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小泉政権の悪法(1) 個人情報保護法、他 小泉政権を支持しない(桜井よしこ)
http://voicevoice.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-565b.html
櫻井よしこブログより
http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/2004/07/08/post_132/
小泉政権を支持しない
2004年07月08日
『週刊新潮』 2004年7月8日号
日本ルネッサンス 第123回
悪法を次々と可決・成立
しかし、少しずつ、おかしいと感ずるようになった。まさか、こんな法律を“改革派”を自称する小泉政権が通すはずはないと思うような悪法が、ひとつまたひとつと、可決・成立していった。その第1が、個人情報保護法である。
この法律の問題点については、このコラムでも度々取りあげた。問題点は大きくわけて2点に絞られる。
第1は、同法が個人情報保護法という美名をまとったメディア規制になっていたこと、第2は政府が民間を監視する強力な権限や罰則が設けられたことだ。
警察当局から犯罪歴に関する情報が流出したり、住基ネットが国民総背番号制に発展しかねない状況の下では、本来、政府が持つ個人情報をいかに守っていくか、つまり、官に対する規制こそが重点的に強化されなければならなかったはずだ。
だが現実の法案は、個人情報を扱う全ての民間、メディア、大学、信用機関、通信会社、フリーの記者、作家にまで、一律に法の網をかける内容となっていた。民間に、本人情報の開示、訂正など幅広い義務を課す一方で、政府が改善命令、中止命令を行う構図である。罰則を設け、政府に強力な規制権限を与えた法案は、中国並みだと思われた。
そこで報道機関、ジャーナリスト、学者、アーティストら広範な人々が集まって強力な反対運動を展開し、法案は一部修正された。しかし、“権力者”たちが最も嫌う出版社、つまり週刊誌などに対する規制は残されたまま法案は成立した。反対に、政府保有の個人情報は事実上官僚たちが如何ようにも使うことの出来る、非常に甘い内容がそのまま残って、法律は施行されたのだ。
このとき私は、こんな非民主的な悪法は小泉政権には相応しくない、問題点を理解してもらえば、首相が受け入れるはずがないと考えた。だからこそ、数多くの記事を書き、討論会、集会を開いた。他のジャーナリストや学者、作家らと一緒に世の中に発信したメッセージを小泉首相も読むだろうと期待したのだ。だが、この悪法は成立した。このとき私は、小泉首相は実態に気づいていないのであり、小賢しい官僚たちこそが悪いのだと考えた。
小泉政権を支持出来ない
次におかしいと思ったのは国立大学法人化問題である。教育は他の産業とは明確に異なる。人を育てる仕事や日本を科学技術立国たらしめる研究に、無闇に効率化や生産性、5年や6年で目に見える成果を期待すること自体間違いである。にもかかわらず、国立大学に何の配慮もなく、法人化は、他の政府機関を独立行政法人にするのと全く同列に行われた。学問や研究への尊敬の念も教育の重要性への配慮もみじんも感じられなかった。
政府が決めた法人化は、学問や教育の発展のためではなく、官僚の特権の永続強化と彼らの暮らしの担保のためである。官僚の天下りポストが大幅にふえ、待遇も法律によって保証される結果となった。その一方で、本来の大学の教育や研究は土台から揺らぎかねないことも明らかになった。日本の最重要の資源である人材が育たなくなってしまう恐れがある。人間育成にはやり直しがきかず、だからこそ教育は失敗を許されない。私は今度こそ、小泉首相には問題点を理解してほしいと考え、幾人かの大学関係者の資料も添えて、首相秘書官に渡した。2〜3日して戻ってきた答えは「小泉は法人化はよいことだと考えています」というごく簡単なものだった。
その余りの空疎な回答を前にして考えこんでいると、ベテランの政治記者が言った。「首相に資料を届けても無駄ですよ。あの人は、決して読みませんから」と。
小泉首相は本当に勉強をしない人なのだ。首相になる前に郵政問題で対談したことがある。そのときも、民営化についてある程度形になることは発言するのだが、もう一歩踏み込んで話そうとすると、続かないのだ。詰まらない会話とはまさに小泉氏のそれである。国立大学法人化も、こうして法律となり、この4月に施行された。
極めつきは道路関係4公団の民営化である。民営化を言いだした本人がどれだけ無責任に、改革を潰したことか、拙著『権力の道化』(新潮社)にわかり易く書いた。詳しくはそちらを読んで頂きたいが、彼はとどのつまり、ジョーカーなのだ。使い様によっては切り札になるが、持ち続ければ身を滅ぼしてしまう。
こうして小泉政権の3年余を振り返ると、参院選挙では、小泉政権を支持することはとても難しい。小泉氏に替わる人材は、自民党にも民主党にも数多くいる。私たちはせめて、自分の言葉に責任をもつ人、そしてその地位にふさわしく常に謙虚に学ぶ人を選びたいものだ。
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