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参議院選挙の思わぬ敗北によって政局は混沌としている。九月の代表選挙に向けた民主党内の動きが、政局の焦点ということになるのだろう。しかし、民主党の主だった政治家が九月に本気で代表選挙をするなどということは、常識ではありえない。今の民主党代表は、そのまま日本の首相になる。菅直人首相に責任を取れと叫んでいる反主流派の政治家は、たった三か月で首相を代えてもよいと思っているのだろうか。小沢グループやその周辺に、菅に代わって首相の大役を担える政治家はいないと断言できる。与党の党首選挙は首相選びに直結するという緊張感を持って、人事論争をして欲しい。
緊張感が求められるのは、反主流派以上に、菅首相及び執行部の方である。選挙の後しばらく、テレビで見る菅首相は、魂の抜け殻のようであった。菅のとりえは、権力欲の大きさだったはずである。挫折を乗り越える図々しさこそ、菅が前任の首相たちと違う所だと期待していた。確かに議席数は改選議席から十も減らしたが、比例代表の得票は民主党が圧倒的な第一党である。選挙での敗因を的確に分析し、これからの政権運営に新しいビジョンを示すことができるかどうかに、菅の真価がかかっている。
参院選の最大の敗因は、消費税問題のように見える。しかし、消費税率引き上げは、昨年の総選挙の際に民主党が示したマニフェストが現実の政権運営との間に齟齬を引き起こしたという大きな問題のひとつの現われに過ぎない。野党として作ったマニフェストが、いろいろな面で詰めが甘く、使い物にならない部分があるのも、仕方ない話である。また、不景気の中で税収が予想外に落ち込んだことも、不運であった。それにしても、民主党は政権交代による政策転換について、軽く考えていたことも確かである。
民主党は生活第一というスローガンの下で、ヨーロッパ型の福祉国家に向けて大きな政策転換を訴えた。子ども手当てや高校無償化などがその先陣である。子ども手当ての金額、現金給付と現物給付の組み合わせ方などについては、いろいろと議論はある。それにしても、政府が国民生活を支えるために積極的な政策を展開するという姿勢自体は、今の日本に必要とされている。
そうであれば、歳入面でも大きな政策転換を実現しなければ、政策のつじつまは合わない。子ども手当てを当初の構想どおり一人月額二万六千円支給するためには、五兆円ほどの財源が必要となる。これは日本の防衛費と同じ金額である。無駄を省いて必要な財源を確保するというマニフェストの議論は、野党としての主張であった。本格的な福祉国家を確立するためには、安定的な財源を確保することが不可欠である。日本の国民所得に対する租税・社会保険料負担率は、西欧諸国と比べて二〇ポイント以上、西欧では小さな政府のイギリスと比べても一〇ポイント低い。歳出面で西欧モデルを目指すというのだから、歳入面でも負担率を対国民所得費でまず一〇ポイント程度引き上げる必要がある。
菅首相の消費税率引き上げ発言は、こうした構想の一部だと私は理解している。しかし、一般市民に私と同じような好意的理解を求めるというのは、余程の政治音痴である。政治家たるもの、まず目指すべき社会像を明確に語り、人々の生活がどのように改善されるかを提示しなければならない。
菅が本当に責任感のある政治家なら、選挙の敗北の後も消費税論議の旗を下してはならない。むしろ、国民が最初の菅の問題提起を拒絶した理由をしっかり考え、もう一度、福祉国家のビジョンと体系的な税制改革の構想を立て直さなければならない。それは菅政権だけではなく、今の日本にとっても焦眉の急である。
民主党執行部は、九月の代表選挙のことなど、考える必要はない。反主流派が菅を引きずりおろしたかったらやってみろと開き直ればよい。そんな政局の話よりも、秋の臨時国会、予算編成と来年の通常国会、そして衆議院の残り任期の三年間で、どのように政権を動かし、成果を実現するかという大きなカレンダーを書くべきである。
菅首相が最初にすべきことは、野党やメディアになんと言われようと、あと三年政権を続けると宣言することである。民主政治には、国民がリーダーを選ぶという局面と、リーダーが国を統治するという局面がある。三年前の参議院選挙以降、日本は統治不在の状態であった。政権が持続することは、それ自体で意味がある。
秋の臨時国会は、ねじれ国会の最初の本格的戦いの場となる。この段階は妥協や協調で成果を挙げるというよりも、まず各党が自己主張をして、それぞれの対立点と共通点を明らかにするということが必要である。まず政府与党が自らの主張を理念に基づいて体系的に示し、野党の批判を仰ぐことが始まりとなる。国会の表舞台で与野党が論争を尽くせば、おのずとどの党のどの主張が近いかということが見えてくるであろう。
連立の組み替えはそうした論争をしっかり行った後に見えてくる課題である。たとえば、消費税率の引き上げについて、福祉国家の充実という理念についても合意できるのであれば自民党と協力する可能性もあるだろう。また、今までの政策論の延長線上で考えるなら、公明党との距離が最も近いかもしれない。小さな政府だけが看板のみんなの党とは組めるはずがないと私は考える。
そのようにして政党の距離感を明確にした上で、来年の通常国会以後の政治課題に取り組む体制を作るべきである。繰り返しになるが、ねじれ状況であっても、政治を動かすイニシアティブは政府与党が握っている。八月にじっくり構想を練り、これまでの失敗を踏まえた政権戦略を打ち出して欲しい。(週刊東洋経済8月14日号)
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