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政治家は普通の人が見えないものを見えるようにならなければなりません。そのためには、四六時中、国民の生活のために取るべき手段は何か、何が真実なのか、考え続けなければなりません。
今週末、私は後援会座談会「中村てつじと話す会」や後援会員との個別面談で自分の考えを伝えて参りました。その中で、後援会の皆様が一番に関心を持たれていた事であり、いま私がきちんと伝えなくてはならなかったことは何だったか。
「小沢一郎が民主党代表選挙に出ることについて、中村てつじはどのように考えるか、それを私たち後援者は聞きたい。」
代表選挙まであと10日を切った、今週末が一つの区切りになろうかと存じます。多くの国会議員が、悩みながら自分の考え方をまとめているところでしょう。私は、今、自分の考え方をブログで開示することにしました。
結論から申し上げます。「原則的」には、私は小沢一郎先生には今回の代表選挙には出ないで頂きたい。しかし、小沢代議士がこれから私が申し上げる理由などで「超越的・超人的」に決意をされて最終的に代表選挙に立候補をなさる場合には、全力でそれを支えて行きたい。
この結論に向けて、これから順に説明をして参ります。
◇1.原則的立場:民主党最後のカード=「小沢一郎」温存論
まず、原則的には、私は小沢代議士には今回の代表選挙に出て頂きたくないと考えています。それは、御自身を今の段階では温存して頂きたいと思うからです。
民主党にとって真の敵は誰か?
言うまでもなく、真の敵は自民党。もっと言えば、自民党という統治体制に象徴される日本全体に巣くう政官業の癒着体質、利権の構造です。
民主党は、この構造を破壊するために、小選挙区制導入を契機にして「自民党に代わりうる政党」として結党されました。
小沢代議士が当時の自由党のメンバーを説得し、2003年、民主党の全てを受け入れて民由合併を決意されたのは、改革の政党である民主党と自由党が分かれていては、利権構造の象徴である自民党を利するだけであると考えたからだと分析できます。
そうすると、政権交代で一番大切なのは、利権の象徴たる自民党を予算編成から一年でも長く遠ざけることです。そのことにより、自民党の資金源である利権構造を崩壊させることができ、自民党を立ち直れなくさせることだと分かります。
小沢代議士自身、今は秘書の訴訟を抱えていらっしゃいます。全く何の憂いもなく総理として執政に邁進するには、その訴訟を終えていることが望ましい。だったら、今ではなく、菅総理で行けるところまで行く。今回の失敗の結果を菅総理と枝野幹事長のペアでしっかりと最後まで始末して頂くことが望ましいと分かります。
今、代表選挙に出られ、たとえ総理になられたとしても、その最大の仕事は菅総理・枝野幹事長が失敗された後始末となります。小沢代議士の今の置かれている状況からすれば、政治的生命を短くすることはあれ、完全に仕事をやりきれる状況になれるのかどうか。
むしろ、後始末を終えたぐらいで志半ばで仕事を終えなくてはならなくなった時、結局、いま仮に「責任を取り総理や幹事長を引いた」人たちが復権することになりかねません。
◇2.参議院選挙の総括をどう考えるか
前項(◇1)を理解して頂くための前提として、私が考える今回の参議院選挙の総括を書きます。事は6月17日、マニフェスト発表会から始まります。菅総理が消費税の増税について言及されました。そして、その発言を他の閣僚も補強し、まるで消費税は参議院選挙後にすぐ上げられるかのような印象を国民の皆様に持たれる結果となりました。
国民の皆様の多くからは「2009マニフェストの旗を降ろし、税金の無駄遣いをなくすのを諦め、増税路線に走るのか」と思われたことでしょう。
なぜ、小沢代議士は参議院選挙戦序盤で、一人区のそれも小さな村から演説を始め、それも、菅総理の消費税発言を批判することをしたのでしょうか。
私の「小沢一郎研究」によると、小沢代議士のなさることには全て理由があります。
今回も最大の目標のために「政治的構造」を作るための行動であったと分析できます。その最大の目標とは何か。当然のことですが「参議院選挙で民主党が勝利をし「国民の生活が第一。」の政治を実行するための態勢を作ること」です。
そのためには、利権の象徴たる自民党を勝たしてはならない。
そのような視点に立てば、選挙序盤での小沢代議士の行動が理解できます。
マスコミの目を小沢vs菅のやり取りに向ける。より詳しく言えば、小沢代議士が菅総理の発言を批判することで、菅総理は消費税発言に関して「議論を開始するだけで実際に上げる時にはきちんと衆議院選挙で信を問う」ということを弁明する機会を与えることができる、ということが目的でありました。
実際問題として小沢代議士の序盤戦の発言がなければ、菅総理の修正的発言が報じられることはありませんでした。
このまま行けば、小沢vs菅のやり取りにマスコミの関心が集中し、他の政党の出る幕はなく、民主党の圧勝となったでしょう。
ただ、小沢代議士の計算が狂ったのはここからです。
菅総理がさらに給付付き税額控除という議論を始めた。消費税の逆進性を説明するのに、所得税の還付を使うという手段を演説で言う。これは国民の皆様にとって分かりにくい。消費税の逆進性対策だけを言うのであれば私が6月18日に「「戻し税」と消費税」で書きましたように「戻し税」の考え方を伝えれば済むだけの話です。
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20100618
また枝野幹事長がみんなの党との連携を模索するという発言をされた。これは戦う前から負けることを前提とする発言です。私は自分の上司(千葉景子法務大臣)を神奈川県選挙区で落選をさせるという痛恨の極みを経験しました。選挙区でみんなの党の候補者と戦う民主党の候補者にとって、枝野幹事長の発言は後ろから鉄砲を撃たれるようなものでした。
この菅総理と枝野幹事長の発言については、さすがの小沢代議士もお手上げです。「政治的構造」を理解できないで失敗してしまったことについて総括もできていない状態では、会って話すこともできない。選挙後に菅・小沢会談がないのも、この点が理由だと考えられます。
今回の民主党の敗退は、向こう少なくとも6年、普通に考えれば9年、影響が続きます。菅総理と枝野幹事長のペアが犯した失敗は、民主党を存亡の危機に陥れたものです。私から見れば、お二人が責任を取る方法は二つしかありません。
一つは、総理や幹事長を辞めるだけでは足りず、辞めるなら議員辞職・政界を引退することです。反省を示すのであれば、そこまでして頂かなくてはなりません。
もう一つは、この失敗によって引き起こされた結果に対して、最後までボロボロの雑巾のようになるまで失敗の後始末=「尻ぬぐい」をすることです。
前者は、現実的に無理でしょう。だったら後者を選ぶしかないということです。
◇3.ありうる「超越的・超人的」決意:情と理の人=「小沢一郎」
前2項(◇1+2)で述べたように、私が小沢代議士の立場に立つのであれば、ここは菅総理続投で行く方が良いに決まっています。
しかし、例外的に2つの要素で、小沢代議士が「超越的・超人的」な決意をなさる可能性があります。それをこの項で説明します。
まず一つは、小沢代議士が「情の人」であるということです。
分析的に考えれば、「小沢一郎」温存のカードを持つ方が今は良いに決まっています。しかし「菅に小沢先生がないがしろにされた」というようなレベルでしか物事を捕らえられない議員がいることも事実です。事実というか、情けないことですが、そんな議員が多い。
しかし、自分のためにと思って「殿、御決意を」と言ってくる、自分が愛する仲間の国会議員のことを思えば、小沢代議士は立候補の決意をする可能性がある。
そんな情に流されるところが、小沢代議士の魅力でもあり危なっかしいところでもあります。
もう一つは、小沢代議士が分析する「これから予想される世界の変化」に菅政権が対応できず自分しか采配をふるう人間がいないと判断をなさった場合です。
私は、菅政権誕生後・参議院選挙公示前に、数人の仲間と小沢代議士から話を伺う機会を得ました。その時に「菅政権に懸念されることはありますか?」という質問がでました。これに対して「この秋から世界が大きく激動する可能性がある。その変化に対して菅政権が対応できるのかどうか。そこを心配している」という趣旨の回答をされました。
このやり取りから今で2ヶ月。その時には収まっていた円高も、急速に進んでいます。円高はいつも始まるのは秋口です(岩本沙弓「新・マネー敗戦」p.140参照)。小沢代議士が示した「予言」の徴候ではないかとも思えます。
この時点で、小沢代議士が冷徹に理論的に分析した結果、無理を承知で自分が担わなければならないと決意される可能性が出てきたと言えます。
私の感覚では、この2つの要素のどちらかが欠けても小沢一郎という政治家は決意をしないと思われます。だからこそ、その決意は「超越的・超人的」な決意だと結論づけられるのです。
◇4.最後に
以上のような私の分析が的を射ているのかは分かりません。ただ、この世界が大きな変動を迎えつつある現時点で、日本の政治家がどのように小沢一郎という政治家を見ているのかは、それ自体が一つの政治を考える材料になります。
それをたとえ私一人だけでも明らかにすることが、国民の皆様にこれからの日本政治を考える材料となるのではないかと思い、僭越ながら考えをまとめてみました。
今回の記事については、ツイッターでもご意見を頂くことになろうかと存じます。
http://twitter.com/NakamuraTetsuji
広く御意見・御感想を頂ければ幸いです。
メールm@tezj.jp
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20100822#p1
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