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■「バカか」とまで言われて
小沢一郎という、およそ20年にわたって永田町に君臨してきた政治家に、ついに「審判」が下る。
世論の逆風を押して出馬した小沢氏は、勝てば総理大臣に。日本の政治風景は激変する。しかし負けたとしても、小沢氏は「最強の敗者」として次のステージを狙うことになるという。
「もし菅首相の続投が決まっても、長くはもたない。連立工作もまともにできない首相では、予算編成や重要法案審議ですぐに行き詰まる。早くて年末、遅くとも来年春には辞任を余儀なくされるだろう。
その時、小沢氏が今回の代表選に出たことが活きる。『次は小沢しかいない』。世論も党内もそうなるのは目に見えている。つまり、小沢氏に負けはない。最終的には必ず勝つ勝負だ」(小沢氏側近)
9月14日は「終わり」ではない。新たな混沌と混乱、そして「再編」の始まりとなるべき日なのだ。
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今回の代表選で、小沢氏に対する逆風は激しかった。小沢氏支持を打ち出した細野豪志幹事長代理は、千々に乱れる複雑な心境を、こう吐露した。
「地元の後援者からは、『もう応援しない』とか、『お前はバカか』と言われるんだ。菅さんの陣営からも、『あいつは裏切り者だ』と思われている。でもオレは、何とか一回、小沢さんを総理に・・・そう思うんだよね」
民主党代表選は、選挙戦中盤からは「菅首相有利」の情勢となった。事前の予測通り、国会議員以外の票(計400ポイント)の6割以上を菅首相が獲得したとすれば、それだけで小沢氏は80ポイントものビハインド。国会議員票で逆転するには、40票以上の差をつけなければならない。
小沢氏支持を表明している議員はそれでも強気の姿勢は崩さなかった。
「私の地元では、小沢さんの経済対策への反応がたいへん良かった。政府は市場に明確なメッセージを打ち出さなければならない。アメリカではすでに、『イチロー内閣』という言葉が登場しています。"イチロー"はアメリカでも抜群の知名度ですからね。それだけ小沢さんは注目を浴びているんです」(柳田和己代議士)
だが、前出の細野氏の言葉が物語るように、小沢氏とその支持者たちの前には、「世論」という大きな壁が立ちはだかった。
小沢氏の地元・岩手の有力支持者の一人は、「誤算があった」として、こう語る。
「出馬を決意する前は、国会議員票を7:3くらいで押さえ、圧勝できると思っていた。ところが、蓋を開けてみるとマスコミの小沢叩きが強烈過ぎた。さすがに小沢さんも、『これは大変な情勢だ』と、やや弱気な表情を周囲に見せている」
しかし小沢一郎たるもの、いざ自分が出馬するとなれば、マスコミや世論の風当たりが激烈になることは、十分想定していただろう。大きな誤算は、もっと別の場所に存在した。
一つ目の誤算、それは、鳩山由紀夫前首相という「地球外生命体」を、推し量れなかったことだ。
9月7日夜。東京・赤坂の中華料理店「上海大飯店」で、鳩山グループの会合が行われた。約90人の民主党議員が集まったこの会には、途中から小沢氏も参加。
会合後、鳩山・小沢両氏は揃ってぶら下がり会見を行い、鳩山氏が「この国難の時期に、命を顧みず立候補された小沢先生に、みんなで報いるために頑張ろうじゃないか、と語り合った」と話せば、小沢氏も、「代表選に出るかどうか迷ったが、鳩山前総理の後押しがあって決意した」と語り、互いの緊密さをアピールした。
だが、この日の会合に参加した小沢派議員の一人は、鳩山氏の態度に不穏なものを感じているという。
「鳩山さんは小沢さんを推すと言っているが、実際の鳩山グループは、いまだ内部がバラバラ。明確に、菅首相を支持している者もいる。なぜそうなるかと言えば、表向きの発言とは裏腹に、鳩山さんがグループをまとめようと本気で動いていないからですよ」
鳩山グループは、50〜60人の勢力を抱えており、民主党内では小沢グループ(約150人)に次ぐ大集団。だが、もともと結束力の弱い民主党内のグループの中でも、さらに繋がりが薄い「単なる同好会」(民主党若手議員)と揶揄されており、「戦闘単位」としては最弱の部類に入る。
鳩山グループの議員ですら、こう話す。
「実際に票の取りまとめに動いているのは、平野博文前官房長官や松野頼久前官房副長官、中山義活前首相補佐官ら側近です。
鳩山さんは7日の会合で、『挙党一致と言っていたのに菅さんには騙された』と強い口調で怒りを表しましたが、翌日には、その菅首相の特使だと言ってロシアに行ってしまうような人ですよ。行動だけ見れば、菅首相と小沢氏を、両天秤にかけているとしか思えません」
たとえば今回の代表選を現代の「関ヶ原」と見る向きがある。関ヶ原の戦いの勝敗を決したのは、小早川秀秋という育ちがいいだけの愚鈍な大名の行動だった。小早川は当初西軍として参戦しながら、決戦の場では東軍に寝返り。これが引き金となって西軍は大崩れし、壊滅したとされる。
この時、小早川は徳川方に寝返りの密約をしていながら、同時に石田方からは、戦後に関白の役職を与えるとの密約も得ていたという。その両天秤に迷い、緒戦は旗幟を鮮明にせずグズグズしていたが、最終的には家康を恐れ、歴史に残る寝返り劇を演じたのだ。
腹背を衝かれて全滅した西軍の大谷吉継は、小早川のことを「人面獣心なり」と呪いながら果てたとされる。鳩山氏は獣ではないが、宇宙人である。いずれにせよ「人間」と違うと自ら称しているわけだからその行動には十分に留意しなければならない。
■記事をゴミ箱に投げ捨てた
そしてもうひとつ、小沢氏にとっての誤算は、あまりに忠誠心が篤過ぎる、熱烈な信奉者たちの「やり過ぎ」だった。
小沢氏には、「四天王」と呼ばれる側近議員がいる。樋高剛代議士、佐藤公治参院議員、岡島一正代議士、松木謙公代議士がそうだ。他にも、党内で「小沢チルドレン」「小沢ガールズ」と呼ばれる若手・中堅議員の中には、小沢氏の熱狂的な支持者が何人もいる。
「彼らはまさしく"親衛隊"で、議員が地元に帰って講演などで小沢氏批判をしようものなら、すぐに彼らから『先生、あの発言はどういう意図ですか』と、プレッシャーがかけられる」(非小沢系民主党議員)
今回の代表選でも、彼らの「小沢総理」を実現するための努力はハンパではない。だが、側近たちが力めば力むほど、逆に小沢氏が総理の座から遠ざかるという現象が起きているのだ。
小沢氏支持を表明している若手代議士がこうぼやく。
「小沢チルドレンとひとくくりにされていますが、実態は、側近による圧力や恫喝で仕方なく従っている議員も多い。菅首相を支持するなどと言えば、『この裏切り者』『恩知らず』と怒鳴り散らされますからね。電話に出ないでいたら、『なぜ出ないのか』と何十件も留守電が入っていて、ゾッとしたという同僚もいました」
世論が怖い、首相が毎年交代するのはよくない、という消極的理由で支持されている菅首相と違い、小沢陣営の中核メンバーは、「絶対にオヤジを総理にする」と命がけで、鬼気迫る表情で代表選に臨んでいる。
ところが、彼らが頑張れば頑張るほど、その言動が常軌を逸してきて、中間派の議員は逃げていく。大学のサークル的な軽いノリで集まっているだけの民主党の中で、唯一、上意下達が徹底された超体育会系の小沢軍団は、どこまでも異質な存在なのだ。
小沢支持に回っているベテラン代議士の一人は、「小沢氏の周りには、いつも"人"がいない。結局、それが致命傷だ」と嘆く。
「たとえば石井一氏は小沢氏と盟友のはずなのに、今回は菅支持に回っている。そのクセ、小沢氏が来る会合に出てみたり、その翌日は菅首相の会合で檄を飛ばしたりと、何を考えているか分からない。
鳩山氏にしても、グループ会長の大畠章宏氏は明らかに菅支持で、まったく頼りにならない。若い奴は焦って暴走しているだけだし、これが想定外の苦戦を招いている」
代表選の1週間前には、小沢氏にとって股肱であるはずのベテラン政策秘書と、小沢ガールズ筆頭の青木愛代議士の不倫疑惑が発覚した。青木氏は妻子あるこの秘書と、茨城県内のホテルで一夜を過ごしたのだという。
「小沢氏はこの記事のコピーを渡されると、一瞥しただけで丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。激怒していましたよ」(小沢氏周辺)
肝心要の場面で周囲の人間に次々と裏切られ、結局は頂点に立つことができない。それが小沢一郎という政治家の運命なのか。
小沢氏の師である田中角栄元首相は、ロッキード事件という金銭スキャンダルで失脚したが、いまでもその人間性を慕い、語り継ぐ者が多い。何より当の小沢氏自身が、その一人でもある。だが小沢氏の身辺にそうした空気は薄い。最後は人が離れて行き、敗れ去る―自らが播いたタネとは言え、それが小沢氏の定めなのかもしれない。
■「無記名投票だから」
しかしその一方で、「猛追」あるいは「逆転」したとされる菅首相サイドが安泰かというと、決してそうではないのだ。
中立派代議士の一人は、「菅さんから電話をもらったんですが、正直、戸惑っています」と語る。
「仙谷(由人官房長官)さんや前原(誠司国交相)さん、野田(佳彦財務相)さんらから携帯にひっきりなしに電話がかかってきて、直接、菅さんからも連絡をいただきました。ただ菅さんは、みんなにほとんど同じ事を言っているんですね。たぶん、台本を読み上げているのでしょう」
首相の電話は、「あのぉ、菅直人です」から始まる。
< あのぉ、総理の仕事をしながらなんで電話での話になりましたが、あのぉ、まだ政権誕生から3ヵ月なので、これからいよいよ、経済のあれとか、本格的に取り組みたいと思っています。またあのぉ、党のほうでも政調が復活できたので、それぞれ得意分野の仕事を全員参加でやっていくようにと思って・・・ >
本誌が確認してみると、他の議員が受け取った電話というのも、確かにほとんど同じだった。ハタからは「手抜き」にしか見えない。
また、別の若手議員は、「小沢グループの恫喝もひどいが、菅首相サイドも結構、やることが悪辣です」と愚痴をこぼす。
「蓮舫行政刷新相から、突然、『私の予定が○日に空いたの。だからそちらの選挙区に行って街頭演説しましょうか』というんです。もう党員・サポーター票は締め切ったわけだし、本来は街頭演説しても意味ないでしょう? これは要するに踏み絵なんです。彼女が来て、一緒に街頭演説する姿が報道されれば、ボクは菅派ということになる」
態度は未定としながら、菅首相に不信感を抱いている議員もいる。1年生議員の一人で「政策論議による代表選を実現する会」の福島伸享代議士はこう話す。
「代表選の間、国政は完全に停滞しています。そもそも候補を一本化して、この非常時の代表選を回避しようという動きがあったのに、菅さんを応援するグループの中から、『戦え、戦え』という声が上がり、こうなってしまった。チャレンジャーの小沢さんのほうはまだ分かりますよ。
でも受けて立つ現職の総理の度量に問題があったように思います。この人は国のことではなく、自分のグループのことだけを考えているのではないか。そうした不信感を周囲に抱かせたことは否めません」
菅内閣で要職を務める議員の一人は、本誌の取材に対し不穏なことを語った。
「立場があるので、公の場面では『菅首相を支えよう』と言っている。でもホンネは別です。今回、菅支持派のやり口は、他人の足をやたらと引っ張るだけ。これでは挙党一致なんて、もう二度と望めない。
菅支持を口にした途端、菅シンパのマスコミが押し寄せてきて『小沢氏のスキャンダルを探しているが、何かないか』と言われるし、ほとほと嫌気が差した。代表選まで、事務所を閉めてしまおうかと思っています。当日も、どうせ無記名投票なのだから、いっそ別の名前を書こうかと思っているくらい」
今回の代表選は、「空中戦」と「地上戦」の戦いにもなった。菅首相サイドは、蓮舫氏ら人気閣僚を連日のようにテレビに出演させ、あるいはマスコミに敵陣営のスキャンダルを流し、世論を喚起することで勝利を目指している。
一方、小沢氏は丸1日かけて全議員の事務所を回ったり、連合や全国郵便局長の会合に足を運んで支援を依頼したりと、かつてなら「ドブ板」とも言われた、田中元首相直伝の戦術で、起死回生を狙っている。
それはいわば、「新」と「旧」の争いでもある。清新・刷新を期待されて政権交代を果たしたのが民主党だが、その「新しさ」の虚構と限界が見えたのも、この1年の政権運営だった。
冒頭で懊悩する民主党議員のホンネを語った細野氏は、こうも話している。
「菅さんは高杉晋作を目指しているというが、実際にそうなのかも。つまり今は幕末の幕政改革の段階なんだ(高杉は維新前に病死)。果たして本当に"維新"はなったのか。真の革命家は誰だったのか。それは20年後にならないと評価が定まらないと思う」
小沢氏には、これまでの生涯、「党首選、党代表選で不敗」という"神話"がある。その小沢氏が、大逆風の中、あえて代表選に出馬してきたことの意味を、菅首相らは恐れている。
復讐するは我にあり―。権力闘争の果てに、最後に立っている者は誰なのか。
ああ菅直人、君に何の志がありや
ポストで釣るわ、スキャンダルは流すわ、過去の栄光にすがるわ
「カネの次は下ネタか。あいつらはただの左翼じゃない。連合赤軍だ。仮にも同じ党の仲間を次々にリンチして殺そうとしている。こっちは大人だから黙っているけど、向こうがその気なら代表選後の挙党態勢なんて無理に決まっている」(小沢支持の中堅代議士)
小沢陣営が怒っている。仙谷由人官房長官や枝野幸男幹事長、小宮山洋子財務委員長らが、代表選前に小沢代表・幹事長時代の組織対策費を調べ上げ、「小沢封じ」を画策したというのは、もはや永田町では知らぬ者はいない。
それに次いで、今度は小沢氏の秘蔵っ娘・青木愛衆院議員が小沢氏と親密な関係にある、いや本当に親密なのは小沢氏の政策秘書で、一緒にホテルにも泊まっていると週刊誌が競って報じたのである。
これらが菅総理陣営のリークであるという確証はないが、小沢陣営にとっては、このタイミングでスキャンダルが報じられた時点で菅サイドの仕業。そう信じて疑っていない。
たしかに、菅陣営の最近の動きを見ると、小沢陣営が怒るのも無理はない。
青木氏と小沢氏の関係について記事が出るらしいという噂が流れると、早速、菅陣営はそれを最大限に利用している。
「うちの議員は早い段階で小沢さん支持を打ち出しているのに、菅さん陣営の同僚議員からは『小沢さんのスキャンダルが出るから、支持を止めたほうがいい』と電話がかかってきた。どちらに入れるか決めかねている議員のところは、もっと露骨な働きかけがあると聞いています」(小沢支持派の議員秘書)
この秘書が言うとおり、代表選が終盤になるにつれ、陣営や菅氏のやり方はまさになりふり構わず。
橋本勉衆院議員(当選1回)が語る。
「菅さんからは2回、携帯に電話があり、岡田外相からも電話がありました。長妻厚労相などは、私が留守中にわざわざ地元(大垣市)の自宅まで訪問されたそうです。皆さん、『一緒にやっていきましょう』とおっしゃっていましたが、私は地元の声を聞いて、最後に判断するつもりです」
そして、相手が簡単になびかないと見るや、ポストで釣ろうとする。ある1年生議員の所には菅氏本人から電話があり、
「今度は政務官の人事まで、私が決めようと思っているから」
と告げたという。1年生議員に閣僚を約束することはさすがにできないが、要は自分を支持してくれれば政務官にはしてあげますよというメッセージだ。露骨な・利益誘導・型の手法である。
菅氏があまりに頻繁に電話をかけまくっているので、思わぬ批判も小沢陣営からは上がっている。総理としての公務があるからと伸子夫人が議員会館を回ったり、地方議員に電話をかけたりしていたが、実際は菅氏も公務中に官邸の電話を使ってかけているのではないか、公私混同ではないか、という批判だ。
菅氏から電話をもらったという1年生議員の一人は、本誌の取材に対して携帯の着信履歴を見せてくれたが、首相動静によれば、着信があった時間には、菅氏は官邸の執務室にいたことになっている。
しかも、電話では「菅事務所です。総理と代わります」と言って、すぐに菅氏が出たといい、公務中に事務所の人間を官邸に呼んで多数派工作をしていたとなれば、小沢陣営の言う公私混同批判もうなずける。
■政策よりも悪口が得意
だいたい菅氏は現職の総理なのだから、公務に専念し、堂々と小沢氏の挑戦を受けて立てばよかった。にもかかわらず、執拗なまでに「政治とカネ」で小沢氏を攻撃し、身内の蓮舫行政刷新担当相から「政治とカネの問題から、政策論議に移りましょう」と諫められたほど。
ただ、いかんせん政策論議になると途端に精彩を欠くのが菅氏の常だ。東京・新宿や大阪・梅田での立会演説会でも、菅氏の口から出るのは、市川房枝記念展示室を訪れて市民運動家としての自分の原点を確かめたとか、薬害エイズで官僚の壁を打ち破ったとか、過去の栄光ばかり。
集まった小沢サポーターからは「昔の自慢話はいい」と厳しい声が飛ぶのも当然で、政策らしい話といえば、お決まりの何の具体性もない「一にも雇用、二にも雇用、三にも雇用」だけ。
代表選に入って内閣支持率がじわじわと上がっていることに気を良くし、「これまでやってきたことが評価された」と自画自賛している菅氏に、「小沢氏にも入れたくないが、菅総理のままではマズい」と悩む1年生議員の本音をお伝えしておこう。
「毎日、両陣営から電話があって『菅だと国会が回らないぞ』『小沢派はもともとカネに汚い連中なんだ』と悪口ばかり聞かされる。私が聞きたいのは、この国をどうするつもりなのかという理念なんです。円高対策や景気対策がすぐにでも必要なのに、総理が身内の争いにかまけていていいのでしょうか」
今回の代表選は、最初から最後まで「小沢氏が総理になるのを認めるか否か」が争点で、「菅総理が続投すべきか否か」ではなかった。それは、後者の問いの答えはあまりに自明だったから。菅総理、この問いの答え、わかりますよね。
またまた鳩山由紀夫人生勘違い、政治は筋違い
新人議員を叱責してみました!
「穏やかなはずの鳩山さんが、代表選が終盤に向かうにつれ『菅さんでは日本の危機を救えない』『菅さんは嘘つきだ』などと過激な発言をして、菅グループを挑発しだしたんです。あれだけ『党の分裂は避けねばならない』と率先して言っていた人が、いまでは好戦派の急先鋒ですよ」(菅グループの民主党議員)
平和の象徴であるはずのハトが、ひどく好戦的なタカになっている―この異常現象は、民主党崩壊の前触れなのか。
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「菅さんは小沢さんのカネの問題をいうけど、菅さんだってクリーンじゃないのにね・・・」
鳩山由紀夫前総理がこんな本音を漏らしたのは、9月3日、小沢一郎氏が数名の議員を引き連れ、鳩山氏の議員事務所を訪れたときのことである。挨拶もそこそこに、鳩山氏は小沢氏に菅総理への不満をポロポロとこぼしたのだ。
菅総理の何を指して「クリーンでない」といったのか、鳩山氏の真意は不明である。同席していた関係者は「あんたもクリーンじゃないでしょ」と胸のうちで叫んだことだろうが、この発言をきっかけに、鳩山氏は堰を切ったように菅総理を"口撃"しはじめたのである。
9月7日午後、鳩山氏は中山義活議員の事務所に一回生議員を集めると、次々と菅批判を繰り広げた。
「(8月30日に菅さんと会ったとき)『今回のことは丸くおさめましょう』と言ったのに、菅さんは翌日にまったく違うことを言っていた。菅さんには裏切られた! 騙される悔しさを味わった」
「菅陣営はポストをちらつかせて勧誘しているというが、それはよくない!」
「菅さんでは日本の危機を救えない。今の日本を救えるのは、小沢先生しかいない!」
タカのごとく菅と小沢の対決を煽る鳩山氏。菅総理が自分の言うことを聞いてくれない怒りが、いまになって爆発したようだが、友愛の精神はどこに行ったのやら。
コントロールが利かなくなったのか、鳩山氏は「自民党には、小沢さんと協力するという人はいても、菅さんとは協力できないと言っている」と、すでに小沢氏と自民党の間で、なんらかの話が進んでいることを疑わせるような発言を、うっかりとこぼしてしまう始末であった。
凶暴化したハトの嘴は、味方にまで向けられたというからタチが悪い。鳩山グループに所属する議員の一人が鳩山事務所を訪ね、「菅総理を支持する」と表明すると、鳩山氏は強い口調でこう質した。
「一体どういうこと?」
僕は小沢さんを支持すると言っているのに、それを聞かない議員がいるのか―。しかめツラをする鳩山氏に、この議員はその理由を慎重に説明したが、鳩山氏は終始不機嫌なままだったという。
私が言っても仕方ないなら、直接小沢さんに口説いてもらおう。そう思った鳩山氏は9月7日の夜、赤坂の中華料理店で開かれたグループの会合に、サプライズゲストとして小沢氏を呼んだ。ところが、小沢支持ではない議員らは、この演出に興ざめしたという。
「菅さん支持を表明している石井一議員は、『今日は鳩山グループの会というから来たのに、まるで小沢さんの決起集会や。こんなもん、だまし討ちやないか!』と声を荒らげていましたよ」(出席議員の一人)
なにからなにまで空回りで、グループ議員からも愛想をつかされた鳩山さん。8日にはロシアを訪問し、メドベージェフ露大統領主催の国際会議に出席したが、その肩書は「首相特使」。総理の命を受けて嬉々として海外へ飛びながら、菅総理を批判するのはおよそ筋違いというものだ。右へ左へふらつき歩くそのさまは、ハトがエサを求めて歩く姿にそっくりである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1204
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