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「週刊ポスト」9/3日号
平成22年8月23日(月)発売
小学館(通知)
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〈9・14 決戦の裏〉 民意なき「首相選び」の大迷走
憤る小沢、しがみつく管
権力への妄執──そこまでやるか菅直人
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今回の民主党代表選は、自民党末期の政権たらい回しとは意味が違う。菅直人・首相は霞が関と手を組み、消費税増税など政策を大きく変えた。小沢一郎氏はそれを厳しく批判している。ならば、短期間の首相交代をためらわず、政策の是非を問い直す論戦を両氏が行なうことこそ民意に添うはずだ。しかし、「菅ではダメ」といった張本人は態度を示さず、守る側は政権延命しか頭にない──。
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失敗に終わった「研修会乱入作戦」
歴史上、夏の軽井沢はしばしば政界激動の舞台になってきた。
82年の自民党総裁選の前、「北海のヒグマ」と呼ばれた福田派の中川一郎氏が軽井沢の田中角栄氏の別荘を訪ね、「池の鯉は跳ねちゃだめか」と出馬を相談した。
その時の角栄氏の有名な言葉が残っている。
「跳ねてもいいが、元の池に戻ればともかく、カンカン照りの砂利道に落ちたら日干しになってしまうぞ」
福田派には安倍晋太郎氏という総裁候補がいたため、出馬したら派閥に戻れなくなると忠告したのである。
中川氏は総裁選に出馬するが、4位に終わり、失意のうちに自殺した──。
そしてこの夏、久しぶりにその軽井沢から大きな政治のうねりが始まった。
去る8月19日、軽井沢プリンスホテルで鳩山・小沢両グループ合同の『鳩山友愛セミナー』が開催され、130人以上の議員が参加した。
去就が注目されている小沢一郎・前幹事長が出席。小沢側近の山岡賢次・副代表ら小沢グループばかりか、鳩山グループからも、鳩山前首相側近の松野頼久・前官房副長官が、「小沢さんが出馬するなら推薦人に加えていただきたい」と発言するなど小沢氏の代表選出馬を求める声が高まっており、本人の登場で研修会はさながら「小沢決起集会」の様相を呈した。
それは菅首相が最も恐れていた事態だった。
実は、菅首相は小鳩連合が敵に回ることを防ぐために、研修会に自ら乗り込むことを考えていた。 菅首相は8月10日から4日間、伸子夫人とともに、わざわざセミナー会場と同じホテルを予約して静養したまたま近くにいるから≠ニいう口実で鳩山由紀夫・前首相夫妻に食事会を申し込んだ。
「総理は食事会の席で、鳩山さんからか菅さんも来ない?≠ニセミナーに誘ってもらうつもりだった。総理が参加すれば、さすがに菅降ろしの決起集会というムードにはなりにくくなる、との狙いがあった」(菅側近)
ところが、食事会は鳩山氏側から、「幸夫人の母親が体調を崩したので都合がつかない」という理由で断わられる。実際には、「鳩山さんはベンツを自分で運転してドライブを楽しんでいた」(警備関係者)というから、菅首相は門前払いされたと見るべきだろう。
時間をもてあました菅首相はホテルでネットでの将棋や囲碁の対局に興じていたが、それに伸子夫人が怒った。
「そんなことやっている場合じゃないでしょ!」
──同行筋から伝わった話だが、政治センスは菅首相より上といわれる伸子夫人は、夫が「砂利道の日干し」になりかねないことを察知していたのかもしれない。
8月15日に東京に戻った菅首相は、仙谷由人・官房長官らと対抗策を練る。そこで決まったのが、8月19日の小鳩研修会にぶつけて、菅首相が首相官邸に統合幕僚長や陸、海、空の幕僚長らを呼び、北朝鮮情勢や中国の軍備強化について説明を聞く初めての3軍国防会議≠開くという日程だった。補佐官の一人はこううそぶいている。
「党内抗争をやっている場合じゃない。こちらは国家・国民のことを考える」若い保守層などを中心に、小沢氏は「中国寄りで総理にふさわしくない」という評価があることを意識した作戦のようだ。が、これまで国防のことなど考えたこともない市民派の菅首相が、にわかタカ派をアピールしようというあたりに、むしろ追い詰められた焦りを感じさせた。
(写真あり) 鳩山研修会への小沢氏参加の意味は単に派閥の合流ではない
(写真あり) 首相は1年生議員へラブレターを送るなど必死
「小沢代表−菅総理」案も
終戦記念日、都内の高級ホテルでは、菅首相支持派によるもう一つの「裏選対」会議が開かれた。 仙谷官房長官を中心に、岡田克也・外相、前原誠司・国交相、野田佳彦・財務相、枝野幸男・幹事長、玄葉光一郎・政調会長と、鉢呂吉雄・元国対委員長が加わった。政府・民主党首脳会議さながらのメンバーだが、いずれも小沢総理掛誕生すれば政権から追われる顔ぶれである。
本誌は前号で、小沢氏が出馬すれば代表選の結果はすでに明らかで、恐らく低支持率でスタートする「小沢総理」は、国民の信を問うために解散・総選挙を打つと報じた。名付けて「俺でいいのか解散」。
会議では、本誌報道を受けて、前原氏らが新人議員への切り崩しを図る作戦を主張したという。
「1年生議員の多くは解散・総選挙を非常に恐れている。代表を代えたら信を問わなければならなくなることをよくわからせるのが重要だ」
菅支持派は早速、若手の危機感を煽りはじめた。
蓮紡・行政刷新相が野田グループ研修会で、「仮に首相が代わると総選挙が筋だ。そうなった場合には事業仕分けに大きな影響が出る」と打ち上げ、官邸は衆参の1年生議昇約150人に、「十分お話しする機会がもてなかったと反省しております。一緒にやっていきましょう」という、菅首相からの「ラブレター」を撒き始めた。
小沢氏が開催する『小沢一郎政治塾』(8月22〜25日)と重複する日程で、菅首相と新人議員との意見交換会をセットするという念の入れようだった。
「たとえ小沢側近でも、1年生議員が総理直々の招きを簡単に断われるものじゃない。菅総理は意見交換会で、代表に再選されたら2年間は解散しないと約束し、小沢を取るか菅を取るかの踏み絵で何人でもいいから転ばせるつもりだ」(補佐官の一人)
大臣手形も乱発した。菅グループ幹部が語る。
「鉢呂は入閣を条件に代表選の選対本部事務局長になってもらうことが固まった。岡田は幹事長候補にあがっており、その場合、閣僚で一番に菅総理の続投支持を表明した前原が念願の外相に横滑り。そして仙谷が最も力を入れているのが原口一博・総務相の取り込み。
代表選に出ないなら幹事長の芽もあると口説いている。
原口が菅支持を表明すれば小沢陣営はいくら数が多くてもタマがなくなる」
もともと菅陣営は一枚岩ではない。菅首相を昔から支えてきた菅グループの古参幹部はさすがに小沢氏が出馬すれば形勢不利だとわかっているから、むしろ小沢氏との妥協を模索すべきだと主張している。
「総理の本音はどこかのタイミングで小沢さんと手を握りたい。が、小沢さんの出方が読めないうちに挙党体制といえば、反小沢の前原、野田グループからも見離されて孤立してしまう。だから今は仙谷の主戦論に乗るしかないが、挙党体制でなければ国会を乗り切れないのは誰でもわかる。
それでも小沢さんが代表選に出て来るというなら、党分裂をさけるために、小沢代表──菅総理という代表・総理分離論で続投を頼み込むことも総理の腹の中にはある」
自民党政権時代に何度も浮上したものの実現しなかった「総・総分離論」の焼き直しだが、政権の座にしがみつくためには何でもするという菅氏の必死さがよくわかる。
(写真あり) 菅支持派はいまや少数(岡田氏と前原氏)
自民党の「毒まんじゅう」
小沢さんが攻めてくる≠ニいう妄執に夜も寝られない菅首相は、自民党との連携にも手を打った。「消費税増税」や「社会保障制度」で自民党に超党派協議を呼び掛けただけではなく、小鳩研修会当日に開いた官邸での 3軍国防会議≠焉A実は、臨時国会で自民党の石破茂・政調会長が、「自衛隊の最高指揮官として、今まで何回制服組から意見を聞いたのか」と問題掟起したことに応える意味を込めていた。
官邸スタッフの一人が明かす。
「制服組との会議を提案したのは寺田学・首相補佐官。小沢陣営が菅降ろしに動くなら、こちらは自民党を政策協議のテーブルにつかせて大連立≠基盤にする用意がある」衆参ねじれの中、菅首相が自民党との連携に期待を持ち始めたのは参院選後の8月の臨時国会を乗り切ってからだ。側近にしみじみとこう語っている。
「臨時国会では短い会期で2本の法案を成立させた。予算委員会は一度も止まらなかったじゃないか。野党は出すといっていた問責決議さえ足並みがそろわなかった。自民党から共産党まで一本化するのは簡単じゃないんだよ。
代表選さえ乗り切れば、国会はこれからも政策ごとの部分連合でやっていける手ごたえはある」
だが、権力者の強味も弱味もよく知る自民党はしたたかだ。谷垣禎一・総裁は政策協議に応じる前提として、「消費税を上げても子ども手当や高校無償化、高速無料化などの財源にされる。民主党がマニフェストを撤回しなければ協議には応じられない」と条件を突き付けている。もちろん、「09年総選挙のマニフェストに回帰せよ」と訴える小沢氏との分断を狙った見え見えの誘い水≠セ。
ところが驚くべきことに、菅首相は、「私の内閣で財政再建の道筋をつけたい」と漏らし、その条件を呑む構えなのだという。
このままでは小渕内閣当時の金融国会の再現だ。
当時、衆参ねじれ国会で自民党は金融危機対策法案の成立をめざしたが、民主党代表だった菅氏は、自民党に「政権は潰さない」と約束して民主党の対案を丸呑みさせた。自由党党首だった小沢氏は、与野党談合を批判して野党共闘が崩壊した。そして、当時の宮沢喜一・歳相の下で大蔵政務次官を務めていたのが谷垣氏である。
管民主党は結局、崖っぷちだった自民党の延命に手を貸し、何も得るものはなかった。それをよく知る現在の谷垣自民党が同じ過ちをするわけがない。
金融国会当時、自民党側で与野党交渉にあたった渡辺喜美・みんなの党代表が明快に指摘する。
「自民党にとって菅内閣ほど敵として都合のいい政権はない。消費税は上げるというし、官僚べったりの体質も同じ。だから、自民党はいつでも参院の問責決議で菅政権を追い込めるのに、提出しないで菅続投に協力しているわけです。それを菅首相は自民とは協力できる≠ニ勘違いしている。
しかし、自民党は本気で協力する気はない。菅総理に民主党のマニフ⊥ストを自らの手で骨抜きにさせてから、来年の通常国会では予算関連法案を人質にとって解散を迫る戦術ですよ。総選挙になれば、マニフェストの旗を失った民主党は戦えない」
その毒まんじゅうに気付かず食いついているのが現在の菅民主党の姿なのである。
「ユダでは政治を動かせない」
小沢氏は、管氏のそういう危うさを誰よりも知っているはずである。
しかし、本稿締め切り時点で、まだ代表選出馬を決断できずにいる。実はその裏には、意外にも「小沢支持派への憤り」が隠されている。
菅vs小沢という代表選の対立の構図の背後には、改革を標模したはずの民主党政権が、元の自民党政治へと逆戻りするのか、もう一度、「政治主導」という国の仕組みの大きな改革に取り組むかという国民にとって重要な政権選択が突きつけられている。いわば、昨年の総選挙のやり直しといってもいい。
例えば、消費税を社会保障財源に充てることを最初に唱えたのは、実は若き日の小沢氏だったが、同氏は民主党代表時代、本誌インタビューで、自民党の増税論との違いをこう語っていた。
「消費税を巡る議論の大きな間違いは、現在のシステムを全て前提にして議論していることだ。その前に、官僚から金と権限を取り上げることが先決なんだ」
(06年10月27日号)
小沢氏が代表時代にまとめた子ども手当や高速無料化などのマニフェストは、官僚からカネ(予算)と権限を取り上げ、自民党時代の予算を一から組みかえることで国のシステムを根底から改革するという原則に立っていた。
国民にとって代表選の本質が見えにくいのは、小沢嫌いの大新聞・テレビが、親小沢陣営と反小沢陣営の勢力争いという自民党の派閥抗争と同じ視点でしか報じていないからだ。
〈首相、再選後も脱小沢 代表選 幹事長に起用せぬ方針〉
という朝日の報道(8月17日付)はその典型だろう。
その裏にも菅官邸の仕掛けがある。
「仙谷官房長官以下、政権幹部はできるだけメディアと懇談して情報戦の主導権を握るよう努めている。権力闘争≠ニいうイメージが強まってくれれば、世論の批判は向こうにいく」(菅支持議員)
大マスコミはもともと「小沢政権」の敵にしかならない存在だから、それはそれで当然としても、小沢氏を悩ませているのは、足下の側近やチルドレンまでが、菅執行部やマスコミと同じレベルで代表選祭り≠ノ興じていることなのだという。
小沢支持派は数で勝てると見ると、一気にはしゃぎ出した。代表候補と見られている海江田万里氏や原口総務相らは出馬に意欲を見せながら、「小沢氏の指名」を待つだけで、政策の話など何もしない。
「政権交代を果たした民主党が最初にやるべき3つの改革は、政治改革、行政改革、そして地方分権だった。そこが進まない、あるいは後退しているから国民の不信を招いている。俺がやりたいのは革命的な改革なんだ。誰がトップになればそれができるか……」
──本誌は前号で、小沢氏が側近に語った肉声を報じた。その真意は、今の民主党で多数派を得て実権を握っても、結局、鳩山氏や菅氏同様に、改革を実現できずに終わるのではないかという失望ではないか。
小沢氏の懐刀と呼ばれる平野貞夫・元参院議員は、小沢グループの議員たちを「猛暑で呆けたのか」と厳しく批判する。
「菅内閣は党内手続きを経ないでマニフェストを修正し、消費税10%を掲げて国民の生活が第一という方針を変えた。それが民主党政権にとってどれほど重大な問題かを分かっていないから、彼らはいつまでも小沢に依存して指示を待っている。小沢グループは代表選に出てくれというけれども、小沢が政権をとってやろうとしている政治主導というのは、大変な抵抗と困難がある。それをどこまで認識して小沢に起てといっているのか見極める必要がある」
軽井沢セミナー当日の8月19日、読売新聞は1面で「小沢氏 出馬を検討」と大きく報じた。前日から、永田町に流れていた小沢出馬説を受けたものだが、これこそ小沢氏を最も出馬から遠ざける報道なのだ。
「この話をリークしているのは小沢側近の一人。小沢さんに起ってほしいための環境づくりのつもりだろうが、親の心、子知らず≠セ。
何を変えるための代表選なのかが全く報じられず、国民に権力争いばかりが印象づけられる今の情勢では、小沢さんは出馬できない」
(小沢氏を自民党時代からよく知る政界関係者)
小沢出馬騒動のさなか、小沢氏はこんな言葉を口にしたという。
「ユダになっても政治は動かせない」
つまり、政権の息の根を止めるだけでは自分の目指す政治は実現できないという意味だろう。
ただし、「小沢出馬説」が全くのデマでないことも確かだ。
「小沢さんの危機感は強い。仮に続投しても菅政権はもたないと見る一方、それまで放置すれば国も党もポロポロになると考え始めたようだ。本当に支持率0%からの政権運営≠ェ可能か、じっくり検討するだろう」
(前出の関係者)
ともかく、このまま「憤るばかりの小沢」と「しがみつく菅」の構図で代表選に突入しても、民主党も日本も改革できないことだけは確かだ。目に見える政治論議が何より求められる。p-38
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