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マスコミは日本をどうする気か -日本を救えるのは誰だ(二見伸明)
2010年9月 1日 10:51
http://www.the-journal.jp/contents/futami/2010/09/post_25.html
古い政治を否定し、新しい日本を目指すラジカルな「改革者・小沢」が、自己保全のために小沢との談合を模索した「権力志向主義者・菅」の思惑を一蹴し、俄然、政治が面白くなってきた。17年前、「普通の国」(日本改造計画)をひっさげ、長期にわたる与野党談合政治を叩き壊した小沢一郎が「落日の日本」を救うべく人生の全てを賭けて起ちあがったのである。未来を想像する能力・感性がなく、現実を直視し、理解することを嫌い、変化を恐れ、ぬるま湯に浸かることを願っていた政治家、官僚、マスコミは肝を潰して跳び上がった。朝日新聞の27 日の紙面は、まるで半狂乱である。社説、編集委員・星浩の一面の署名入りの記事、コラム「天声人語」を始め、紙面の大半を「小沢叩き」一色に染める異常さである。狙いは、「小沢潰し」の世論を煽り、週末に選挙区に帰る議員にプレッシャーをかけることである。菅陣営やマスコミは「小沢の方が適任だと思っていても、地元後援者から『なぜ小沢か』とつるし上げられれば、ほとんどが寝返るはずだ」と目論んでいる。いうなれば、菅陣営とマスコミ合作の謀略である。そんな「悪知恵」と実行力のある議員は全共闘、新左翼出身の仙谷官房長官だけだろう。菅派と目されている議員は「菅が総理の器でないことは百も承知しているが、それ以上に、お世辞の通用しない、原理原則を大切にする、無口な小沢が怖い」と言う。菅陣営は「脱小沢」「憎小沢」だけで群れている不思議な集団である。
今回の党首選は、従来型の、総理の座を争う単なる権力闘争ではない。日本の将来、国民生活の行く末を占う路線闘争、日本の政治、経済、社会の底流を流れる二大潮流の争いである。すなわち、「生活重視派」vs「財政再建=増税派(新自由主義)」、「政治主導」vs「政治主導の仮面をかぶった官僚支配」、「日米対等外交」vs「対米従属外交」の闘いである。
昨年秋、小沢一郎が国会議員160余人を引き連れて訪中し、胡錦涛主席と会談した。当時、ワシントン特派員としてホワイトハウス、国務省を取材していた友人は「日本の総理の発言などにはほとんど関心を示さないオバマ政権が、小沢の実力にショックと大きなプレッシャーを受けた」と語っていた。今年1月、アメリカで行われた「世界を動かす政治家」の世論調査で「1位 胡錦涛、2位 オバマ大統領、3位 (与党の幹事長にすぎない)小沢一郎」だった。超大国アメリカと堂々と渡り合えるのは、残念ながら、日本では、いまのところ、小沢一郎だけだ。
「政治主導」は実現しなければならない大命題である。菅総理は薬害エイズで名を上げたアンチ官僚派だった。しかし、政権入りしてからは急速に色あせてきた。とくに、総理になってからがひどい。「普天間」「消費税増税」は官僚の振り付けどおりに踊っただけである。
小沢の「政治主導」は「筋金入り」である。なにしろ、1969年の初当選以来、41年間、叫び続けている悲願である。「党首討論」、「官僚の答弁禁止」、「副大臣、政務官」はそのための布石だ。「公務員制度改革」「特別会計の改廃」「独立行政法人を、原則、民営化または廃止」「補助金制度の廃止し、地方に一括交付」など、小沢改革は「血の雨の降る大事業」である。小沢の剛腕とそれを支える民主党議員の高い志が不可欠である。
マスコミは「小沢が立候補すると、党が分裂する」と、党内外に不安感を煽った。それだけではない。「『政治とカネ』問題を残した小沢は総理にふさわしくない」「総理をコロコロ変えるのはよくない」と、「善良な市民」の洗脳に専念している。その効果が、1000人程度の小規模な世論調査の70%を超える「菅続投支持」である。しかし、実体は、菅派の蓮紡行政刷新相がいみじくも述べているように、「菅さんを支持しているのではなく、総理をコロコロ変えるのはよくない」からである。読売オンラインなどネットの世界では、小沢支持は80%前後で、小沢支持が圧倒的である。「世論調査」の数字だけが「民意」とするのは、一種の詐欺行為である。
民主党がマニフェストの実現を目指して戦い、敗れたのであれば、その責任を菅総理、仙谷官房長官、枝野幹事長に押し付けるのは酷である。だが、菅総理はマニフェストを勝手に変え、あろうことか、消費税の増税を「公約」した。そのため、多くの有為な人材が犬死させられた。この責任は誰が取るのか。本来であれば、総大将と筆頭家老、次席家老は切腹して、謝罪すべきなのだ。百歩譲っても、仙谷、枝野の首を叩き切って反省の姿勢を示すべきだった。民間会社であれば、社長は大赤字の責任を取らされて、即刻解任である。
日本の政治の最も悪い点は「誰も責任を取ろうとせず、曖昧にする」ことだ。菅総理は、かつて、自身のホームページに「戦争責任を戦後の政府があいまいにしてきた。何がまちがいであったか総括せず、けじめをつけていないことが日本人の後ろめたさ、自信のなさにつながっている」と書いた。この認識は卓見であり、私も賛成である。しかし、「綸言汗のごとし」である。菅総理は参院選の敗北の責任を、自ら示すことによって、その名を後世に残すことが出来るのだ。
鳩山前総理が党の分裂を心配して調整に乗り出した労は評価したい。小沢の本心は、30日夕、議員会館の自室で語った「いまの日本はこのままでは本当に沈んでいく。みんなで挙党一致で頑張らなければいけない」「自民党のように政権を維持していくためには、争いは争いとして、ちゃんと終わったら党のためにお互い助け合っていく意識を議員も持たなければダメ」(朝日31日付)なのである。当初から「静かにしてもらいたい」と「小沢排除」を鮮明にし、いたずらに党内に溝を作ってきた菅総理とは人間の格と幅、奥行き、器が違い過ぎる。
いわゆる「政治とカネ」について触れておきたい。「起訴」は真っ黒、「起訴猶予」は黒に近いグレー、「嫌疑不十分で不起訴」は限りなくシロの近いグレー、「不起訴」はシロである。「政治とカネ」の中核である「5000万円の裏ガネ」は根も葉もないでっち上げであることが、検察の捜査の結果、明らかになった。「完全無罪」ではなく「完全冤罪」である。この段階で小沢に「政治とカネ」の問題はなくなった。残るのは、第5検察審査会で審査している「期ずれ」だけで、これも検察は執拗な捜査にもかかわらず、起訴出来なかったものだ。国会議員もマスコミも、内心では小沢が「政治とカネ」に関して「シロまたは限りなくシロに近いグレー」であることは知っている。しかし、小沢を潰すために、国民を洗脳する使い勝手のいい道具として、政局に利用しているのである。
小沢の国家像は「日本改造計画」で明確である。しかし、菅総理の国家像はよくわからない。総理との懇談会に出席した一年生議員たちも、「結局、何がしたいのかわからなかった」「マニフェストを実行していく、無駄遣いをなくしていくという強いメッセージが欲しかった」「個別政策の話ばかりだった」と不満を漏らしていた(朝日26日付)。
政党の命は政策=マニフェストである。政治家には二つのタイプがある。マニフェストを国民との契約と考え、既成勢力が作ってきた「現実」を変えようと死にもの狂いで努力する「現実変革、契約派」と「現実」に擦り寄り、妥協したほうが楽だと考える「現実追従、口約束派」である。今回の党首選は「現実変革派」vs「現実追従派=第二自民党化」との戦いでもある。
党首選の底流に、民主党を超えて、日本が抱えている大きな対立軸があることから目をそらし、小沢潰しだけに躍起になっているマスコミに、「日本の知性を代表する」朝日新聞の社説の見出し「あいた口がふさがらない」を献上したい。
2008年、朝日新聞は、自社を含む新聞の戦争責任を総括する「新聞と戦争」を刊行した。それによれば、満州事変の2年前、1929年10月1 日、朝日の社内会議で編集局長・高原操は「どこの国においても言論機関が軍務の当局者と一緒になりて軍備拡張に賛成した場合はかならず戦争を誘ひ、他国の軍備をまたさらにそれ以上に増大せしめるものである」と説いた。「その高原が(満州)事変で、筆を曲げた。(中略)戦後、新聞社の幹部らは、軍部に抵抗しきれなかった理由に、『従業員やその家族の生活』や『新聞社の存続』を挙げた。だが、新聞の戦争への影響力を思えば、通用しない言い訳だ。ペンを取るか生活を取るかは、ジャーナリズムとしての覚悟の問題に帰する」と書いている。日本を滅ぼしたのは軍部だけではない。軍部に迎合し、お先棒を担いだ朝日、読売、毎日などジャーナリズムもA 級戦犯だ。彼らは一片の反省心も羞恥心もない不思議な人種である。
昨年3月3日、東京地検と朝日新聞が組んで、でっち上げた大久保公設秘書逮捕劇を皮切りに、マスコミ各社が、検察の意図的なリークが「小沢潰し」であることを承知の上で、たれ流し続け、政治不信、政治の停滞を招いたことをどう総括するのか。「『従業員やその家族の生活』や『新聞社の存続』のため」と総括するのだろうか。
私は小沢一郎の友人である。だから、マスコミが小沢を批判することに異をとなえているわけではない。マスコミが「挙国一致」で、小沢の当選阻止を画策していることに、マスコミを抱き込んで、あるいは、マスコミ自身が世論操作をする、新しい「『世論』ファシズム」の危険な匂いを感じているのである。
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