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防衛省が流動化する東アジアの安全保障情勢や国際テロ、災害への対処能力を向上させるとして、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していることが分かった。複数の防衛省、自衛隊関係者が19日、明らかにした。年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に盛り込みたい考えで、来年度から増員すれば1972年度以来、38年ぶりの規模拡大となる。
ただ主要国では領土侵攻の前に敵を食い止めるため海軍や空軍を重視し、陸上部隊を削減する傾向にある。財政難の中で経費負担の増大も避けられず、政府内の調整は難航しそうだ。
定員増は陸上幕僚監部の強い意向を踏まえ、防衛省内局で検討。陸幕は日本近海での中国海軍の動きの活発化に伴い、中国沿岸から距離的に近い南西諸島での島しょ防衛強化が特に必要と説明。天然ガスなど東シナ海の資源獲得をめぐる日中摩擦も生じており、政府、与党の理解が得やすいと判断したようだ。
具体的には、中国が領有権を主張する尖閣諸島への対応を視野に、防衛態勢が手薄とされる沖縄県の宮古島以西への部隊配備を検討。沖縄本島の陸自部隊は現在約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて10倍の2万人規模とする構想も浮上している。
陸幕は国内の重要施設を狙ったテロやサイバー攻撃が同時発生するような「複合事態」への対処能力向上の必要性も指摘。国連平和維持活動(PKO)への積極的な参加や災害派遣の増加も想定している。
防衛省によると、増員は前年度比で千人増の18万人とした1972年度が最後。
96年度以降は減員傾向が続いているだけに、本年度比で1万3千人増とする今回の措置はこれまでの流れに大きく逆行することになる。
ただ、想定される「重大な脅威」が本土への着上陸侵攻から、ミサイル攻撃や島しょ部での局地的戦闘などに変わった現在、陸自の定員削減を求める声は根強い。定員に対する充足率も92・7%にとどまり、実数は現在約14万人で、増員方針には強い異論が出ることも予想される。
<ニュース用語>防衛計画の大綱
長期的な防衛力の整備、維持、運用に関する基本方針。これに基づき中期防衛力整備計画で部隊規模や経費などを明示し、防衛力の透明化を図っている。
1976年に初めて策定され、95年と2004年に改定。04年大綱は01年に起きた米中枢同時テロ発生を踏まえ「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」整備の必要性を表明し、5年後の改定を明記した。だが政権交代後の09年10月、当時の鳩山内閣は「十分検討する必要がある」と1年先送り。新大綱は、核兵器開発を進める北朝鮮や軍事力を増強する中国の動向を踏まえた防衛力整備が焦点となる。
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