拠はいくつもある。しかし、誰もその過去には見向きもしていない。選挙民は過去よりも現在と将来に関心がある。オバマ失政に対する典型的な意見は共和党下院院内総務のジョン・ボーナー議員が行った最近の演説だ。彼はアメリカ経済の現状の悪さをオバマ政権による経済政策の”失敗”と断じ、大統領特別経済顧問のラリー・サマーズ氏とティム・ガイトナー財務長官の罷免を要求したのである。
オバマ大統領はこの景気の悪さと政治の誤算が重なり、もはや経済を首尾よく再建させる政治的信頼も失いつつある。しかも、彼は最近の失業率の高止まり、住宅ローン返済不能による住宅差し押さえの記録的な水準など、厄介な問題のすべての責任を押しつけられている。この状況では11月中間選挙は惨憺たる結果にならざるをえない。現在の低成長・高失業という傾向は11年いっぱい、場合によっては12年まで続くのではないかという懸念もある。2年後のオバマ再選も厳しいという悲観論も民主党内部にはくすぶり出している。
「第2の大恐慌」を防いだが…
プリンストン大学のアラン・ブラインダー教授とムーディーズのアナリスト、マーク・ザンデイ氏の最近の報告によると、08年の金融危機後にオバマ政権による大規模な緊急財政支援とFED(中央銀行)による金融支援の発動がなければ、10年のアメリカのGDP成長率は6.5%も下回っていたはずだという。金融危機後の不況で800万人の雇用が奪われたが、オバマ政権による緊急発動がなければ、さらに850万人の雇用が喪失していたはずだという。8月末に公表された議会予算局報告では、オバマ政権による景気刺激策によって10年第2四半期の雇用は330万人創出され、深刻な不況にならずに済んでいるとされている。
そうした成功にもかかわらず、オバマ大統領の支持率はギャラップ調査で42%にまで下落している。こうした傾向に対してジョー・バイデン副大統領は決然として「民主党は11月中間選挙で、上院も下院も多数派を維持すると確信している」と檄を飛ばしている。しかし、超党派のほとんどの世論調査によると、共和党が下院で過半数を占めることは確実であり、場合によっては上院も共和党支配に転じる可能性があるとみられている。
最近の失業率は9.5%と依然として高止まりしている。しかし、数百万人という人が職探しを取りやめていると言われている。それにしてはこの9.5%という数字はかなり高い。現在の雇用情勢は表面の数字以上に厳しいのではないか。そういう悲観的なムードの中で、これまでオバマ政権が取り組んできた緊急支援に伴う財政出動によってもたらされた隠れたプラス評価よりも、大規模な財政出動に伴う将来の深刻な財政赤字に対する不安のほうが広がりつつある。
最近、行政予算局長を辞任したピーター・オルスザグ氏は辞任に際して、緊急措置によってあからさまな大恐慌による崩壊の危機は免れたが、「いま直面している危機はどうにも受け入れがたい弱々しい経済成長といつまでも続く高失業だ」と述べている。選挙民はそのことに憤慨しているのである。
住宅不況が景気回復の足を引っ張る
この夏は景気の悪い指標が重なった。失業支援の問い合わせは増え続けており、住宅販売は7月に27%も下落した。これは1968年に統計を取り始めてから最大の落ち込みだ。この失業増大と住宅不振の2つは別問題ではない。2年前に金融・経済危機が始まった時、住宅ローンの利子負担の膨張を伴うサブプライムローン問題は、ローン返済不能に伴う差し押さえの原因であり、現在、その原因は失業の増大にシフトしている。つまり、職を失った労働者は住宅ローン返済もできない。
住宅ローン返済不能に伴う差し押さえは記録的な水準に上っている。7月現在、住宅ローン物件の7戸に1戸は返済が遅れているか差し押さえになっている。この住宅市況の不振は消費支出の足を引っ張り、景気回復を難しくしている。最近のモルガン・スタンレーの報告ではこの住宅市況の“もたついた調整”は引き続き景気回復を遅らせるという。
オバマ政権は金融危機以後の景気後退についての政治的責任は少なくとも一時的には免れたが、景気回復の遅れと危機打開のために打ち出した巨額の財政支出に伴う長期的負担にのろわれている。
歴史的な2つの法案成立も威力なし
オバマ大統領は2つの歴史的な法律に署名した。1つは国民皆保険を目指した医療改革法であり、もう1つは1930年代の大恐慌以来と言われるウォール街改革を目指した金融改革法だ。しかし、医療改革法によって一般の消費者が恩恵を受けるのは早くとも2014年からであり、金融改革法も金融危機をもたらしたとされるウォール街のいかがわしい取引は規制されるが、アメリカの平均的な消費者や投票者には実質的な意味はほとんどない。ウォール街にしても議会による厳しい調査にもかかわらず、結局、比較的無傷だったという認識が広まっている。ウォール街の重要人物は誰一人、有罪判決を受けて獄につながれてはいない。
オバマ政権は医療改革法、金融改革法、さらにメキシコ湾沖の原油流出問題、エネルギー法などに多くの時間を費やし、現実の景気状況がいかに深刻かということを過小評価し、雇用拡大にしっかりした政策の舵取りをしていないという批判が優勢になっている。一般のアメリカ人の高まる憤慨に対応するオバマ政権の選択余地は極めて少ない。
おそらく追加的な財政刺激策が必要になるだろうが、民主党議員はそれに伴う選挙民の反感をおそれて、そういう選択を採りたがらない。国民はブッシュ政権の8年間の失政に対する苦い経験をまだ忘れてはいないが、共和党はオバマ政権に嫌気がさしている中間派の票を取り込もうとしている。
(ピーター・エ二ス、在ニューヨーク特約記者 =東洋経済オンライン)
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