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総務省「限界 交代して」 厚労省「混乱招く 困る」
持ち主不明の年金記録「5000万件」が発覚して3年余が過ぎる中、政府内で、「消えた年金」の記録訂正業務の押しつけ合いが始まった。
膨大な確認作業には大量の人手と予算がかかるため、作業を担う「年金記録確認第三者委員会」を所管する総務省が、もともと年金行政の主務官庁である厚生労働省に引き受けるよう求めたものだが、厚労省は反発している。民主党は参院選公約で「消えた年金」対策に「2011年度まで集中的に取り組む」と掲げたが、現場では緊迫感が薄れつつあるようだ。
原口総務相は11日、長妻厚労相と総務省で会談した。第三者委の機能を11年度から厚労省に移すよう求めるためだ。総務相は、第三者委の運営が、各省庁の業務の効率性などをチェックする総務省本来の行政評価業務を圧迫し、「支障が生じている」と主張した。
第三者委は07年6月、年金記録問題への対応策として発足。総務省に設置された中央委員会と、同省の管区行政評価局など全国50か所に置く地方委員会がある。この運営事務のため、同省は行政評価局や管区行政評価局などの職員計約1300人の半数を投入している。さらに、委員の人件費や旅費などの経費は10年度だけで約126億円に上る。
訂正処理の申し立てはこれまで約18万件に上り、約14万件が判定を受けた。だが、申し立てはなお毎週1000件前後あるという。
総務省の動きの背景には、政府の行政刷新会議が09年11月、「行政評価機能の抜本強化」を打ち出したことがある。同省は毎年度約12本、各省庁の事業や業務の調査、改善を求めてきたが、第三者委設置後は実績が半減。「第三者委を続けながらの強化には限界がある」との声が出ている。運営に126億円もの予算がかかることへの不満もある。
厚労省側は「年金記録問題解決への取り組みは軌道に乗ったばかり。第三者委の見直しは停滞や混乱を招く」と反発。政府内にも、客観性維持のために厚労省への移管に慎重な意見があり、調整は難航しそうだ。
年金記録確認第三者委員会 年金記録問題で、国に記録がなく、受給者にも領収書などの証拠がない場合に年金支給の可否を判断する組織。2007年の設置当時の安倍政権が、年金記録問題を起こした社会保険庁では国民の信頼が得られないとして、総務省に設置した。
(2010年8月13日 読売新聞)
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