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民主党代表選が大詰めを迎え、菅直人首相VS小沢一郎前幹事長の論戦が白熱化している。両氏とも経済政策では疑問点が多いのだが、論戦を通じて意外な収穫が1つだけあった。それは、小沢氏が「為替政策」に関して正論を展開したことである。
もっぱら「市場介入」の有無に関心を集めるマスコミは詳しく取り上げなかったが、次期首相になるかもしれない小沢氏の「正論」は押さえておいた方がいいだろう。
本論の前に、経済運営に関する両氏の主張を整理したい。菅氏のスローガン「一に雇用、二に雇用」には、「本末転倒」の感を否めない。雇用確保は確かに重要だが、それで経済が良くなるわけではない。順番は逆で、経済成長を通じて雇用は確保されるものだ。
一方、小沢氏はマニフェスト(政権公約)の厳守を訴えるが、その財源確保は説得力に乏しい。歳出構造の大胆な見直しが本当にできるのか。また、政府資産の証券化で資金を捻出する案も披露したが、これは本来は債務返済に充当するのが筋。この資金を支出に使えば、政府債務は膨れ上がるだけだろう。
小沢氏「円高を活用して海外の資源に大きな投資を」
両氏の経済政策は総じて期待できないものの、円高問題をめぐる論戦(2010年9月3日のNHK番組)で小沢氏が市場関係者の賛同を得る発言があったのは唯一の救いだ。その語録を紹介してみよう。
(1)「円が高くなるのは、中長期的には国にとっては決して悪いことではない」
(2)「円高の被害が大きいのは中小・零細企業。その意味で急激な円高は阻止すべき」
(3)「ただ、『市場介入』は、他国が円高を容認していると、膨大な資金が必要で、単独ではなかなか効果が出ない」
(4)「例えば円高を活用して海外の資源に大きな投資をする。今、資源競争で中国などに負けている。円高とは(対外)投資しやすいことで、それを積極的にやることが急激な円高の抑制に効果がある」
(5)「日本は外需頼みで、景気は米中に支えられてきた。このため、内需で一定の成長が保てるよう経済構造を変える必要がある」
無制限介入なら、事実上のドルペッグ政策
いかがであろうか。これらの発言だけみれば現実認識は正しく、経済運営の基本的な在り方として筋が通っている。語録の意味を順を追って説明してみたい。
まず(1)については、足元の円高は確かに悪影響があるが、通貨の対外価値は本質的には国家経済への信認を反映する面がある。特に膨大な公的債務を抱える日本は、短期的には円安が望ましいとはいえ、通貨が下落する方向の先には信認の動揺が待ち構えている。その意味で、「円高=悪」と単純に受け止めない姿勢は重要だと言える。
(2)は、グローバル展開する大企業には為替ヘッジを駆使する術がある点を踏まえた発言だ。マスコミの報道を含め、世の中は円高懸念で一色の感があるが、全産業が打撃を受けているわけではない。影響がどこに及んでいるかを、冷静に見据えることが重要だろう。
(3)の市場介入に対する見解は正しい。理論上、自国通貨の売りは無制限にできる。だが、実際にそうすることはできない。垂れ流すドルを無制限に買えば、「外国為替資金特別会計」(外為特会)が米国債の引き受けマシーンと化すからだ。
また、ある一定水準で円高に強引に歯止めを掛ける無制限介入は、事実上のドルペッグ政策となる。この場合、当コラム(2010年9月1日「『TOKYO連銀』の道を歩み始めた日銀」など)で何度か触れたように、日本は独自の金融政策を喪失してしまう。それで構わないならいいが、だったらドル化した方が話は早い。
単独介入は所詮、円高の速度を少し緩める程度のスムージングが精一杯だ。政府にとっては、円高を止めようとする具体的な意思表示でしかない。小沢氏はそのことを理解しており、介入で円安反転など目指せるものでもないことを正直に語っている。
結局は円高と共存するしかない、外需依存から内需拡大型へ転換を
結局は円高と共存するしかない。ではどうすればよいのか。そこで(4)の発言につながる。円高に歯止めを掛けられないのが現実であるなら、円高を利用する方法を考えるしかない。円の価値が上がることは、購買力が増すことを意味する。
国家的な課題は、それを利用して石油や鉄鉱石などの天然資源の利権を確保することであろう。また、民間企業にとっては、海外企業を安く買えるチャンスでもあり、そうした官民の対外投資は外為市場では円売り圧力となり、円高に歯止めが掛かる要因となる。
さらに根本的な課題として提示されたのが(5)である。皮肉なことだが、貿易立国としての成功が円高を招いた面がある。競争力のある製品が売れると、必然的に儲けた外貨を円に転換する必要がある。輸出で成功するほど、外貨売り・円買いが続くわけだ。
円相場がそれで上昇すると、日本の輸出企業は生産性を高めて乗り切り、円高への抵抗力を高める。また、それで儲けると同じことを繰り返す。つまり、輸出で勝ち続けるからこその円高という循環が形成される。
これを断ち切るには、日本経済の外需依存の体質を内需拡大型に改めるしかない。円高のメリットを知り、介入効果の限界も理解し、そのために経済構造の転換を図る必要がある、という(1)〜(5)の論理は一貫している。
今が最後の円高局面? 財政悪化で円安が本格化
不可解なのは、小沢氏がそこまで理解しているにもかかわらず、財源の手当てもろくにできないのにマニフェスト(政権公約)の厳守にこだわっていることだ。政権保持のためには、例えば子ども手当の拡充など国民の人気取りに走らざるを得ないのだろうか。
経済政策のあるべき姿は分かっているにもかかわらず、支持率維持のために結果的に衆愚的な財政バラマキに流れるのであれば、(1)の解説で指摘したように財政悪化が国家の信認低下につながり、本格的な円安局面に至る公算が大きい。
理論上は無制限にできる自国通貨売りの介入とは異なり、自国通貨を防衛する介入は「外貨準備」という明確な限界がある。日本は円換算100兆円近い外貨準備を誇るが、防衛介入が始まれば日々数兆円もの減少となり、1カ月もたないで枯渇するかもしれない。
その時、日本の金融市場はトリプル安となり、財政破綻が現実化する。今が最後の円高局面でないことを切に祈りたい。
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政策論争を望んだ以上、
くだらぬ政局は無視してこういう議論を深めてほしい。
雇用を声高に叫んでみても、菅首相の口からはまだ具体策が述べられていない。
これでは選挙結果いかんではなく、勝負はすでに決している。
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