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2010年8月25日 (火) 00:15
為替介入効果持続しない訳は菅政権政策にあり
日経平均株価が9000円の大台を割り込んだ。
『金利・為替・株価特報』(http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html)に記述し続けてきたが、内外株価はすでに下落のトレンドに転換している。
『金利・為替・株価特報』2010年5月28日号に次のように記述した。
「欧州の民間銀行が抱える経営不安リスクの遠因はサブプライム金融危機にある。サブプライム金融危機は、その原因がデリバティブ金融商品のバブル崩壊にあり、金融商品の想定元本が600兆ドル(5.4京円)にまで膨れ上がったことに最大の特徴がある。損失処理は完了していないと見られており、この潜在的な損失が外部環境の悪化に伴い再表面化するリスクが残存している。
目先、短期循環の側面では事態が好転することが期待されるが、中期トレンドとしての警戒感を強く念頭に入れておく必要がある。
2010年の金融展望において、年前半の楽観と年後半の警戒を基本見通しに据えたのは、このことを背景とするものである。年央に向けて、短期循環の事態改善=ユーロと各国株価の反発が期待されるが、本年4月高値を更新できない可能性が生まれている点に十分な留意が求められる。」
2009年3月から2010年4月にかけての内外株式市場での株価上昇トレンドが終了し、再び下落トレンドに移行した可能性に警戒を呼び掛けた。
その後、日経平均株価、NYダウのいずれも、チャート上の「デッド・クロス」を形成した。株価下落トレンド入りがより可能性を高めた。日経平均株価では9000円の大台を割り込むことに最大の警戒が必要であることを訴えてきた。
『金利・為替・株価特報』2010年5月28日号では第6節に
6【経済】世界恐慌の基本図式
を記述した。世界のマクロ経済政策の方向が、世界大恐慌時と重なることに警戒を呼び掛けた。
日経平均株価は9000円の水準に、極めて強力な支持ラインが存在した。
2009年 7月13日 9050円
2009年11月27日 9081円
2010年 7月 1日 9191円
2010年 8月17日 9161円
と、9000円を下回らずに推移してきた。
この水準を下回り、9000円を割り込んだ意味は極めて重大である。
菅政権が事態の推移に対して何の対応も示さないことに対する批判が強まっているが、菅政権の下での株価下落、経済悪化は当然の現象である。
本ブログでは、5月16日に(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-e0b2.html)
「財務省の近視眼的財政収支改善最優先策は危険」
6月23日に(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-3fab.html)
「大資本減税庶民大増税提唱の菅路線は挫折する」
7月21日に(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-4d39.html)
「菅主導=官主導超緊縮財政が日本経済を破壊」
を掲載した。
『金利・為替・株価特報』2010年5月28日号には、第4節に、
4.【政策】増税で景気が良くなるという嘘
を記述した。
詳細は省略するが、菅政権のマクロ経済政策が財務省路線の緊縮財政に転じていることが事態悪化の根本原因なのである。2011年度予算編成に向けて国債発行金額を44兆円に抑制し、予算規模を92兆円にとどめようとしていることに間違いがある。中立の政策スタンスで進むなら、国債発行金額を48兆円にしなければならないのだ。
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テレビ番組では、8月23日放送のテレビ朝日「TVタックル」(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-dd98.html)が最低の討論を示した。スタジオは日銀攻撃一色に染まったが、経済の専門家が一人も存在せず、井戸端会議以下の雑談に終始したのである。
現在の局面で日銀の政策余地はほとんどない。日本の物価上昇率が低い以上、名目為替レートがある程度円高に推移することを防ぐことは不可能に近い。
日銀は超金融緩和政策を維持しなければならないが、それ以上の政策対応を日銀に求めても意味はない。この点で経済学を正しく理解する専門家があまりにも少なく、経済音痴の財務省が主張する日銀の対応不足説を誤って振り回す輩が多すぎる。
市場関係者は菅首相と白川日銀総裁の電話会談が15分で終わったから円高になった、あるいは野田佳彦財務省の緊急会見の内容がなかったから円高になったなどの発言を示すが、ほとんど何も本質を理解していない。
問題の本質は、グローバルに景気支持政策が必要な時に、まず欧州が財政政策の対応を否定してユーロ急落を招いた点に出発点がある。欧州は財政政策を発動せず、通貨下落で不況をしのぐ戦術に打って出た。
ここから、世界は「通貨切り下げ競争」に移行し始めた。通貨下落による不況脱出を模索し始めたのだが、各国が同時に緊縮財政と通貨切り下げ政策に走れば世界経済は全体としては浮上しない。財政政策を発動する国は、その分、通貨が上昇するから、財政政策を放棄し始める。
この連鎖が作動し始めているのだ。詳しくは『金利・為替・株価特報』(http://www.uekusa-tri.co.jp/report/application.pdf)2010年8月27日号をご高覧賜りたい。
現状に対応するために、日本政府は、為替介入に踏み切るだろう。8月25日に東京市場で介入に踏み切る可能性もある。円は急反落して株価は大幅に反発するだろう。しかし、効果が持続しないことに注意が必要だ。
最終的には、グローバルな財政政策の活用が不可欠なのだが、欧州が財政緊縮に固執しており、日本も菅首相が完全に財務省路線に乗っているため、しばらくは、事態の根本的改善を見込めない。
日本では、株価暴落と景気再悪化をもたらす菅直人政権を退場させ、経済政策能力を持つ新政権を発足させる(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-5a3c.html)ことが、最低限必要である。
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