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今週のキーワード 【第144回】 2010年9月14日 真壁昭夫 [信州大学教授]
2010年9月14日
うやむやにされる「ペイオフ発動」の影響
振興銀行破綻の“真の責任者”はどこにいる?
9月10日、経営再建を進めていた日本振興銀行は、多額の債務超過のため、自主再建をあきらめて破綻申請をした。この申請を受けて金融庁は、同行の経営破綻を認定し、預金1千万円までの元本とその利息だけを保護する「ぺイオフ」を発動すると初めて発表した。
これまで政府は、その影響の大きさを考慮して、金融機関が破綻しても公的資金を注入するなどの方法によって、実質的に預金全額を保護してきた。ところが、今回実施されたペイオフでは、「保護されるのは1千万円までの預金元本とその利息」に限られる。
逆に言えば、それ以上の金額については、支払額が一部カットされるケースが発生する。つまり、預金金額の一部が預金者に戻らないことが考えられる。
■初のペイオフ発動の背景にある
「影響が限定的」という理屈は本当か
今回のペイオフ発動の背景には、主に2つの理由がある。
1つは、日本振興銀行の破綻による影響が限定的と見られることだ。破綻によって、預金の払い戻しに影響が出る預金金額は約100億円と見られ、預金総額全体(約6000億円)の2%弱に留まると予想される。
また、同行は自前で銀行間決済の仕組みを持っておらず、今回の破綻がわが国の金融システム全体に与える影響は軽微と考えられる。さらに同行は、定期預金しか扱っていないため、企業の資金決済に支障が出る可能性も低い。
もう1つの理由は、同行の不良債権が多額に上るため、公的資金の注入に国民の理解が得られにくいことだ。同行の不良債権の増加については、前経営者である木村剛氏の経営方針が強く影響していると見られ、金融専門家の間でも「同氏の経営手法はかなり強引だった」との批判が出ている。
そうした状況下、政府が救済の手を差し伸べることについては、「国民の賛同が得られない」との読みがあったのだろう。とはいえ、今回のペイオフ発動は、国民の多くにとって本当に影響が少ないのだろうか?
■実質的に「全額保護」を続けてきた
預金保護制度が果たす社会的役割
まず、われわれの生活に大きな影響を与えるかもしれないペイオフに関する一般知識を整理しよう。
預金者が金融機関に預金を行なうと、その預金の種類などに基づいて保険をかけることになる。保険の意義は、仮に当該金融機関が破綻したときでも、預金の一部または全ての金額を保護するためだ。
ただし、利息の付かない決済性の預金については、全額が保護の対象になることになっている。その場合、保険金は金融機関が負担し、保険を受け付ける機関は、国が作った預金保険機構という組織となる。
実際に金融機関が破綻したとき、保険によって保護される金額は、利息の付く定期預金や普通預金については預金元本1千万円とその利息である。決済性預金は全額だ。したがって、国内の金融機関が破綻した場合には、その範囲の預金は必ず戻ってくる。それに対して、外貨預金などは預金保険の対象にはなっていない。
預金保険の意味は、金融機関が破綻したときに預金者の不利益を小さくすることによって、社会全体に与える影響を極小化することにある。
一方、最初から全額保護するとの姿勢を明確にすると、「全額保護されるのであれば何をしてもよい」という、一種のモラルハザードが生じることが懸念される。それに加えて、保険金負担が過大になることを防ぐ狙いもある。
そのバランスを考えて、預金保険制度が発足した1971年以来、わが国の保護限度額は元本1千万円と規定されたのである。
■日本振興銀行の特殊性だけを
「ペイオフ解禁」の理由にしてよいのか?
1971年、わが国のペイオフ制度が制定されたのだが、1990年代初頭のバブル崩壊以降、金融システム不安の深刻化などによって、政府はペイオフ制度を凍結して、原則として預金全額保護の姿勢を打ち出した。
その背景には、預金者の不安を和らげることで、金融システムの正常化を狙ったことがある。
今回、金融庁はそれまでのスタンスを変えて、日本振興銀行の破綻にペイオフを発動した。金融庁のスタンスを変えさせた理由は、何と言っても同行の「特殊性」にある。
もともと同行は、中小企業金融に特化した金融機関を目指して設立された。しかし2005年、木村剛氏が社長に就任し、その影響力が次第に顕著になるにしたがって、その経営方針は大きく変わったと言われている。
そうした方針変更に伴い、同行は中小企業向け融資に留まらず、大手商工ファンドから大口の債権を買い取るなどの手法によって、規模の拡大を目指すことを模索するようになった。
問題は、債権買取り時のリスク検証が甘かったり、一部の手続きに不備が露呈し始めたことだ。それは、一人前の金融機関としては許されるものではない。
09年6月、金融庁はついに同行への立ち入り検査に着手した。同検査は、結局10年3月まで続き、異例の長期間に及んだ。その検査の過程で、木村前社長らが検査忌避を画策した容疑が発覚し、7月には木村氏をはじめ5人の逮捕者を出すに至った。
金融専門家の一部からは、「木村前社長の強引なやりたい放題の経営手法が、墓穴を掘った」との指摘もあるようだ。
■金融システム不安を起こさないためには
政策当局の責任を明確化することが必要
金融機関は、経済全体の血液である資金を必要な所に流通させる「血管」の役目を果たす。しかも金融機関は、預金者の大切なおカネを預かる重要な機能を持っている。
そのため、金融機関の破綻は一般企業のそれよりも大きなインパクトがある。インパクトの大きな金融機関の破綻防止を目的として、各国とも様々なチェック機能を工夫している。その1つが監督官庁の検査であり、内部監査制度の拡充に対する要請だ。
今回の日本振興銀行のケースでは、そうしたチェック機能が当初の期待通りに働かなかったのである。同行の破綻は、ワンマン経営者と言われた木村前社長の経営手法の失敗によるところが大きいとされているが、ある意味では、「暴走した同氏の行動にブレーキをかけるべきシステムがワークしていなかった」とも言える。
では、システムがワークしなかった原因はどこにあったのか? まずはその点を明確にすべきだ。同行の経営陣や監査役、監督官庁を含めた関係者の誰が、本来果たすべき機能を怠ってしまったのか? その責任は重い。
金融庁は詳細な調査を行なって、その内容を包み隠さず国民に開示すべきだ。そして、今回のように「一部の経営者の暴走が原因」と言われるような金融機関の破綻を防ぐ仕組みを、再構築しなければならない。
それができないと、預金者が安心して金融機関に預金を預けられなくなってしまう。そういった不安が現実味を帯びてくると、些細なことから金融システムに対して疑心暗鬼の火種が出てくるとも限らない。今回のケースをうやむやにすべきではない。
世論調査 http://diamond.jp/articles/-/9372?page=4
質問1 「初のペイオフ」がもたらす影響をどう考える?
特に影響なし じわじわと影響が出そう 急激に影響が出そう わからない その他
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