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たとえ「激震」という言葉が飛び交っても、本当に物事が激震することなど、ほとんどない。しかし、今回ばかりは、掛け値なしに政界に「大激震」が走った。8月26日、民主党・小沢一郎前幹事長が、9月14日の民主党代表選に出馬することを表明したのだ。「菅か、小沢か。これはもはや、どちらが勝ったとしても民主党は分裂含みとなります。負けたほうが党を割る可能性が極めて高い。自民党などの野党も巻き込んで、政界再編の動きが加速するでしょう。まさに混迷の極みです」(政治評論家・浅川博忠氏)
小沢氏が最終的に代表選出馬を決断した理由は、菅首相に対する強い「怒り」と、同時に抱く自身の政治生命への「焦り」だった。出馬を公表する直前、鳩山由紀夫前首相と会談を重ねた小沢氏は、自らの心情をこう吐露していたという。「菅は『政権交代ができたのは小沢のおかげだ』と言っている。そのクセ、『脱小沢』とはいったいどういう了見だ。謝るから挙党態勢に協力しろと言われても、ハイそうですかと納得できるか。菅は信用ならない」
本来、鳩山氏は小沢氏と菅首相との間を仲介し、和解の条件を探ることが目的だった。だが小沢氏の剣幕を前に、鳩山氏はただ同調するしかなかった。すくみ上がる鳩山氏を前に、小沢氏は、こう吐き捨てた。「参院選の結果も、いったい何だ。オレがやっていれば、あれほどの惨敗にはならなかった。少なくとも、自民党と五分五分の結果には持ち込めた。菅らは、その惨敗の責任も取ろうとしない。無責任極まりない」
実は小沢氏も、最初からこれほど強硬な態度を取っていたわけではない。そもそも小沢氏の出馬自体、直前までは「一部の側近が騒いでいるだけ」との見方も根強く、多くの民主党議員は、「まさか」と本気にはしていなかった。小沢氏は「政治とカネ」問題の責任を取り、6月に幹事長職から引いたばかり。そのカネの問題で、検察審査会による2度目の議決も控えているからだ。
そして菅首相の背後で政権を支える仙谷由人官房長官も、「小沢の出馬はない」と見ていた。世論の8割は、いまだ小沢氏に対して「NO」を突きつけている。まともな神経なら、民意を無視して代表選に出馬してくるなどあり得ない。「出られるものなら、出ればいい。そのほうがスッキリするくらいだ」 仙谷氏はそう嘯き、余裕の態度を崩さなかった。
しかし、この状況を一変させたのは、菅首相の優柔不断な態度である。小沢氏の側近など、一部の民主党議員が「小沢氏の代表選出馬を」と騒ぎ始めたとき、真っ先に動揺したのが、菅首相だった。「首相は8月中旬、軽井沢で静養した際、密かに鳩山氏と会って、小沢氏は本気で出馬するつもりなのか、その真意を確認してもらいたいと依頼しています。鳩山氏は当初、『菅さんと私は特別な関係』などと言って首相支持の方針を打ち出していたので、絶交状態にある小沢氏との橋渡しを懇願したのです」(民主党鳩山グループ議員の一人)
「菅支持」から一転、「大義に基づき小沢支持」を表明した鳩山氏 菅首相は、ひとたび動き出せば、何をしでかすか分からない小沢氏を怖れた。常識ではあり得ない代表選への出馬も、小沢氏だったらやりかねない。自らも復権を図る鳩山氏は、首相から持ちかけられた話に飛びついた。自分なら小沢氏と話ができるとしゃしゃり出て、8月19日には同じ軽井沢の別荘で開いた研修会に小沢氏を招待。
自らの存在感をアピールすると同時に、小沢氏と水面下での「手打ち」交渉を始めたのである。しかし、結果的にはこの鳩山氏の能天気で軽はずみな行動が、事態を決定的にこじらせることになる。「菅首相の意向を受け、手打ちしたらどうかという鳩山氏に対し、小沢氏は『挙党態勢を取りたいのなら、まずは人事を一新しろ』と要求を出した。小沢外しの急先鋒であり、参院選惨敗の責任者でもある仙谷由人官房長官、枝野幸男幹事長、安住淳選対委員長らの更迭です。
しかし、それを鳩山氏が首相に伝えたところ、『なかなか難しい』とクビを縦にふらない。小沢氏にしてみれば『ふざけるな。結局、菅はオレと和解するつもりはないじゃないか』と激怒した」(民主党幹部)小沢氏は「誠意を示せ」と言わんばかりに、菅首相に対して「自分を取るか、仙谷を取るか」を迫った。ところが、そこで首相は思考停止してしまう。現在は「仙谷政権」と言われるほど、政府における仙谷氏の存在感は大きい。
官邸の運営、閣内の取りまとめ、さらには霞が関の官僚機構との調整まで、首相はすべてが仙谷氏頼み。その仙谷氏が徹底した「小沢排除論」でいる限り、菅首相は身動きが取れない。結局、小沢氏にしてみれば、「菅は仙谷に完全に取り込まれている。もはや信用に値せず」となり、全面対決に踏み切ったのである。
「殺るか、殺られるかだ」
だが、その一方で、小沢氏にも強い焦りがあった。菅・仙谷政権が反小沢を掲げて進む限り、もはや自分の居場所は民主党内にない。幹事長を辞したことは、小沢氏に想像以上のダメージを与えていた。「参院選の際、小沢氏は独自に秘書や配下の議員を、肝煎り候補のもとに派遣してテコ入れをしていました。ただ、党費がまったく使えなくなったため金欠に陥り、『応援のための旅費や経費は自腹を切れ』という話になり、一部でかなり揉めたそうです」(民主党秘書)
党のカネを押さえ、その資金を自らの思うままに動かすことで"私兵"を増やしていく―。これが小沢氏のスタイルである。だが、その手法を封じられたことで干上がってしまい、身内の面倒もロクに見ることができなくなっていた。小沢氏をこの窮状に追い込んだのは、いうまでもなく仙谷氏である。勝手にカネを使わせないよう、幹事長ほか党の要職から小沢色を一掃。さらに枝野幹事長は「小沢時代のカネの使い方を、徹底的に洗う」と宣言し、小沢外しから「小沢潰し」へと向かっていた。
「仙谷・枝野らは党費の出納に関する情報まで外部に流出させていた。そこまでやられたら、もはや許せるレベルではない。向こうがこちらを"殺り"に来ているのなら、玉砕覚悟で全面戦争を仕掛けるしかない」(小沢グループ幹部) 囲碁が趣味の小沢氏は、形勢が不利になってくると、傍から見るとメチャクチャな、捨て身としか思えない一手を打つことがあるという。このまま黙っていれば、自分を舐めている菅・仙谷にいいようにやられ、座して死を待つだけ。だったら政治生命をかけ、捨て身の勝負に出てやる―それが小沢氏の心境なのだ。
こうして、小沢氏が「殺るか殺られるか」の最終戦争に踏み切った以上、9月14日の代表選が終わった後、民主党がそのままの原形を留めるのは困難だ。勝ったほうが政権を獲るのは当然だが、負けたほうは党内における生存権を失う。実際、菅首相の側近・寺田学首相補佐官も、「これで負けたら、菅グループは民主党を出て行くしかない」と、悲壮感漂う発言をしている。どちらが勝っても、民主党は分裂、そして政界は再編の時代へと突入していくことになる。
では果たして、菅・仙谷両氏と小沢氏、政権の担い手として生き残るのはどちらなのか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう語る。「代表選では、地方議員票(100ポイント換算)、サポーター票(同300ポイント)がおそらく半々に分かれるでしょうから、最終的には国会議員票(412人=議員票1票が2ポイント換算で計824ポイント)によって勝敗が決まると思われます。小沢さんは自分のグループに加え、鳩山グループ、羽田グループ、さらにはおそらく旧社会党グループがつくでしょうから、数の上では小沢さんが有利です」
412人の民主党議員のうち、小沢グループは約150人、鳩山グループは約50人。小沢グループ議員の一人は、小沢氏の出馬宣言直後に、「すでに議員票を200〜250押さえた」と豪語した。小・鳩両グループの合計がちょうど約200人であり、この議員もその数字を念頭に置いていたのだと思われる。小沢氏側近として知られる松木謙公代議士も、「三百パーセント、こちらが勝つ」と、絶対の自信を持っている。
これに対し菅首相は、自分のグループが約40人、知恵袋の仙谷氏が実質的なトップを務める前原グループが約40人、同じく菅支持を打ち出している野田佳彦財務相のグループが約30人。全部足しても小沢グループ単体にも及ばず、いかにも劣勢は否めない。しかも、300ポイントある党員・サポーター票も、下馬評では「配下の議員にせっせとサポーターを集めさせた小沢氏が優勢」(別の小沢派議員)という。まともにいけば、「小沢総理」誕生の可能性は大いにあると言わざるを得ない。
しかし前出の伊藤氏は、「そう単純に行くかどうか」と疑問を呈する。「今後、マスメディアは一斉に、『小沢氏の出馬は起訴逃れではないか』などと、あらためて政治とカネの問題に焦点を当ててくるでしょう。そうなれば世論、つまり党員やサポーターが、菅首相支持に動くかもしれません。それに、民主党内には無党派層的な議員が60〜70人もいる。彼らの行動も世論次第です」
鳩山を信じていいのか
仮に総理の椅子に座るとなれば、小沢氏には「体調不安」という問題もある。小沢氏は'91年に「狭心症」の発作を起こして以来、入退院を繰り返してきた。表向きは狭心症とされているが、実はもっと重篤な「心筋梗塞」だとも囁かれている。節制と安静が必要なため、小沢氏は毎日の昼寝が日課になっており、午後イチに行われる国会を欠席することが多い。
「そんな体調で、分刻みのスケジュールになる首相の重責に耐えられるのか」との声が、各方面から上がっているのだ。さらに、そもそも代表選に勝てるかどうかを考えた場合、小沢氏にとって油断ならないのは、鳩山氏の動向だ。鳩山氏は当初、菅支持を打ち出しながらあっさりと小沢氏に寝返り、「(小沢氏支持に)大義がある」などと言ってのけた。もはや「宇宙人だから」というお決まりの一言で済む問題ではなく、日本の政治史上、稀に見るウソつき政治家と言っても過言ではない。
こういう人物から「あなたを応援します」と言われても、まともに信じるのは危険極まりない。「鳩山氏が唐突に『小沢全面支持』を表明したことに、鳩山グループの議員の多くが戸惑っている。幹部の一人は、『どうしてこうなったのか。鳩山さんを説得しなければならない』と言っています」(別の鳩山グループ所属議員)
小沢陣営の見立てでは、鳩山グループを除いた党内の票読みは「菅が有利」と出ていたという。にもかかわらず、小沢氏が鳩山氏との会談後に出馬を打ち出したということは、「鳩山氏がグループを挙げての支援を申し入れた」(民主党中堅代議士)と見られ、つまり小沢氏は、同グループの票を当てにして出馬を決断した可能性があるわけだ。しかし、鳩山グループの議員は、ボスの言動に疑問を抱き右往左往している。
「26日午後のグループ幹部会で、29日にロシアから帰国する鳩山氏を待ち、菅・鳩山・小沢・輿石(東・参院議員会長)の四者会談を行い、全面衝突回避、つまり小沢氏の出馬撤回を求めようということになった。でも、輿石氏から即座に一蹴されてしまいました。どうしたらいいものか」(前出・鳩山グループ議員) 漂流する彼らが鳩山氏に造反したり、自主投票になったりして菅首相支持へと走れば、形勢は一気に不透明さを増すことになる。小沢氏は6月に、鳩山氏によって意図せざる「道連れ辞任」を余儀なくされた。ヘタをすれば今度もまた、鳩山氏の宇宙的な「罠」に嵌って、失脚する恐れがないとは言えない。
「死にたくない」
ただし、そうした諸々の状況を前にしても、小沢氏側近らは、「代表選の勝敗いかんにかかわらず、最終的に勝つのはわれわれだ」 と豪語する。「勝って小沢総理になれば、自民党も巻き込んで大連立構想を再現し、菅・仙谷らは党から追放する。仮に負けても、こちらが民主党を飛び出して、やはり政界再編だ。いずれにせよ、主導権を握るのはわれわれであって、菅に未来なんてないんだよ」(同側近)
事実、小沢氏は出馬宣言の直後から、さっそく囲碁仲間の与謝野馨元財務相(たちあがれ日本)らと連絡を取り、「戦後」を見越した措置を講じ始めた。ある野党党首は、「小沢総理」との連携の可能性について、前向きにこう語る。「民主党代表選は、小沢が勝つと思うよ。そもそも菅には統治能力がない。『ブラック・ジャック』じゃないが、確実にヤブだと分かっている医者に診てもらうより、たとえ胡散臭くても、抜群に腕が立つ医者のほうが誰だっていい。死にたくないから。どの野党も、ノーセンスの菅よりも小沢のほうが、各政策面でずっと連携しやすいはず」
追い詰められた菅首相に勝機があるとすれば、代表選までの2週間に、迅速かつ即効性のある景気・経済対策など、国民が真に求める政治を今度こそ明確に打ち出すこと。でなければ日本は、およそ20年間も封印されてきた禁断の最終兵器・小沢一郎に、未来を託すことになる。
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