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消費税は日本にとって不適切な税である。民主党の敗北は政治的な安定を損なう深刻な問題ではあるが、選挙結果を受けて増税問題が再考されるのはいいことだ。
最終的に日本は巨額の財政赤字に対処するために増税しなければならないことは確かだ。しかし、それが消費税である必要はない。
日本の成長を妨げている最大の障壁は、消費の慢性的な不足であり、その主な要因はGDPに占める家計部門の実質可処分所得の割合が低いことにある。日本では貯蓄率が劇的に低下しているので、所得が増えれば支出も増加するだろう。それなのになぜ消費税増税により実質可処分所得を引き下げ、消費をさらに低迷させる必要があるのだろうか。消費税増税は一部の国にとって好ましいが、日本はそうした国ではない。
鳩山由紀夫前首相は、子ども手当や高校の授業料無料化を通して家計所得を増やそうと試みた。その実施方法はアマチュア的で政策の一部に欠陥もあったが、その狙い自体は正しかった。一方、菅直人首相が主張するように消費税増税を行えば、消費が抑制されて日本の貿易依存はさらに高まってしまう。菅首相が「経済を内需主導に変えていく」という鳩山前首相の公約を民主党のマニフェストから削除したのは、単なる偶然なのだろうか。
消費税引き上げは最後の手段であるべきである。まずは歳入を増やし、同時に成長を促進する代替策を模索すべきだ。
納税者番号制導入と農地の優遇撤廃を進めよ
代替策の一つは納税者番号制の導入だ。脱税を減らすだけで歳入は数兆円も増える。プライバシーを理由に納税者番号制導入に反対するのは、いわゆるクロヨン(課税所得の捕捉率が、サラリーマンは9割、自営業者は6割、農家は4割であることを指す呼称)を温存するための建前のように聞こえる。
2004年のインタビューで財務省の高橋洋一氏(当時)は「納税者番号制を導入すれば消費税の5ポイント引き上げに相当する歳入増をもたらす」と語っている。これは菅首相が主張する消費税の引き上げ幅と同じである。高橋氏の推計が過大であったとしても、納税者番号制は導入すべきである。
障害となるのは政治的な要因だ。クロヨンを許すことで自民党は農村と零細小売業を優遇してきた。先の参議院選挙の自民党が得た29議席の大半は地方の一人区のものである。これらの選挙区は人口の29%を占めるにすぎないのに、自民党は議席の40%を獲得した。
菅首相は低所得層に消費税の一部を還元するために、納税者番号制の導入を提案していた。消費税増税が29の一人区での民主党の敗北の隠れた要因ではないかと思われている。だがもし菅首相が「納税者番号制を導入すれば税負担が公平になり、都市部のサラリーマンと高齢者の消費税増税の負担を軽減できる」と説明していれば、都市の有権者の支持を得ることができたはずだ。
もう一つの代替策は、都市部の農業所得に依存しない人が所有する農地への優遇措置を廃止することだ。現在、首都圏には税優遇を受けた農地が膨大にある。
1990年ごろ、旧建設省は東京駅から通勤時間1時間以内にある土地の45%が農地か遊休地であると推定していたが、それ以降、こうした土地はほとんど減っていない。国土交通省によれば、東京、大阪、名古屋の大都市圏において、非森林の土地のうち農地が占める比率は、90年の34%から02年の30%へと若干低下しただけだ。
これに対し、住宅、店舗、事務所や他の建物に使われている土地の比率は、90年の20%からほぼ変化がない。07年時点で、森林や荒れ地を除いた東京都の全土地の14%が農地に区分されており、神奈川県と大阪府の同比率はそれぞれ26%と22%に上る。
こうした不当な税優遇を廃止すれば、すぐに税収は増える。ただし、その最大のメリットは直接的な税収増効果ではなく、むしろその波及効果にある。税制改正と併せて、兼業農家が農地を売却しやすくなるような法律改正を行えば、低価格で事務所や住宅、店舗、工場を建設するための土地を取得できるようになる。その結果、GDPは高まり、税収も増えるだろう。
それと同時に、不動産のキャピタルゲイン課税を引き下げ、土地保有税を引き上げることも必要だ。そうすれば、土地を遊休化させずに活用しようという意欲が高まる。それによって、農業の大規模化や生産性上昇が進み、農産物の価格も低下するだろう。そして、農産物価格の低下によって可処分所得が増えた消費者は、他の商品におカネを回せるようになる。要するに、農業生産性の向上と消費需要の増大と税収増が同時に実現できるのだ。
過去数十年、都市部の農地の不公平な税優遇を廃止しようという動きはつねにあった。だが、そうした試みは自民党と農水省によって阻止されたり、大幅に骨抜きにされてきた。自民党が農業団体を優遇する理由は理解できる。しかし、なぜ民主党は自民党の政策を継続しなければならないのだろうか。
Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。
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