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http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1009/06/news009.html
民主党代表選の街頭演説は大変な人出である。国民の関心は高い。まだ民主党に期待したいという人が多いということでもあるだろう。
菅直人首相と小沢一郎前幹事長の演説を聞いていた人の感想で興味深いのは、小沢さんのほうが力がありそうとか、菅さんが抽象的なのに比べると小沢さんのほうが具体的だったという人が意外に多いことだ。代表選出馬が決まってから、テレビ番組などにも出て饒舌に話す小沢さんを見て、「こんな人だったのか」と思う人も少なくあるまい。
小沢さんのほうに内容があるというより、菅首相のほうに内容がない、あるいは具体性がないことのほうが問題だと思う。政権を担当してわずか3カ月しかないとは言っても、鳩山内閣時代は副総理で、今年に入ってからは財務大臣も兼任した。国をどのように導こうとしているのかについて具体的なビジョンがなければおかしいのである。
菅首相の悪い癖
官僚依存からの脱却を掲げて1年前の総選挙で勝ったのに、このところ菅首相はすっかり官僚寄りになったと小沢さんは批判する。これに反論するために、大阪での立ち会い演説会では、自分が厚生大臣(当時)だったときに薬害エイズ問題を解決に導いたことを持ち出し、官僚寄りになったわけではないと反論した。そして具体性に欠けるとか景気対策についてビジョンがないと批判されて、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と叫んだ。
何か言われるといちいちそれに反論するのは菅首相の悪い癖かもしれない(国会答弁などでも、イライラしてつい余計に相手を挑発する姿はよく見る)。でも、国民が聞きたがっているのは、日本経済の窮地をどうやって救うのかということなのである。雇用が増えなければ税金も払ってもらえないから、雇用を増やすことが大事だというのはその通りに違いない。だが、どうやって雇用を生み出すのか、そしてどれだけを目標に増やすのか、そこがまさにポイントだ。2010年末の予算編成を見て判断してほしいと菅首相は言っているから、来年度予算で思い切った政策を打つということなのだろうか
しかしちょっと待ってほしい。来年度予算の編成はすでに始まっている。概算要求の段階では96兆円。去年の史上最大の予算をさらに上回る。ここに菅総理の意向は反映されていないと菅さんは言っているのだろうか。そうだとしたらおかしな話である。本来、概算要求を控えて思い切った政治主導をしようと思えば、概算要求の中に各省の大臣はもちろん、総理の意向だって反映されなければなるまい。もしそれができていなくて、これから年末の予算編成までにやるのだとしたら、それはあまりにも「泥縄」というものではないだろうか。
“小沢総理”の不安
一方の小沢さんは、「1割削減」などという一律のシーリングは自民党時代の官僚的手法そのものであると批判する。「政治家が責任をもってこの予算は不要である、あの予算は増やすように」という判断をすれば、予算の組み替えによってマニフェストを実行することができるというのである。この主張は2009年、総選挙のときに民主党が主張してきたことそのままだ。
もしこの小沢さんの考え方が現実的ではないとするなら、どうやって財源を生み出すのかということについて、菅首相は説明しなければなるまい。しかし、消費税で参院選を失ったというトラウマから増税問題は封印したままだ(その代わりというか、雇用を増やして税金を払ってもらうなどと言い出した)。
もちろん“小沢総理”に不安がないわけではない。予算の組み替えはともかくとして、普天間基地移転問題は「日米合意は尊重する」と言いながら、考え方としては鳩山前総理の「最低でも県外」に近いように思える。日中韓の3国関係は非常に重要だと主張し、政治体制の違いはあっても率直意見を交換できればその先には「東アジア共同体」が見えてくるとも主張する。どうもこの辺りは国内政策とは違って、あまり現実感がないように見える。
中国海軍が着々と戦力を強化し、東アジアのバランスが変化しつつある中で、いったい日本はどのように自国の安全を守ろうとするのか。そこがどうもよく見えない(もっとも菅首相も、日米同盟が基軸であるということは主張するものの、普天間問題については時間稼ぎをしているようにしか見えない)。
菅さんが勝っても、小沢さんが勝っても
それぞれの意見を聞いている限り、総合的には小沢さんのほうがまっとうのように思える。しかし、小沢総理になれば内閣支持率はかなり厳しい数字になることも予想される。政治とカネの問題も国会で追及されるだろうし(もっとも野党が新しい材料を持っているわけではないから、迫力のある追及はできないだろうが)、不透明な経済状況に迅速に対処するのが難しくなる可能性もある
本来、菅首相に実力があれば問題は少ないのだが、どうも菅さんは周囲を蹴落として自分が浮かび上がるタイプのように見える。それは小沢さんとの論争でもたびたび顔を出す。しかし一国の首相ともなれば、相手を批判することばかりに長けていても仕方がない。菅さんのビジョンとはいったい何か、そこにどうやって至るのか。それを国民に説明することが急務なのである。
菅さんが勝っても、小沢さんが勝っても、日本の政治は安定しなければ……と知日派の米国人が新聞のインタビューに答えていた。確かにその通りだと思う。しかし有権者にとっては他に何のオプションもない。政治が変わることを期待した有権者はあと何カ月辛抱できるのだろうか
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