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「勝てない戦いはしない」――そう言われてきた小沢一郎前幹事長が代表選に出馬宣言した。鳩山前首相の全面支援を取り付け、「勝てる」と踏んだのである。実際、党内の議員勢力や党員・サポーターの獲得数を見ても小沢優位の情勢だ。党内では「菅と仙谷は度を越した小沢排除がアダになって、逆に3カ月で排除される」の声も出始めた。
大マスコミは予想通り、小沢批判キャンペーンを始めたが、それを承知の上で出馬を決断した小沢はずっと高いレベルの政治を考えている。小沢首相が実現すれば、民主党政治は原点に戻り、この国は今度こそ劇的に変わりそうだ。
小沢出馬を歓迎するこれだけの声と評価
「小沢出馬表意」を聞いて、民主党ウォッチャーである評論家の塩田潮氏は、菅首相の解散による“代表選潰し”があり得る―と言っていますが、そこまではないだろうと思い、記事は割愛いたします・・
この2カ月、何の仕事もしないのに、権力亡者に成り下がった菅首相。小沢が「菅ではダメだ」「このままでは日本が危ない」と代表選出馬を表明した。元大使で天木直人氏は言う。「小沢氏の決断は大歓迎ですよ。大事なのは、過去がどうしたこうしたよりも、この国のために何をやってくれるか。菅首相はアメリカ従属、官僚従属に走り、何もできない。小沢氏はそこに我慢ならず出馬を決意した。拍手を送りたいですよ」
「政治とカネ」の問題だけを強調して小沢を叩く大マスコミは、「巷の声は小沢出馬に厳しい」と流している。マイクを向けられれば、まじめな日本人は優等生的な反応をするものだが、本音はたぶん違う。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「何か大きく雰囲気が変わった気がします。このまま菅政権を続けさせても、何もいいことはなさそうだと、庶民はやり切れない気持ちになっていた。それが小沢氏の出馬で、何か変わるのではないかと希望、期待が持てるようになった。閉塞感を打ち破れる力を小沢氏は持っているからです。昨年、政権交代が起きたときと同じで、ワクワクした気持ちになってきた。それが庶民の偽らざる本音だと思いますよ」
無為無策の菅政治で八方ふさがりになった日本。そこに風穴を開けられる腕力と政治能力を持った男は、永田町を見渡しても残念ながら小沢一郎しかいない。それだけは間違いないのだ。
マニフェスト実現へ予算組み替えが始まる
民主党が大敗した参院選の第一声で、小沢はこう言っていた。「すぐ消費税増税はせず、ムダを徹底的に省いて財源を捻出するのがわれわれの主張だった」菅は、「財源がない」を理由に、子ども手当の縮小を決め、財務省のシナリオに乗せられるままに消費税増税を口にした。小沢首相になれば、再び民主党政治は原点に戻り、昨年の衆院選マニフェストの実現に力を注ぐことになる。
もともと民主党マニフェストの一丁目一番地は、国の予算207兆円の全面組み替えだった。国民生活にとって必要なものは増やし 、そうでないものは削る。菅政権が諦めてしまった財源探しに、小沢内閣は本気で取り組むはずだ。
「政策に順位付けができれば、予算の組み替えは可能です。国民を守るために何に投資するのか。財務省に任せるのではなく、政治主導で政策に優先順位をつければいいだけなのです」(民主党関係者)そうすれば、自民党政権時代と同じ「一律10%削減シーリング」なんてバカな発想は出てこない。要は、政治力、決断力なのである。ここが小沢は、菅や野田とは数倍違う。
秋に特別会計を対象にした「事業仕分け第3弾」が予定されている。蓮舫大臣のままでは、「セレモニーで終わり」がミエミエだが、小沢は、特別会計の仕組みに詳しいし、財務省のズルさもよく分かっている。特別会計に眠る埋蔵金を掘り出すことだって可能だ。特別会計の下にぶら下がるムダな独立行政法人にあらためてメスを入れ、補助金をバッサバッサと切ってくる。その剛腕は期待できる。
民主党のマニフェストに詳しいジャーナリスト・神保哲生氏が言う。「鳩山政権も菅政権も、マニフェストがなかなか実現できず、国民は歯がゆい思いをしてきた。小沢総理になれば、経験豊富ですから、万難を排して、マニフェストのかなりの項目を実現できるのではないかという期待感があります。ただ、人気取りだけでなく、その先に、どういう日本をつくるのかというしっかりしたビジョンを示せれば、さらに強力になると思います」この1年、しぼむばかりだった予算組み替えが最初の政治テーマになる。
小沢嫌いの新聞テレビの周章狼狽
案の定とはいえ、小沢が出馬表明したきのう(26日)の各紙夕刊には呆れた。社会面は、小沢に対する批判の声を並べ立てていた。「カネの問題 説明まだ」「国民のためになるか」「『脱小沢』が最大争点」と煽る記事もあった。争点は政策だろう。どの世論調査でも、国民の最大関心事は景気問題、社会福祉だ。消費税や円高対策で争えと注文をつけるなら分かるが、無理やり「小沢=悪」のムードを盛り上げ、「小沢首相誕生」を阻止しようと躍起だから、大マスコミには呆れるしかないのだ。
小沢を叩けば日本は良くなるのか。何も改革ができない菅政権のままでいいのか。違うだろう。だが、考えてみれば、悪意に満ちた新聞テレビ報道は、連中の周章狼狽(しゅうしょうろうばい)の裏返しである。
「世論の支持頼みの菅首相は、最近は大マスコミといい関係を保って、批判記事を減らそうという姑息な姿勢が透けて見える。しかし、小沢さんはそういう愛嬌(あいきょう)を振りまくことはない。どんなにバッシングされようが、メディアを取り込もうなんてしないし、記者クラブの既得権益を優遇することもない。すべて合理的にやる。そうなると権力との癒着が続けられなくなるから、大マスコミは小沢政権実現だけは絶対に阻止したいのです」(永田町関係者)
自分たちの都合、損得だけで、民主党代表選、次の首相選びを意図的にネジ曲げる。言論機関のやることなのか。小沢に近い議員が言った。「昨年の西松事件以降、小沢さんはずっと大マスコミの標的にされ、罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられてきた。これから代表選の間、いろいろな古い話まで引っ張り出して、小沢のダーティーなイメージづくりを必死でやるでしょうね」
小沢はそれを乗り越えるしかないが、新聞テレビには、こういう裏があることを、国民は肝に銘じておいた方がいい。
官僚支配を復活させた霞が関も刷新される
小沢出馬に慌てているのは、霞が関の官僚たちも一緒だ。操りやすい菅首相、何でも聞いてくれる仙谷官房長官、ヒヨッコ同然の大臣たちを相手に、せっかく官僚支配を復活させたのに、小沢政権になれば、再び力関係がひっくり返る。それが分かっているのだ。
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小沢といえば、昨年の幹事長時代、宮内庁長官をどやしつけたことがあった。天皇と中国副主席の会談にからんで、ブツブツ言った羽毛田長官に「一役人が内閣の方針に文句があるなら、辞表を出してから言え」とやった一件だ。子供時代から一度も怒られた経験のない宮内庁長官は震え上がったと、今でも霞が関の“伝説”になっている。
小沢は事務次官会議廃止、内閣法制局長官の答弁禁止、天下り禁止なども主導してきた。公約の「政治主導」のためにはどんな偉い官僚にも容赦ない。だから元厚生事務次官だった宮内庁長官を平然と罵倒できる。こんな度胸のある政治家はいない。 ある官僚がこぼした。「霞が関が一番嫌いな政治家は間違いなく小沢。手ごわいし、官僚の手の内を知り尽くしている。人事にも介入してくる。検察とだって闘おうとしている。幹事長時代はあまり内閣のことに口出ししなかったが、首相になったら、ガツーンとやって、『政治主導復活』を印象づけるでしょう。霞が関は戦々恐々ですよ」
菅首相は、元社保庁長官とか元ロシア課長などいわくつきの官僚まで復権させて、霞が関にコビを売っているが、小沢は違う。従わない官僚はバッサリやる。埋蔵金を隠す一方で、「景気対策をやる財源はない」なんてホザいている財務官僚や無策の日銀幹部のクビが飛ばされる日が来るだろうから、待ち遠しい。(日刊ゲンダイ2010/08/27 掲載)
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