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厚生相文書偽造事件:証拠捏造により、前田恒彦・大阪地検検事を逮捕〜証拠の捏造は過去の冤罪事件でも new!!
2010/09/22 [Wed] 12:58:11
障害者割引郵便制度の悪用に絡む厚生労働省の偽証明書発行事件で、大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスク(FD)内の文書データを改ざん(変造)したとの疑いが平成22年9月21日、朝日新聞のスクープにより明らかになりました。すぐに捜査に着手した最高検は平成22年9月21日、証拠隠滅罪の容疑で、同事件の主任検事前田恒彦(43)を逮捕しました。なお、前田恒彦検事は9月21日までの大阪地検の事情聴取に改ざんを認めましたが、「誤ってやった」などと故意を否定する説明をしているようです。
もっとも、朝日新聞は、「朝日新聞 会社案内2010」において、調査報道によって「大阪地検特捜部も2009年2月、強制調査に乗り出し」「厚生省の職員と局長も逮捕しました」と誇らしげにしていました。要するに、朝日新聞が冤罪を作ってしまったのです。今回のスクープは「罪滅ぼし」のつもりでしょうか。
1.朝日新聞のスクープ記事の一部(9月21日付朝刊では1・34・35面にわたって記事にしていました)と、報道に対する村木元局長のコメント、村木元局長の主任弁護人を務める弘中惇一郎弁護士のコメントを紹介しておきます。
(1) 朝日新聞平成22年9月21日付朝刊1面(14版)
「検事、押収資料改ざんか
郵便不正事件 捜査見立て通りに FDデータ書き換え
2010年9月21日3時31分
郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で、大阪地検特捜部が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)が改ざんされた疑いがあることが朝日新聞の取材でわかった。取材を受けた地検側が事件の捜査現場を指揮した主任検事(43)から事情を聴いたところ、「誤って書き換えてしまった」と説明したという。しかし、検察関係者は取材に対し「主任検事が一部同僚に『捜査の見立てに合うようにデータを変えた』と話した」としている。検察当局は21日以降、本格調査に乗り出す。
朝日新聞が入手した特捜部の捜査報告書などによると、FDは昨年5月26日、厚生労働省元局長の村木厚子氏(54)=一審・無罪判決=の元部下の上村(かみむら)勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=の自宅から押収された。FD内には、実体のない障害者団体が郵便割引制度の適用を受けるため、上村被告が2004年6月に発行したとされる偽の証明書や文書の作成日時などに関するデータが入っていた。特捜部は証明書の文書の最終的な更新日時を「04年6月1日午前1時20分06秒」とする捜査報告書を作成。FDは押収の約2カ月後にあたる7月16日付で上村被告側に返却され、村木氏らの公判には証拠提出されなかった。
朝日新聞が今夏、上村被告の弁護団の承諾を得てFDの記録を確認したところ、証明書の文書の最終的な更新日時が「04年6月8日午後9時10分56秒」で、特捜部が捜査報告書に記した最終更新日時と食い違うことが分かった。
このため、朝日新聞が大手情報セキュリティー会社(東京)にFDの解析を依頼。本来は「6月1日」であるべき最終更新日時が「6月8日」と書き換えられていた。その書き換えは昨年7月13日午後だったことも判明。この日はFDを上村被告側に返す3日前だった。
また、他のデータについては上村被告が厚労省の管理するパソコンで操作したことを示していたが、最終更新日時だけが別のパソコンと専用ソフトを使って変えられた疑いがあることも確認された。検察幹部の聴取に対し、主任検事は「上村被告によるFDデータの改ざんの有無を確認するために専用ソフトを使った」と説明したとされるが、同社の担当者によると、このソフトはデータを書き換える際に使われるもので、改ざんの有無をチェックする機能はないという。
特捜部は捜査の過程で、上村被告の捜査段階の供述などを根拠に「村木氏による上村被告への証明書発行の指示は『6月上旬』」とみていた。だが、証明書の文書データが入ったFD内の最終更新日時が6月1日未明と判明。村木氏の指示が5月31日以前でなければ同氏の関与が裏付けられず、最終更新日時が6月8日であれば上村被告の供述とつじつまが合う状況だった。
朝日新聞の取材に応じた検察関係者は「主任検事から今年2月ごろ、『村木から上村への指示が6月上旬との見立てに合うよう、インターネット上から専用のソフトをダウンロードして最終更新日時を改ざんした』と聞いた」と説明。FDの解析結果とほぼ一致する証言をしている。(板橋洋佳)
■主任検事が大阪地検側の聴取に対して説明した主な内容は次の通り。
上村被告宅から押収したフロッピーディスク(FD)を返す直前、被告がデータを改ざんしていないか確認した。その際、私用のパソコンでダウンロードしたソフトを使った。改ざんは見あたらなかったため、そのソフトを使ってFDの更新日時データを書き換えて遊んでいた。USBメモリーにコピーして操作していたつもりだったが、FD本体のデータが変わってしまった可能性がある。FDはそのまま返却した。」
「【郵便不正事件】 障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、実体のない団体名義で企業広告が格安で大量発送された事件。大阪地検特捜部は昨年2月以降、郵便法違反容疑などで広告会社元取締役らを逮捕した。捜査の過程で、自称障害者団体を同制度の適用団体と認める偽の証明書が厚生労働省から発行されたことが発覚。特捜部は発行に関与したとして、同省元局長の村木厚子氏らを逮捕・再逮捕した。
村木氏の公判では、同氏の関与を捜査段階で認めたとされる元部下らの供述調書が大阪地裁に「検事が誘導して作成した」と批判され、村木氏は今月10日の判決で無罪を言い渡された。」
(2) 朝日新聞平成22年9月21日付夕刊1面
「村木元局長「恐ろしい」「一部のせいにせず検証を」
2010年9月21日13時5分
郵便不正事件で被告となった厚生労働省の村木厚子元局長(54)は21日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。「こんなことまであり得るのかと恐ろしい気持ちがした」と語ったうえで、「一部に変な人がいたんだという話にせず、事件全体について何があって、なぜこうなったのか検証してもらい、検察のあり方に生かしてほしい」と、検察に事件全体の検証を求めた。
村木元局長は今回のFD改ざん疑惑の内容を新聞報道でしか知らないとしたうえで、「(供述を裏付ける際に)頼りになる客観的な証拠にこういうことをされたら、何を頼りにしていいかわからない」と語った。最高検が捜査に着手したことについては「検察の信用がかかった問題だ。何があったのか真相解明して欲しい」と望んだ。
これに先立ち、村木元局長の主任弁護人を務める弘中惇一郎弁護士も同日午前、会見を開き、「検察の根幹を揺るがす大きな問題だ」と厳しく批判。今後、証拠隠滅容疑などで主任検事を刑事告発することも視野に対応を検討することを明らかにした。
弘中弁護士は「検察側からの説明は一切ない」としたうえで、朝日新聞が報じた内容を前提に会見を進めた。「主任検事として事件をコントロールする立場の人がこういうことをしたのなら前代未聞だ」と指摘した。
公判前整理手続きの段階で、検察側が問題のFDを証拠請求しなかったことについては「(起訴内容を裏付ける)一番重要な証拠なのに、なぜ証拠請求しないのかと不審に思っていた」と述べた。」
イ:要するに、大阪地検特捜部の前田恒彦検事(43)は、、事件をコントロールする主任として、「村木さんから上村さんへの指示が6月上旬である」とのストーリーを作り上げていたため、そのストーリーに合わせるために、専用のソフトを使用して最終更新日時「6月1日」から「6月8日」に改ざんしたのです。それによって、無罪の決め手となる証拠が消滅し、有罪証拠の決め手となる客観証拠に改変してしまったのです。
無罪を示す証拠が有罪を示す証拠に改変されてしまうと、誰であろうとも容易に有罪にできるのであり、多くの冤罪が生まれてしまうのです。村木厚子同省元局長は、「こんなことまであり得るのかと恐ろしい気持ちがした」と語っていますが、今回の報道によって誰しもが捏造証拠で冤罪になり得る恐れを感じ、村木さんの言葉に共感したはずです。
このような証拠の捏造は、適正な証拠であるべきとする証拠裁判主義(刑訴法317条)に反することはもちろん、適正手続の保障(憲法31条)や公平な裁判(憲法37条)に反するものであって、絶対に許されないのです。
もっとも、前田恒彦検事は、改ざんを認めても、「誤ってやった」などと故意を否定する説明をしています。しかし、改変する専用ソフト――改変をチェックする機能はない――を使い、有罪証拠に改変したのですから、故意ではないという言い訳は困難でしょう。
ロ:この有罪証拠の捏造事件は、大きく2点問題となります。
1点目としては、前田恒彦検事は、「主任検事として事件をコントロールする立場の人」でありながら、有罪証拠を捏造した疑いが濃厚なのですから、大阪地検特捜部全体が組織的に有罪証拠を捏造を行っているのではないか、または組織的に有罪証拠の捏造を放置していたのではないか、との疑念が生じます。
記事によれば、「朝日新聞の取材に応じた検察関係者は「主任検事から今年2月ごろ、『村木から上村への指示が6月上旬との見立てに合うよう、インターネット上から専用のソフトをダウンロードして最終更新日時を改ざんした』と聞いた」と説明」したとのことです。ある検察関係者は、今年2月に直接捏造の告白を聞いていながら今まで黙認してきたのですから、少なくとも大阪地検は捏造告白を隠蔽し「有罪証拠の捏造を放置していた」ことは確かといえるでしょう。
そうすると、村木厚子同省元局長への無罪判決で、特捜捜査の問題点が指摘された事件は、検察組織全体の信用性が損なわれる事態へと発展したのです。
2.2点目としては、検察組織全体の問題の他に、個人の問題、すなわち、前田恒彦検事が過去に行った事件についても、当然ながら証拠捏造を行っていたのではないか、が疑われることになります。
(1) 前田恒彦検事が過去に関わった事件については、次のような記事があります。
イ:読売新聞平成22年9月21日付夕刊13面
「前田検事は特捜部のエース、「割り屋」で評判
東京地検特捜部に在籍した06年4月〜08年3月、元防衛次官の汚職事件で贈賄側の防衛専門商社元専務を取り調べるなど、事件の「キーマン」となる容疑者を担当することが多かった。
大阪地検特捜部では、元特捜検事で弁護士だった田中森一受刑者の詐欺事件(08年4月)や音楽プロデューサー・小室哲哉元被告による詐欺事件(同11月)などの捜査で主任検事を務めた。また、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件では、東京地検特捜部に応援として派遣され、逮捕した公設秘書(当時)の取り調べも担当した。
部内では、検察の描かれた構図通りに容疑者から自供を引き出す「割り屋」として評判を取る特捜部のエース的存在。上司の信頼も厚かったが、一方では、周囲から「取り調べが強引」との評判もあった。」
ロ:朝日新聞平成22年9月21日付夕刊11面
「主任検事「大阪地検のエース」 公判で取り調べに批判も
2010年9月21日15時7分
郵便不正事件で証拠として押収したフロッピーディスク(FD)を改ざんした疑いが浮上した前田恒彦・主任検事(43)は、「大阪地検特捜部のエース」と呼ばれてきた。2006〜08年には東京地検特捜部にも在籍したほか、応援でも大阪から呼ばれるなど、著名な事件を担当してきた。(中略)
東京地検特捜部が07年、緒方重威(しげたけ)・元公安調査庁長官=一審で懲役2年10カ月執行猶予5年の判決、控訴中=を起訴した在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部をめぐる詐欺事件では、共犯とされた不動産会社元社長=懲役3年執行猶予5年、控訴中=の取り調べを担当。2人の一審判決では、主任検事の取り調べについて、裁判長が「事実を否認する容疑者に『否認すると保釈されない』など、不利になると働きかけた」と批判。公判で証人として出廷した際の証言も「誇張が交じっている疑いが否定できない」と指摘した。
同じ07年の防衛装備品の調達をめぐる汚職事件の捜査でも、贈賄などの罪に問われた軍需専門商社「山田洋行」の元専務=二審で懲役1年6カ月の実刑、上告中=の取り調べを担当。元専務から、守屋武昌元防衛事務次官=懲役2年6カ月の実刑が確定=へのわいろ提供を認める供述を引き出したとされる。
また、大阪地検に異動後の今年1〜2月には、小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件の東京地検特捜部の捜査に、応援として呼ばれた。逮捕された小沢氏の3人の元秘書のうちの1人、大久保隆規元秘書=同罪で起訴=の取り調べを担当。大久保元秘書の関与を認める内容の供述調書をまとめたが、起訴後に大久保元秘書は否認に転じた。
東京の検察関係者の間では「優秀で重要な供述を引き出してくる『割り屋』のタイプ」との評価の一方で、「勢いで取り調べてしまう面もある」との見方もある。」
(2) 前田恒彦検事は、<1>田中森一受刑者の詐欺事件(08年4月)、<2>音楽プロデューサー・小室哲哉元被告による詐欺事件(同11月)、<3>在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部をめぐる詐欺事件、<4>07年の防衛装備品の調達をめぐる汚職事件の捜査、<5>小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件に関わったとされています。
前田恒彦検事は、「大阪地検のエース」とされてきたのですから、ある意味、色々な意味で実績も積んできたわけですから、これらの事件でも、さらには他に手掛けた事件でも、証拠の捏造をしてきたかもしれないと疑うことになります。
特に注目すべき事件は、前田恒彦検事は、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件に関わったことです。
前田恒彦検事は、陸山会の政治資金規正法違反事件において、取り調べなど事件捜査に深くかかわったのですから、当然ながら、小沢氏の政治資金規正法違反事件でも証拠を捏造したのではないかが疑われます。現に、前田恒彦検事は、「大久保元秘書の関与を認める内容の供述調書をまとめた」わけですが、起訴後に大久保元秘書は否認に転じたわけで、違法に自白の強要をしたのではないかも疑われます。
3.解説記事やコメントを幾つか。
(1) 朝日新聞平成22年9月21日付朝刊34面
「解説:なぜ起きたか 徹底調査必要
大阪地検特捜部が押収したFDのデータが書き換えられた問題は、証拠に基づいて審理する刑事裁判を根本から揺るがすものだ。
刑事裁判では被告らの説明が捜査段階や公判で食い違った場合、裁判官は凶器や手帳などの客観的な証拠に照らして信用性を検討する。なぜなら、検察側が集めた客観証拠が信用できるとの前提があるからだ。昨年5月にスタートした裁判員制度では、こうした客観証拠の重みがさらに増している。
今回のFDに関しては、通常の操作では書き換えることができないデータが改ざんされた疑いがあり、結果的に検察側が描いた構図に合う内容になっていた。FDは公判に証拠提出されなかったが、FDに記録された偽の証明書の作成時期がその後の公判で争点になった点を踏まえると、捜査を指揮する立場にあった主任検事が重要な証拠を操作したことは許されない。
検察当局には、今回の問題を担当検事の「単なるミス」で終わらせるのではなく、徹底した経緯の調査・検証が求められる。(板橋洋佳)」
(2) 毎日新聞平成22年9月21日付東京夕刊8面
「特捜、根深い病巣 判決変わった可能性も
厚生労働省の村木厚子元局長(54)に無罪が言い渡された郵便不正・偽証明書事件。今回発覚した前田恒彦・主任検事(43)による重要資料の改ざんは、特捜捜査の根深い病巣を浮き彫りにした。
公判では、あらかじめ立てた「事件の構図」に合わせて強引に供述調書を作成し、署名させる手法が大きな問題になった。今回の改ざん問題は、供述調書だけでなく、客観的証拠の中身まで構図に合わせようとしたことになり、描いた構図に突き進む強引な捜査の実態が垣間見える。
改ざん前の電子データは、無罪判決の決め手になった重要証拠だ。これを公判前整理手続きで証拠開示され、弁護側証拠として提出された。検察側にとって法廷に出したくない証拠で、隠そうとした疑いも残る。
仮に、検察の構図に合うよう改ざんされたFDが証拠提出されていれば、村木元局長による指示が推認され、判決は違った内容になった可能性もある。刑事裁判や検察庁に対する信頼の根本を揺るがす事態だ。前田主任検事は改ざんしたFDをなぜ提出しなかったのか、何を隠していたのか。残された疑問はまだ山積している。信頼回復には徹底した捜査による真相究明が急務だ。【日野行介】
毎日新聞 2010年9月21日 東京夕刊」
(3) 毎日新聞平成22年9月21日付東京夕刊8面
「障害者郵便割引不正:押収資料改ざん 木谷明氏、土本武司氏の話
◇裁判所も反省を−−元裁判官の木谷明・法政大法科大学院教授(刑事法)の話
特捜部は「巨悪を眠らせない」とのかけ声の下、さまざまな事件を摘発してきているが、権力はえてして暴走する。過去の特捜事件でも、裁判所がノーチェックで通してきたケースがあったかもしれない。特捜部に「調書さえ取れば裁判所は有罪にしてくれる」と思わせたとしたら、甘いチェックしかできなかった裁判所も反省しなければならない。検察も襟をただし、謙虚になって一からやり直してほしい。
◇信じられない−−土本武司・元最高検検事の話
検察が押収資料を改ざんするなど今まで聞いたことがない。検察は真相を解明することが仕事なのに収集した資料を自ら改ざんするのは信じられない。事実だとすれば重大だ。それも有能な捜査機関とされている特捜部の検察官がするなんて信じられない。
毎日新聞 2010年9月21日 東京夕刊」
イ:注目すべき解説は、元裁判官で木谷明・法政大法科大学院教授のコメントです。木谷明・法政大法科大学院教授は、「過去の特捜事件でも、裁判所がノーチェックで通してきたケースがあったかもしれない」と述べています。要するに、過去にも証拠の捏造があったかもしれないが、特に、特捜部は信用されていたために、裁判所はノーチェックで見逃してきたかもしれない、と過去にさかのぼって検証する必要性を説いているのです。
特捜部による証拠の捏造は初めて発覚しましたが、捜査機関による証拠の捏造は過去にもあったのです。
過去の冤罪事件の特徴は、自白の強要と、無罪証拠の隠匿・有罪証拠の捏造が挙げられます。財田川事件、松川事件といった著名な冤罪事件でも問題になりました。木谷明元裁判官も、裁判官であったときに、覚せい剤事件において証拠を捏造した疑いがあったために無罪とした事件がありました。
証拠の捏造が生じるには、「特捜部に『調書さえ取れば裁判所は有罪にしてくれる』と思わせた」と考えられ、「甘いチェックしかできなかった裁判所」にも問題があるのです。一部の裁判官は、証拠の捏造があることを想定して証拠を判断しますが、そうでない裁判官がいるからこそ、証拠の捏造が生じてしまうのです。
ロ:なぜ、証拠を捏造してしまうのかというと、2点考えられます。
<1>原因の1つは、ある人物を犯人だと誤信したまま捜査してしまう「見込み捜査」があります。こいつが犯人に違いない「見込み」を決めてしまうと、そこから洩れた人が捜査の対象とならず、無実ではないかという見直しができないのです。そこで、「視野狭窄」になり、無罪ではないかとのやり直しがきかずに、つい有罪証拠を捏造し、無罪の証拠を隠匿してしまうのです。
<2>もう1つの原因は、有罪視・犯人視報道があります。メディアが大々的に報道した事件は、間違いが起こりやすいとされています。センセーショナルな犯罪報道や「犯人視」報道がなされると、世論もメディアもは犯人だと思いこみ、その通りに起訴され、有罪にならないと捜査機関側や裁判所に集中的に批判を行うのです。当然ながら、こうした批判は、捜査機関側に大きなプレッシャーを与え、世論やメディアの支援があるのだからと、つい証拠を捏造し、無罪証拠を隠匿してしまうのです。こうした有罪視・犯人視報道が改められなければ、冤罪事件の温床になっていくだろうと思うのです。
翻れば、今回の郵便法不正事件も大きく報道された事件であり、村木さんが犯人視された報道がなされていました。ですから、証拠を捏造する温床になっていたのです。
また、小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件でも同様です。不起訴処分が出ているのに、今でも延々と小沢氏を有罪視する報道が続いています。「小沢氏は絶対権力者である」という報道が続くと、その報道に影響された検察審査会は、「小沢氏は絶対権力者である」と判断し「証拠があるに違いない」、起訴するのが「善良な市民としての感覚である」などとまで、無邪気に言い切ってしまうのです。そこには、無罪推定の原則はおろか、冷静になって証拠を判断するという意識は微塵もありません。
薬害エイズ問題では、厚生大臣となった菅直人氏は、1996年2月9日、記者会見を開いて、「1983年当時、厚生省内に、非加熱製剤が危険だという認識があった」旨の発表を行い、ファイルを隠蔽してきたかのようなパフォーマンスを行いました。その結果、安部英医師が逮捕起訴される至ったのです。しかし、事実は、「当時、安部医師を含む日本の、いや世界の血友病専門医は、何一つ分かっていなかった」(武藤春光=弘中惇一郎『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』17頁)。この事件では、人気取りだけの政治家である菅直人氏の間違った行動と、誤った報道が冤罪を作り上げたのです。そして、この事件でも、無罪証拠の隠匿があったのです。
有罪視・犯人視報道がなくならない限り、過去だけでなく、将来も冤罪事件・証拠の捏造がなくならないことは明らかです。
4.最後に。
(1) 検察審査会では、捜査機関側が提出した、いわば一方的な証拠によって、しかも批判する弁護側からの検証もなく、判断しています。そして、起訴に至っていない以上、通常は弁護側からの証拠はなく、また、捜査機関側としても無罪を示すような証拠を検察審査会に渡すわけでもありません。
真っ当な裁判官や弁護士であれば、過去の経験則を踏まえれば、捜査機関が有罪証拠の捏造を行い、無罪の証拠を隠匿していることを知っています。無罪の証拠の隠匿はほとんどの事件で生じているです。ですから、有罪証拠の捏造をしたと明示しなくても、有罪証拠の捏造や無罪証拠の隠匿を考慮したうえで、無罪推定の原則を念頭において、証拠を吟味して判断するのです。
(2) しかし、プロである法曹の経験則を有していない、法律の素人の委員で構成される検察審査会は、有罪証拠の捏造や無罪証拠の隠匿の可能性を想定して判断しているのでしょうか?
イ:朝日新聞の社説をみると、そうした意識は微塵もありません。
「押尾被告判決―市民の力が発揮された
市民の力を信じる――。
ごく当たり前の話なのに、それを軽んずる姿勢が、社会的立場の高い人の言動に垣間見えることがある。
裁判員と同じく一般の市民がかかわる検察審査会制度について、小沢一郎氏が「素人がいいとか悪いとかいう仕組みがいいのか」と述べたのは記憶に新しい。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は新聞のコラムで「“市民目線”と持ち上げられてはいるが、しょせん素人の集団」と書いた。
もちろん市民の判断がいつも正しいとは限らない。個々の疑問や批判はあっていい。だが市民への信頼を抜きにして、私たちの社会も制度も、そして民主主義も成り立たない。」(朝日新聞2010年9月19日(日)付「社説」)
今回の事件では、裁判に提出されていない証拠であっても、有罪証拠を捏造していたのです。検察審査会では、裁判ではないので、こうした捏造証拠も証拠資料に含まれてしまいます。検察審査会の審査員は、過去の事件において、素人の市民であるがゆえに、捏造証拠を、無批判に適正な証拠と信じてしまって起訴相当と判断してきたのではないでしょうか。そのために、検察審査会の起訴相当の判断によって、甲山事件など多くの事件で冤罪が発生したのです。
刑事裁判は、重大な人権制限をもたらすもの制度であり、逮捕起訴されただけでも、社会的に抹殺されてしまう状態にあるのが今の日本社会です。刑事裁判は、宗教裁判ではないのですから、「信じる」かどうかで、正当性が担保できるわけがないのです。
「選挙制度」という有権者の意思を反映する制度においては、「市民の力を信じる」のが民主主義です。しかし、起訴することや刑事裁判は、法と証拠に基づいて判断する場なのですから、「市民の力を信じる」だけでは解決できる制度ではないのです。朝日新聞は、民主主義の意義について間違った理解をしているというべきです。
ロ:弁護士は、社会生活上の医師と例えられることがあります。誰しも、重い病気に罹ったときに、素人の診断に身を委ねることをせずに、専門家である医師の診断を求めるのです。医学では「素人診断」は無視されるのに、なぜ法学の場面では「素人起訴」を重視するのか、全く不可思議でなりません。
社会におけるどのような分野であっても専門家がおり、その専門家の判断は尊重されることは誰もが分かっているはずです。素人と専門家の大きな違いの一つは、深い知識に裏付けられ、多くの事例を想定しながら、今判断を求められている事例を判断できることです。
今回の有罪証拠捏造事件は、検察審査会制度の見直しにもつながるでしょう。少なくとも、法律の知識や経験がないことを自覚し、有罪視報道を嫌悪する意識を持つべきであり、「市民感覚」や「市民の力」を錦の御旗かのように掲げ、慢心した態度だけは止めるべきです。今回の事件によって、市民による検察への過度に信頼することだけは、止めてほしいものです。
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