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先行きが見えないデフレに急激な円高、止まらない産業の空洞化。菅直人首相と小沢一郎前幹事長の一騎打ちとなった民主党代表選の陰で、日本の「ものづくり」を支えてきた中小企業が苦境に立たされている。経営者たちの思いは――。
ガシャン、ガシャン、キー。スプーンを打ち出し続けるプレス機。研磨機からは火花が散った。洋食器製造で知られる新潟県燕市。9月でも35度を超す暑さに、工場内は蒸し風呂のようだ。作業員は製品に汗を垂らさないよう小まめに汗をぬぐう。
金属洋食器メーカー「アサヒ」の田中正勝社長は隣接した事務所で「こんな時に代表選なんて。国民のことを考えてんのか」と吐き捨てるように言った。
かつては日本の洋食器輸出を支えた燕ブランドも、右肩下がりの状況が続いている。出荷額もメーカー数も30年間で約4分の1に減った。
円高で国際競争力は失われ、輸入食器の価格が下がれば、国内での需要増も見込めない。生産自体が成り立たなくなる恐れがある。
「政治家の無策は産業空洞化を後押ししているとしか思えない。このままでは日本のものづくりが駄目になってしまう」。言葉の激しさとは裏腹に、田中さんの顔には寂しさが浮かんでいた。
「仕事があれば、何時までだって機械は動かすよ」。まだ日が高い午後5時すぎ。東京都大田区のコンプレッサー製造「三陽機械製作所」の黒坂浩太郎代表取締役は、止めた製作ラインを前に苦笑い。従業員が引き揚げ、物音一つしない工場。冷ややかさすら漂う。
同区には中小の工場が多く集まる。商工関係者は「急激な円高で、区内にある中小企業の9割9分はダメージを受けている」という。黒坂さんの周囲でも海外移転の動きが活発化し始めた。
代表選について尋ねると、大手電機メーカーの下請けが主な仕事の黒坂さんは「とにかく原発でも、新幹線でもいいから海外からばんばん仕事を取ってくることができる人。流れを変えなきゃ。『生活が大事』って言うんだろ。仕事がないと、生活も何もないよ」。
匿名で取材に応じた大田区内の工業用接着剤メーカーの社長は「この3カ月間、何もしてこなかった菅首相を許すことはできない」と怒りをあらわ。「“前科”がない分、まだ小沢氏の方がましかもしれない」。期待感を全く込めない口調だった。
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