03. 2010年9月04日 17:26:56: IO0LMWXqgE エイズ事件の真相を理解するのは、まだ「一般人」には無理かもしれません。 この件を万人が理解し受容することが可能なように解説することには、私も困難を感じてきました。興味を抱かれた方は、安部医師弁護団、弘中 惇一郎氏の著作をお読みになるのがいいかもしれません。 安部英医師「薬害エイズ」事件の真実 武藤 春光 (著), 弘中 惇一郎 (著) 価格:¥ 2,100 http://www.amazon.co.jp/dp/4877983864 以下はこの本の書評です。 http://medg.jp/mt/2008/12/-vol-187.html 臨時 vol 187 「「定説」と「新説」」医療ガバナンス学会 (2008年12月 4日 (一部紹介) この本の論点の一部を簡単に紹介すると、 ・この裁判は、実は1件の具体的な事例について争われたもので、薬害エイズ事 件全体についてではない。 ・検察官は、業務上過失致死罪で安部氏を告訴したが、実際に「誤って死に至ら せた」のは実際の治療を担当した医師であり、安部氏は関わってない。 ・検察官は業務上過失致死罪で彼を告訴した一方、「製薬会社から金をもらった」 だのという関係の無いことを指摘した。仮にそのことが事件に関係あるのであれ ば業務上過失致死ではなく殺人罪で起訴しなければならない。また、製薬会社か らは彼個人としては金を貰っていないし、また貰った金は私的に利用していない。 ・検察は「彼は血友病の第一人者であり、他の医師を超える知識があったので、 注意する義務はほかの誰より重かった」と主張したが、事実はそうではなく、他 の医師と変わらなかった。なぜなら当時はエイズを引き起こすウィルスやその性 質について、ウィルス学の専門家ですら分かっていなかった。 ・「エイズウィルス」(当時はHIVが発見されていなかった)の研究の第一人者 に、帝京大の患者の血液サンプルを送って抗体検査をしてもらった。それは彼の 慎重さなどから行ったことであり、また「抗体陽性」の意味も現在と異なり不明 であった(例えば風疹の場合、もし私が「抗体陽性」であれば、一般的には「小 さいころに受けた予防接種(親に感謝ですね)などで抗体が既に出来上がってお り、私は風疹に感染しない」を意味し、「現在私は風疹に罹患している」という 意味ではない)。当時の米国医学界でも、抗体陽性はエイズから防禦されている と解釈できるという説も有力であった。しかし、このことをいわば「後知恵」に よって、「彼は抗体陽性の事実を無視した」とマスメディア・ジャーナリストは 彼を糾弾した。 ・血液製剤の前はクリオ製剤を用いていた。クリオ製剤は血液製剤と比べ有効成 分の「薄い」ものであり、また有効成分以外の生体由来成分も入っていたので副 作用が大きかった。またクリオ製剤は医療機関において点滴で患者に投与しなけ ればならなかったが、血液製剤は患者自身が自己注射することで投与でき、患者 の安全性やQOLがクリオ製剤と比べて高まった。 ・また、クリオ製剤に比べて血液製剤は優れている点が多かったので、当時の製 薬会社の製造ラインはほぼすべて血液製剤に切り替わっており、クリオ製剤の入 手はきわめて難しかった。 ・以上の2点から、「血液製剤に危険性がある可能性があったのだから、クリオ 製剤を用いた治療に戻るべきだ」という検察の指摘は的外れである。 ・また、治療方法を戻した際、患者の安全性や治療効果、QOLは大幅に低下する。 血液製剤のベネフィットとリスクを天秤にかけた場合、当時の最新の医学知識を もってもベネフィットのほうが大きかったし、諸外国の各学会もそう主張してい た。 ・仮にクリオ製剤を用いた治療に戻り、それでアナフィラキシーショックが患者 に起こり結果として死亡した場合、「(当時の)標準的治療から外れ危険な治療 を行った」という理由で医師が逮捕されたかもしれない。また現に血液製剤から クリオ製剤に治療方法を戻した医師は存在しなかった。 ・加熱血液製剤はエイズ対策ではなく、B型肝炎対策で開発された。また、加熱 製剤固有の危険性(加熱による変性たんぱく質の危険性、薬効の大幅低下)も存 在した。 ・故に安部氏も安全性の見地から、「加熱製剤の治験を慎重に行うべき」と主張 したのだが、それを「加熱製剤の承認を遅らせるために治験を慎重に行えと言っ た」とマスメディアは報道した ・ミドリ十字が加熱製剤の開発が遅れていたので、他の会社と一括で申請させる ことで遅いミドリ十字に他社の足並みをそろえさせた、という主張があるが、ミ ドリ十字の開発は遅れていなかった ・また、一括で申請させることで治験や審査にかかる時間を大幅に短縮した。 ・厚生省の担当部署の課長(当時)であった郡司氏は危険性が潜んでいる可能性 があるとして、早い時期からエイズ研究班を作った。そのメンバーに安部氏は入っ ていて、その研究班において彼は、エイズ問題を楽観視する他のメンバーに対し て、慎重に安全を重視してこの問題を取り扱うべきと主張した。だが、マスメディ アなどは当該主張の一部分のみを切り取り、彼が「毒と思って投与している」と 言ったと「演出」した。 以上で挙げたのは本の内容のほんの一部ですが、これが事実であれば私が過去 に抱いていた安部氏に対するイメージは誤りということです。むしろ彼はこの問 題に対して患者の安全を考え慎重に取り組んでいる。しかしマスメディアやジャー ナリストのおかげで彼は「悪者」に仕立て上げられ、最終的には起訴されたこと になります。 (略) その4 ある政治家のパフォーマンス 薬害エイズ事件といえば、ある政治家の謝罪が有名です(本書では実名で載っ ています)。この本によると、彼は特別の調査室を設け、関係者に徹底的な調査 を命じました。しかしその作成させた調査報告書を見ずに、突然「こんなファイ ルが隠されていた」としていわゆる「郡司ファイル」を提示し、謝罪しました。 実際はこの「郡司ファイル」は隠蔽されていたのではなく倉庫に保管されて いたメモファイルでした。要するに事実を曲げた単なるパフォーマンスな訳です。 彼のパフォーマンスのおかげで、事件の本質が見えなくなり、また安部氏などへ の個人攻撃へ発展した、と書いてあります。もしこれが事実ならば、この政治家 のパフォーマンスは問題だと思われます。 |