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民主党代表選挙は菅直人首相の圧勝となり、菅首相は、内閣改造・党役員人事を行った。今回は、民主党代表選を総括し、「菅人事」を評価することで今後の政局を考える。
■剛腕政治家・小沢一郎の意外な脆さ
民主党代表選で注目すべきは、「党員・サポーター票」で菅首相が小沢氏の5倍のポイントを獲得したことだろう。国民が小沢氏の「政治とカネ」「古い政治手法」に対して厳しい評価をしていることが、改めて示されたといえる。小沢氏は、「英国流議会制民主主義」を日本に持ち込もうとした「改革者」である(第38回)。一方で、小沢氏は「古い政治」の象徴ともみなされ、基本的に国民からの「信頼」がない。
現代の政治家は、この基本的な国民からの「信頼」を軽視できない。例えば、小泉純一郎元首相は、細かい点は別にしても、基本的に40〜50%台の高支持率を持っていた。基本的な「信頼」があるから、小泉内閣は1つや2つ問題が起こっても、支持率が「危険水域」まで低下することがなかった。
一方、小沢氏は元々「危険水域」程度の「信頼」しかなく、少し問題が起こっただけで即、要職からの辞任騒ぎになる。だから、政敵は小沢氏のスキャンダルをどんどん流そうとする。小沢氏の権力基盤を簡単に崩せるからだ。これは現代の政治家として致命的な欠陥だ。小沢陣営は代表選で「支持率ゼロでいい」と潔かったが、現代政治は「支持率ゼロ」では戦えないということをよく知るべきだろう。
■岡田幹事長は「陳情一元化」の真価を示すべき
ここからは「菅人事」の検証に移る。代表選での菅・小沢のガチンコ対立は、菅首相が内閣・党執行部に集中する権限を完全掌握したことに対する、小沢陣営の危機感から起こった(第57回)。従って、「菅人事」の最大の焦点は、これらの権限を持つ官房長官・幹事長に誰を起用するかとなった。
日本政治における与党の人事は、「政敵は閣内に取り込み、党は側近で固める」が鉄則だ。政敵には閣僚としての責任を与え、党は信頼する側近に任せることで、党と内閣が一体となって機能するからだ。その意味では、菅首相が官房長官と幹事長のどちらか1つだけを選べるならば、官房長官を選ぶのがセオリーだ。逆に、小沢陣営は幹事長を要求することになる。
だから、枝野幸男幹事長辞任は本来問題なのだが、菅首相が選択した後任が岡田克也外相だったのはベターだろう。岡田新幹事長は代表選で菅首相支持だったが、かつては新進党解党まで小沢氏と行動を共にしていた。小沢氏との関係は悪くない。
岡田新幹事長は愚直で融通が利かないという懸念はある。しかし、彼ほど「政治資金の徹底した透明化」を徹底的に守ってきた政治家はいない。岡田新幹事長ならば政治資金の配分を公平にオープンに行うだろう。
また、岡田新幹事長はかつて、「小泉郵政解散総選挙」で大敗して代表を辞任した後、コツコツと落選議員の選挙区を回った。これから小沢陣営の若手の選挙区も丁寧に回るだろう。菅・小沢両陣営の間に立つのに、岡田新幹事長は悪くないかもしれない。
岡田新幹事長には、「陳情の幹事長室一元化」を継続してもらいたい。この制度は「小沢支配」のイメージで誤解されている。この制度の本質は、自民党政権時代に族議員が跋扈し無法地帯であった陳情をルール化することだ(第38回)。誠実な岡田新幹事長が陳情をまとめれば、この制度のイメージは必ず変わる。その重要性は国民に理解されるはずだ。
■政調会長の国家戦略相兼務は政策過程を混乱させる
この「陳情の幹事長室一元化」の成否は、菅内閣の政策過程全体に大きく関わってくる。玄葉光一郎政調会長が国家戦略相に就任したからだ。これは最悪の人事となる可能性がある。政策過程での内閣・党政調会の一体化を狙ったものだが、「国家戦略」のような大構想を策定する場に政調会が入り込むと、個別の業界・労組などの要求が入り乱れて「大バラマキ策」に必ず堕する。それを抑えるには、岡田新幹事長の愚直な陳情一元化が重要となるかもしれない。
■前原外相で「小沢朝貢外交」に決別した
前原誠司国交相が外相に横滑りした。外交・安全保障通だが、中国に対する強硬姿勢で知られる。昨年12月に国会議員約140人を引き連れて小沢氏が訪中した、いわゆる「小沢朝貢外交」からの方向転換を目指しての人事であることは明らかだ。その前原新外相が、就任会見でアジアとの経済外交の推進を表明したのは興味深いことである。
なお、国交相には馬渕澄夫国交副大臣が昇格した。フレッシュな人事だが、政策的には継続性重視であることを示している。また、野田佳彦財務相、蓮舫行政刷新担当相の留任は、財政政策も継続することを示す。事業仕分けを通じて、特別会計などの無駄をコツコツと削減していき、財源の確保できたものから、順次実行していくという、代表選で菅首相が示した方針通りに進めていくということだ。
民間人の片山善博前鳥取県知事が総務相に起用されたことについては、地方分権の推進という観点では興味深い。しかし、政局的には大きな意味はなく、論評は別の機会としたい。
■菅首相は「解散権」を効果的に使うべき
菅首相は、代表選の完勝によって「脱小沢」路線を突き進むことを選んだようである。それでは今後、小沢陣営が倒閣に動き、離党するような事態は起こり得るだろうか。
それは、菅首相が最大の権限「解散権」をどう使うかにかかっている。小選挙区制下で離党すれば、二大政党の間に埋没して選挙で落選する危険が大きい。だから、選挙が近づくと、国会議員は二大政党にしがみつくようになる。菅首相は「3年間解散しない」などと言わず、「解散権」をちらつかせることで、小沢陣営が離党しないよう牽制すべきだ。
「解散権」は、「みんなの党」に対しても強い牽制になる。渡辺喜美代表は、よく解散を要求するが、小政党「みんなの党」では、小選挙区での選挙は怖い。彼の本音は解散がないうちに「政界再編」を進めたいということだ。菅首相が、本来のしたたかさを発揮し始めたら、小沢・渡辺氏らが政界再編へ画策しても、それを抑えることはさほど難しいことではないのだ。
民主党代表選から「菅人事」までの流れは、強力になりすぎた内閣・党執行部の権限に小沢氏が恐れをなして、それを奪おうとして破れたということだ。しかし、内閣・党執行部の権限強化は、小沢氏自身が目指してきたもので、皮肉としか言いようがない。
http://diamond.jp/articles/-/9441
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