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小沢一郎「代表選出馬」で経済政策はどうなるのか (長谷川 幸洋)
円高、株安、超低金利は市場からのイエローカード
民主党の小沢一郎前幹事長が党代表選への出馬を表明した。
小沢と菅直人首相のどちらが勝つのかは予断を許さないが、どちらが勝った場合でも、代表選後の政権は経済政策を見直す可能性が強くなってきた。
民主党内の小沢支持グループと菅直人首相支持グループの対立軸は「2009年総選挙マニフェスト(政権公約)を守るかどうか」になっている。小沢グループが「09年マニフェストへの回帰」を旗印に掲げる一方、菅内閣は「マニフェストの修正は当然」という立場である。
では、小沢が勝てば単純に09年マニフェストに戻るのか、といえば、そうとは限らない。
昨年の予算編成で公約の目玉だったガソリン税暫定税率廃止の先送りを決めたのは、小沢自身だった。もともと、小沢にとって政策は情勢次第でどうにでもなるものなのだ。
小沢が負けた場合でも、菅首相は小沢支持派の存在を無視できない。小沢が仙谷や枝野幸男幹事長の更迭を要求する可能性もある。そうなれば、内閣と党役員人事の一新に合わせて政策路線も当然、変わる。
一方、反小沢の急先鋒である仙谷由人官房長官もテレビ番組で「野党時代に考えたことを、一字一句修正もできないというのはあり得ない。現実の政治過程に入れば、そんなことはすぐ分かる」と述べ、09年マニフェストを修正する方針を明言している。
これまでは小沢派と反小沢派の対立軸がマニフェストを守るかどうかであったとしても、代表選でもそうなるかどうかは不透明だ。現実に次の政権がスタートすれば、現実的な選択肢が浮上する公算が高い。
なにより、ここは政策よりも政局である。
小沢の代表選出馬で「小沢が勝てば、いつ解散に踏み切るのか」が最大の焦点に浮上した。
民主党は自民党の政権たらい回しを強く批判してきた。鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎と政権が代われば、小沢が政権奪取後、直ちに解散に打って出てもおかしくない。
自民党はじめ野党は直ちに総選挙準備に入るだろうが、候補者が決まっていない、みんなの党などは苦しい対応を迫られる。
検察審査会の二度目の議決を控えた小沢はどんな議決が出るにせよ、解散総選挙によってダメージをリセットすることも可能になる。
小沢は以上のような解散総選挙のメリットを十分に視野に入れて、出馬を決断したはずである。総選挙となれば、もちろん政策は全面見直しである。
政策路線の見直しを迫られるのは、党内政局の流動化だけが理由ではない。日本経済が大きな転機にさしかかっているからだ。
円高と連日のように年初来安値を更新している株安、さらに長期金利の0.9%割れは、日本経済が単なる腰折れとか二番底といった言葉では語りきれない「未体験ゾーン」に突入しつつある可能性を示している。
円高が株安を招く展開はこれまでもあった。
輸出製造業が日本経済の屋台骨になっている以上、円高でトヨタやパナソニックが打撃を受ければ株安を招くのは自然な展開である。そこに長期金利の低下も加わった。
株安でリスクのある資産運用に慎重になった投資家が、より安全な国債に資金を振り向けた結果という説明がこれまでの通例である。だが、今回の長期金利低下には単なる資産運用ポートフォリオの組み替えにとどまらない深刻さが漂っている。
それは、日本から企業が逃げ出しているという現実である。
今回の円高を受けて、大手製造業からは一斉に「部品調達先を国内から海外に振り替える」とか「製造拠点の海外移転を加速する」といった声が上がった。日産が新型「マーチ」の生産をこれまでの追浜工場からタイ工場に切り替えると発表したのが象徴的だ。
マーチはタイだけでなくインド、中国、メキシコで生産し、成長著しい新興国を中心に世界160ヵ国で販売する世界戦略小型車になる。
親会社が海外からの調達を加速すれば、注文を受けていた子会社が日本に残っていたのでは生き残れない。子会社も海外に出て行くのが合理的な選択になる。いまや、企業にとって「ニッポン脱出」が基本的戦略になりつつあるのだ。
そうであれば、大手銀行から地方の信用金庫に至るまで民間金融機関が「有望な融資先がない」と悲鳴を上げるのも当然だ。資金を貸し出す先の企業自身が日本を逃げ出しつつあるのだから。
今回の長期金利低下は金融機関が本来の融資先を失って、やむを得ず国債投資に資金を振り向けた結果とみるべきだ。言い換えれば、日本経済はいよいよ本当に空洞化しつつある。
ニッポン脱出は、ネット通販の楽天やユニクロを展開するファーストリテイリングの社内英語化にも表れている。
楽天の三木谷浩史会長兼社長は英語化の理由を「技術者が日本語で仕事をしていたら半年くらい情報に遅れてしまう。英語化したら、スタンフォードやイェール、ロンドン大学といった海外の一流大学からも学生の応募があった」と会見で語っている。
つまり海外で事業を拡大し、世界水準で一流の人材を確保しようとすれば英語化が不可欠なのだ。これは当然である。
サッカー代表監督が決まらない日本の短所
日本の国内市場が少子高齢化で縮小する一方、グローバル企業が最初から「世界市場をどう制覇するか」という戦略を掲げて競争する中、国内市場だけを相手に商売していたら、有力な海外企業に買収されるのがオチであるからだ。
パナソニックが来春の新卒採用で海外採用を5割増やす一方、国内採用は4割減らし、全体で海外採用を8割にすると発表したのも同じ理由である。
根本にあるのは「日本だけを相手にしていたら、もはや生き残れない」という強烈な危機意識である。「社内英語化など、ばかな話」とか「理解出来ない」といった企業トップのコメントも報じられたが、ここで断言しよう。
そんな日本企業には、世界で通用する真に一流の人材は入社しない。
おおげさに言えば、人生の相場観がまったく異なっているからだ。
日本人のアスリートたちが続々と海外で活躍する一方、サッカーの日本代表監督がなかなか決まらないのはなぜか、と考えてみればいい。
実力と英語を身につけ海外に出て行くなら将来は開かれているが、一流の監督候補が極東の言葉も通じない社会で好成績を求められつつ、家族とともに暮らすのはリスクがあるのだ。
円高と株安、超低金利さらにデフレが映し出すのは、ちょっとやそっとではどうにもならない日本経済の現実である。
民主党は次の政権をだれが担うにせよ、そんな日本経済に正面から立ち向かわねばならない。その処方箋が、はたして09年マニフェストなのか修正版マニフェストなのか、それとも、そのどちらでもないのか。
対処方針を誤れば、あっという間に金融市場からレッドカードを突きつけられるだろう。いまの円高・株安・超低金利は一枚目のイエローカードである。正念場の秋がそこまで来た。
(文中敬称略)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1079
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