http://www.asyura2.com/10/senkyo94/msg/178.html
Tweet |
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20100830/243645/
SAFETY JAPAN
2010年 8月31日
「自民党政治」に逆戻り。菅政権の「概算要求基準」で復活した官主導の「シーリング方式」。「一律1割削減」とは「9割の既得権の容認」にほかならない!
■政策経費を一律1割削減する「概算要求基準」
本日(2010年8月31日)までに主要省庁の来年度(2011年度)予算の概算要求が出そろう。
各省庁は、政府が先月(7月)に閣議決定した「概算要求基準」に基づいて財務省に概算要求を行う。
政府の概算要求基準のポイントは2つだ。
ひとつは、政策経費を一律1割削減するということ。
年間1兆30000億円程度の社会保障費の自然増は原則容認し、地方交付税も前年度並みとする。
その代わり、公共事業費や文教・科学振興費、防衛費など約23兆円の政策経費を一律1割カットする。
もうひとつのポイントは、「1兆円を相当程度超える額」の特別枠の設定だ。
医療・介護や環境など成長分野に重点配分するために特別枠を設定し、そこで予算にメリハリをつけようというのだ。
■「歳出ありき」の硬直的発想が間違っている
一見、政治主導の予算編成に思えるかもしれないが、現実の「(政治の)自由度」はほとんどない。
なぜなら、政府は既に国債の元利払い費を除く歳出額を今年度(2010年度)予算と同じ「71兆円以下」に抑えることを閣議決定しているからだ。
とすれば、社会保障費の自然増(年間1兆3000億円程度)と特別枠1兆円超を合わせた2兆3000億円超を確保するためには政策経費23兆円程度を1割カットするしかない、というだけのことなのだ。
そもそも、71兆円という歳出枠を初めに決めてしまうこと自体に問題がある。
換言すれば、「まず歳出ありき」といった硬直的な発想が間違っている。
というのも、国の税収は景気動向次第で大きく変わり得るからだ。
■71兆円の歳出枠の決定は「官主導」の象徴だ!
政府は、的確な経済対策を行うことによって景気拡大を図り、それによって増えるであろう税収を見込んで歳出を行うことだってできるのだ。
「政治主導の予算編成」というなら、そういった「積極的」というか、「攻め」の発想があってもよいのではないか。
ところが、今回の71兆円という歳出枠の決定を見ると、まるで政府が現状の景気および税収を前提に歳出枠を決めているかのように思えるのだ。
それは先の謂いに倣えば、「消極的」というか、「守り」の予算編成といえる。そして、そこにはいかにも財務官僚らしい発想が垣間見える。
今回の予算編成もまた事業仕分けと同様に、「政治的パフォーマンス」であり、「名ばかりの政治主導」であるのか。
鳩山政権以来、本コラムで何度も指摘してきたように、民主党政権はこれまで「やる」といったことを十分に「やっていない」。
■政権公約の国家戦略局構想を放棄した菅首相
改めて、思い出してほしい。
歴史的な政権交代を実現した昨年(2009年)の総選挙(衆議院議員選挙)のことを。そして、その選挙で民主党が訴えたマニフェストの内容を。
民主党は当時、「国家戦略局」を立ち上げることによって、従来の財務省主導の予算編成から脱し、国家ビジョンに基づいた戦略的な予算編成をする、と主張していた。
ところが菅首相は、こともあろうに、財務省にとって「目の上のタンコブ」ともいえる国家戦略局構想をとりやめ、「一律1割カット」という自民党政権時代と同様の「シーリング方式」を採用したのだ。
(そもそも、菅首相は鳩山内閣発足時の国家戦略担当大臣も務めていたではないか!)
そのことは、逆にいえば、「9割の既得権は認める」ということなのだ。
■1兆円超の特別枠は省庁の「ガス抜き」のためか
前原誠司・国土交通大臣は当初、この方針に強く反発した。
というのも、国交省は今年度(2010年度)予算で既に民主党が先のマニフェストで掲げた予算削減目標(2013年度までに総額1.3兆円の公共事業費の削減)を達成しているからだ。
なのに、なぜ来年度もさらに予算を削減しなければならないのか――。
というのが、国交省サイドの偽らざる思いだろう。
前原大臣はそうした同省の憤りを代弁したのであり、私も極めて真っ当な主張だと思う。
もちろん、「一律削減」で各省庁から不満が出るのは、政府のほうでも織り込み済みだ。
だからこそ、先手を打つ形で「1兆円超の特別枠」を作り、省庁の「ガス抜き」を図ったのだ。
だが、これもよくよく考えてみると、自民党政権時代の予算編成のやり方そのものなのだ。
■たとえ「公開」でも、最終決定権は首相の手に
自民党政権時代の予算編成は概ね次のように行われた。
まず、財務省(旧大蔵省)がシーリングで全体の「枠」を絞った上で、各省庁に「内示」を提示する。その上で「復活予算」を巡って大物政治家や「族議員」らが暗躍し、内示以降に廃止・縮減された予算を復活させる――。
そして、それこそが政治家・官僚双方の「力」の源泉になっていたのだ。
なるほど、菅内閣は、そうした自民党政権時代の予算編成との差別化を図るために、「政策コンテスト」を実施して公開の場で事業を選ぶ、としている。
しかし、たとえ「公開」で行ったとしても、最終決定権を握るのは首相なのだから、実質的には同じことなのだ。
しかも、このままいけば、自民党政権以上の危うさをはらんでいる。
■小沢グループ排除なら偏った予算編成の可能性
自民党政権時代には派閥の領袖が復活予算の分捕り合戦を行うことで、ある程度バランスのとれた予算編成が行われていた。
これに対して、いまの民主党政権は小沢グループを中枢から排除しているために、偏った予算編成になる可能性が高いのだ。
(もっとも、9月の民主党代表選の結果次第で状況が変化する可能性もある)
今回の予算編成は、民主党政権が初めて「ゼロ」から作り上げることのできる予算だ。
なのに、これまでの経緯を見る限り、政権交代の原動力となった昨年(2009年)のマニフェストとは方向を180度たがえた、財務省主導の予算編成になってしまうのがほぼ確実なのだ。
菅内閣は、国民が政権交代に託した期待を完全に裏切った。
■JALパイロットは「平均年収3割減」の方向
ところで、経営再建中の日本航空(JAL)は、パイロットの平均年収を30%引き下げて1200万円とし、客室乗務員の平均年収も25%引き下げて420万円とする提案を労働組合に示した。
組合も会社再建のために会社側の減給提案を受け入れる方針だという。
かつては「高給取り」「花形職業」の代名詞ともいえたJALのパイロットや客室乗務員すらも、会社再建のためには、これほどの“痛み”を受け入れるのだ。
ならば、そのJALに傷みを強いる政府はどうなのか。
財務省はかねて国家財政が破綻状態に近づいていると主張している。その意味では、国自体もJALと同じく「破綻寸前」の状態にあるといえるのではないか。
とすれば、政府もJALと同様の抜本的な改革を行って国を立て直す必要がある。
■JAL社員以上の大幅減給の受け入れは当然だ!
JALでいうところの社員は、国でいえば公務員に当たる。
JALの社員が会社再建のために大幅な減給を受け入れるのであれば、彼らに傷みを強いる公務員も国家再建のために同様の減給を受け入れるべきではないか。
なるほど、JALには会社再建のために多額の公的資金が投入されているのだから、その社員が大幅な減給を受け入れるのは当たり前、とする意見もあろう。
しかし、ならば、究極の公的資金(税金)の投入先は政府そのものではないか。であれば、その職員(公務員)がJAL社員以上の減給を受け入れるのも当然、ということになる。
したがって、菅内閣が財政再建を目指すのなら、昨夏の総選挙と今年の参院選のマニフェストで明記したように、まずは「国家公務員の総人件費2割削減」に真剣に取り組むべきではないか。
そもそも、公務員人件費の大幅削減などという困難な改革は、予算編成のようなときにしか行えない。だからこそ、そこに政治主導が求められているのだ。
菅内閣はそうした「真の政治主導」をなぜ端(はな)から放棄するのか。
■「役人天国は許さない」といっていたが……
実は、私にはいますごく嫌な予感がしている。
その昔、共産主義革命が起きてロシアなどに共産主義政権ができたとき、その国の民衆は「これで自分たちは貧困や抑圧から解放される」と思っていた。
ところが、現実に起きたことといえば、新たな特権階級の誕生・固定化と国内の貧富の差の拡大だった。結局、権力者が入れ替わっただけで、「役人天国」はますますひどくなったのだ。
ヘタをすれば、これと同様のことがいまの民主党政権下でも起き得るのではないか。
「格差是正」を唱えて政権を奪取した民主党は、野党時代には散々「役人天国は許さない」といった趣旨の主張を展開していた。
にもかかわらず、権力を握るやいなや、このテイタラクである。
日本がかつての共産主義国と同じ道を歩まないように、我々は民主党政権の行く末をこれまで以上に注意深く見つめていく必要があるだろう。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK94掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。