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「週刊ポスト」9.17日号
平成22年9月6日(月)発売
小学館 (通知)
マスコミの偏向
ネット調査では小沢支持7割超でも新聞はなぜか報じない
大新聞の政治記者よ、「あいた口がふさがらない」のはあなた方だ
上杉 隆(ジャーナリスト)
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菅・小沢両氏が立候補するまでのメディアの迷走は、確実に記者クラブの終焉を予感させた。前号では「小沢VS記者クラブ『最後の大決戦』」としたが、どうやら政権発足前に、早々と勝負はついたようだ。
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根拠は世論調査だけ
最近の新聞を見ていると、ついにここまで感情を剥き出しにしてきたかと、驚き呆れてしまう。
8月27日付の社説では、産経が〈小沢氏を担ぎ出す所業には、聞いた口がふさがらない〉と書けば、朝日の見出しは〈あいた口がふさがらない〉。対立する論論調が売り物だったはずの両紙が、奇妙な一致を見せた。
そもそも、新聞・テレビはこれまで、小沢氏に対し「陰の支配者」「権力の二重構造」といった批判を繰り返してきたはずだ。それが、いざ表に出て代表に立候補したら一斉批判とは。
「あいた口がふさがらない」という言葉は、そっくり記者クラブメディアの方々にお返ししたい。
また、これまで新聞・テレビは、「マニフェストを破ることは有権者への裏切りだ」といってきたのに、今回に限っては、「菅氏はマニフェストを柔軟に修正する考え」などと書き、批判の対象としていない。それどころか、小沢氏の出馬が取り沙汰される以前には盛んだった菅政権への批判も、いまや消えてしまった。
産経などが典型だが、ちょっと前まで記者が仙谷氏を「赤い官房長官」などと揶揄していたはずが、一転、小沢氏に矛先を変え、〈小沢氏出馬 国の指導者に不適格だ〉(8月27日付社説)とまでいい切った。管直人は嫌いだが、小沢一郎はもっと嫌いだ、ということか。記者クラブメディアの「小沢嫌い」が、報道を歪めている。
その象徴が「世論調査」だ。
各紙は小沢氏の出馬表明を受けて、一斉にお得意の世論調査を行なった。共同通信の調査では「代表になってほしい候補者」に菅直人首相を挙げた人は69・9%で、小沢一郎前幹事長の15・6%を引き離した。質問の仕方は微妙に違うが、毎日新聞は78%、読売新聞は67%。産経新聞は60%と、いずれも菅氏支持が大差をつけている。
ところが、インターネットの世論調査では、反対に「小沢支持」という結果も出ている。ヨミウリ・オンラインの「小沢出馬を支持するか、しないか」の調査は「小沢支持76%」、スポーツニッポンのネット調査でも「首相にふさわしいのは小沢 80%」と「出馬を支持する 82%」という数字が出ているのだ。
読売は、自社の世論調査に「小沢氏逆風」との見出しを打ち、「非常に勇気づけられる数字だ」という菅陣営の声を紹介している(8月30日付朝刊)。しかし一方で、同じく自社で行なったはずのネット調査の結果は、全く紙面に出ない。
世論調査がそれほど大事だというのならば、都合のいいデータだけでなく、双方の結果を持ち出さなければアンフェアではないか。
そもそも、首相に世論調査の「受け止め」(感想)ばかり聞いたり、世論調査の数字のみを根拠に政権を批判したりするのは、日本のメディアだけに見られる特有の現象である。「私は取材していません。だから世論調査に頼るしかないのです」ということを世間に向けて宣言するに等しい行為だからだ。また、いつも世論が正しいとは限らない。ヒトラーも、旧日本軍も、ベトナム戦争も、圧倒的な世論に支持された。世論調査はあくまで参考にとどめるべきだろう。
「小沢は恐ろしい」
今回の代表選で、民主党はこれまでになかった党内抗争を経験することになる。
勝者は公認権、政党助成金、官房機密費など、人事とカネを全て手中に収めることができるからだ。 ある議員のもとへ、菅陣営、小沢陣営双方から電話があったという。菅陣営からの電話は「よろしくお願いします」というだけだったが、小沢陣営は開口一番「わかってるよね?」。しかも、「メディアにはいわなくていい。支援者には菅支持と表明しておけ」と、党内抗争を知り尽くした戦略で攻めてきている。
その議員はいった。
「やっぱり小沢は恐ろしい」
民主党には、そうした権力闘争の経験則を持った人間が少ない。いま菅陣営は、小沢側の恐ろしさを嫌というほど味わっている。
しかし、それ以上に戦々恐々としているのが、記者クラブメディアなのだ。
前号でも述べたとおり、小沢氏は誰よりも早く記者会見のオープン化を行なってきた政治家であり、首相官邸に入った場合、さらに記者クラブの開放を進めていくことになるだろう。
西松建設関連の政治団体から献金を受けた国会議員は14人いるが、そのうちこの件に、ついて記者会見を開いたのは、小沢氏ただ一人である。記者クラブの「政治とカネ」追及がいかに恣意的なものかよくわかるが、小沢氏が勝てば、そうした欺瞞はもはや許されなくなる。
「不出馬誤報」の背景
もっとも、代表選の勝敗以前に、小沢出馬をめぐる報道で記者クラブの限界はすでに明らかになっている。
小沢氏が菅氏との会談後に立候補を表明した8月31日、各紙朝刊は「小沢氏不出馬強まる」(毎日新聞)「小沢氏不出馬で調整」(産経新聞)など、さも小沢氏が不出馬へ動いているかのような見出しを打った。ところが、結果はご覧の通りだ。
小沢氏の出馬の方針は全くぶれていなかったし、小沢氏・菅氏双方が認めたように、小沢氏から菅氏への「ポスト要求」はなかった。
ならばなぜ、このような誤報が蔓延し、国民をミスリードしたのか。実はこの間、鳩山グループの平野博文氏、小沢グループの山岡賢次氏といった、当事者でない議員たちが、自分に都合のいい「リーク情報」を記者クラブメディアに流していた。ちなみに、菅陣営においてその役を務めたのは、仙谷官房長官とパイプを持つ野中広務氏であった。
野中氏は、現政権にも影響力を持つことをアピールするために、マスコミへのリークを行なった.(野中事務所は、「そのような事実は全くありません」と否定)。
「小沢氏を最高顧問に」「仙谷氏は辞めるといっている」!こうした、当事者がいってもいない 「リーク情報」に乗っかった新聞・テレビは、それを自分たちの作り出したストーリーに接ぎ木していった。
その結果作られたのが、鳩山氏を「キングメーカー」として、小沢氏が「密室談合」を仕掛け、菅氏側にポストを要求したという構図である。
ところが、現実は全く違った。鳩山氏は、確かに「痩せた森喜朗」としてキングメーカー然と振る舞おうとしたが、本人が「残念」と語ったように、実際には小沢氏を動かすほどの影響力など持たない、ただの伝書鳩に過ぎなかった。
そして、その鳩山氏が、自民党の「五人組」(※)のような「密室談合」による代表選回避を仕掛けたところを、蹴っ飛ばしたのが小沢氏だったのだ。
当事者3人の語った言葉をそのまま受け取れば、そうした事実は簡単に見えてくるはずだが、記者クラブメディアは関係者の「リーク」に乗っかり、無意味な裏読みに奔走した結果、読み違えてしまったのだろう。
どうしても小沢氏を悪者にしたいという記者クラブメディアの思惑が引き起こした、自業自得である。
※2000年に小渕恵三総理が脳梗塞で倒れた際(その後死去)、後継総理を選ぶホテルニューオータニでの会合に集まった、森書朗、青木幹雄、村上正邦、野中広務、亀井静香の5名を指す。話し合いの結果、森総理が誕生した
記者クラブの終焉
今後の選挙戦でも、記者クラブメディアは苦戦することになるだろう。
民主党のグループには、自民党の派閥のような縛りがない。典型が鳩山グループで、鳩山氏の人の艮さでくっついてはいるが、拘束は極めて緩い。小沢鋭仁氏が独自の勉強会を立ち上げるのも自由であるし、鳩山氏が代表選回避に動いたにもかかわらず、グループ内は主戦論が大勢を占めたように、必ずしも鳩山氏の意向通りに一致して動くわけではない。
この例を見ても、民主党の場合、グループごとの票読みはもはや意味がないのである。小沢陣営が一人ずつに電話で念押ししているように、議員一人ひとりの意思確認が重要なのだ。
それは報道にも当てはまる。「○○グループが●人」といった組織的な票読みで勝敗を予想するのは、かつての自民党の派閥抗争の経験則でやっている古いスタイルでしかない。記者クラブメディアは自民党時代、派閥領袖にぶら下がっていれば情報が取れたし、それが派閥全体の意思表示でもあった。しかし、そのやり方はもはや通用しないことが、今回の選挙で明らかになりつつある。
どちらが勝つかはまだわからない。しかし、少なくとも今回の代表選が、記者クラブを頂点としたメディアシステムの終わりの始まりであることは間違いない。
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