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保坂展人さんに聞いた「千葉大臣の死刑執行と刑場公開をどう考える?」 (マガジン9条)
http://www.asyura2.com/10/senkyo92/msg/281.html
投稿者 ダイナモ 日時 2010 年 8 月 11 日 22:26:06: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.magazine9.jp/other/hosaka/

ほさかのぶと(社民党前衆議院議員)1996年、衆議院議員に初当選し3期務める。国会質問が500回を超える“国会の質問王”として有名だが、盗聴法、共謀罪、裁判員制度、死刑制度についての質問も数多く行ってきた。国会議員在職中は死刑廃止を推進する議員連盟」(会長・亀井静香衆議院議員)の事務局長を務めていた。ブログ「保坂展人のどこどこ日記」連日更新中。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto

7月28日、政権交代後はじめての死刑執行が行われました。その当日に法務大臣が記者会見を開き、2名の執行された方の名前と立ち会ったことを明らかにしました。その後の記者会見で大臣は「死刑制度の国民的議論を」と呼びかけていますが、いくつかの違和感がぬぐえません。この件についてどう考えればいいのか? 死刑廃止議連の事務局長として長く死刑制度問題にかかわってきた、保坂展人さんにお話をお伺いしました。

───なぜこのタイミングでの死刑執行だったのでしょうか?

 千葉さんは参議院選挙に落選しました。これは本人もまわりの人も予想していなかった事態で、現役閣僚では彼女一人でしたね。民主党の選挙結果を受け、枝野幹事長からも辞めたいというような声が出てきていました。で民主党は代表選挙を9月に控えていますから、菅総理の責任論に直接結びついてくるような党内のごたごたしたことは、封印したいと思っていた。それで異例の長期間の大臣続投ということになったのです。これについては、自民党からもいろいろと反論が出ていましたね。なぜ選挙で信任されなかった人が、大臣を続けるのだという。
 それから法務省の主要な人事移動が7月にあります。そこで、これまで大臣の側にいた法務省の幹部たちが、千葉さんに対してこれまで以上に「強く」ささやいたのだと推測されます。「大臣としての求心力をとりもどすには、もう今しかありませんよ。」という法務官僚の「助言」を、選挙に落ち、すっかり自信を失っていた千葉さんは、素直に聞き入れてしまった。

 千葉さんは大臣になってからこれまで、可視化法案についても、「やる」といいながらもまったく手を付けてこなかった。選択制夫婦別姓についても、信念を持ちやりたいのなら、亀井静香さんを説得しても取り組むことができたのに、これもうまく進んでいなかった。一方で、時効廃止法については、本来ならば憲法39条にも違反するおそれのある、法的にもかなり難しい法案であったのに、ある事件に間に合わせるために、4週間の国会審議で成立し即日施行させてしまったことがあります。これは、社民党も賛成して法案可決したものです。私が国会にいたら、こんなにやすやすとは、通させなかったと思いますが。
 とにかくこれらについて、千葉さんは法務官僚の手の平にのって、その通りに動いていたんですね。千葉さんは、実は自民党よりも扱いやすい大臣だという評判だったんです。そこで唯一やっていなかったことが、死刑執行へのサインだった、そういう状況だったのです。

 そしてこれまで内閣で連立を組んでいた福島みずほさんが去り、死刑廃止議連の会長である亀井静香さんが去ったことなども、もちろん状況の変化としてありました。そうした中で、法務官僚の詭弁にすっかりやられてしまったのだと思います。

───どういう「詭弁」だったのでしょうか?

 法務省大臣室は、座りごごちの良いソファはあるが、「取調室」と同じなんですよ。
 対面で密室で窓がない部屋が取調室なんですが、大臣室も密室です。そして、法務省の局長になる人たちは、全て検事資格を持っています。役所の中でもとりわけ法務省は変わっていて、事務次官がトップではなく、法務・検察の長である検事総長が、格上となっています。私は15年近く、歴代の法務大臣と法務省刑事局とつきあってきており、歴代の検事総長とも長時間話したことがあります。なぜかというと、死刑、盗聴法、共謀罪、この種の法律を担当していて、国会で答弁するのは、刑事局長ですからね。で、歴代刑事局長はおおむね検事総長になっています。彼らと話していて感じるのは、死刑について、やりたくない、とか、立ち止まって考えたりするのは出世の妨げになる、ということなんです。

 今回、死刑廃止議連から出てきた千葉大臣に、死刑執行をさせることは、法務官僚の腕のみせどころ、という感じになっていたでしょう。彼らにとって千葉大臣攻略は、重要なミッションだったのではないでしょうか。
 千葉大臣の記者会見の言葉を何度も読んでみました。私のブログにも書き出しました。

 ・死刑廃止と執行のはざまに揺れる「千葉法相」の言葉
  http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/651d77a651b809c7c81503b7367351d3
 ・「死刑廃止の信念変わらぬ」で「死刑執行」とは
  http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/f5d9d3b470adf6ec4b5491150652a748

 千葉大臣は、今なお「死刑廃止論者である」と言ってますね。じゃあなぜ? という疑問が当然わきます。でどういう「詭弁」だったのか。ここからは私の推測ですが、こう考えます。
「法務大臣としての職責をまっとうして、死刑執行してこそ、制度の存置か否かの議論を、国民に広く問うことができる。そうじゃないと、大臣の職責から逃げてなんだ、無責任だ、と国民は考えるでしょう。今、我々刑事局にサインをいただいたのならば、死刑制度を国民的議論に伏すべきという大臣の信念も尊重し、我々も清水の舞台から飛び降りるつもりで、刑場の公開にも踏み切りましょう。大臣が望むのでしたら立ち会いもみとめましょう。そうすることで、死刑制度を考える根源的な議論ができるようになるんです。千葉大臣によって、まさに歴史的な扉があくんですよ」と、そういうような「詭弁」でもって説得をしたのではないかと思うのです。
 この「死刑執行してこそ死刑制度の議論ができる」という言葉を、繰り返し耳元で言われ続けたのではないでしょうか。死刑廃止のために執行する大臣なんて、どこの国にもいないでしょう。でも元検事たちの法務官僚たちに囲まれていると、それが正しいと思うようになるわけです。いわば一種のマインドコントロールですね。未だに千葉さんもそう思っているんです。だからみんなびっくりしたし、記者会見のやりとりを聞いても、釈然としない。

 世論操作ということについてはこれほど巧みにやれる役所は、法務省の他にないわけです。検察リークってあるでしょ。最近の小沢一郎氏をめぐる検察とマスメディアの一連の報道の関係をみても、わかるでしょう。検察というのは、メディアを手玉にとってやってきた自負もあるところです。従って、今回の話についても、某大手新聞の論説委員とか、司法担当記者やマスメディアの上層部の人たちとは、ある程度「もみながら」やってきているのではないでしょうか。
 今回の刑場の公開について、メディアは賛成でしょう? 報道できた方がいいわけですから。でその後の展開についても、法務省はこのように考えていると思います。死刑の刑場を公開すると、死刑への信頼と支持がより強まる。裁判員制度で選ばれた裁判員が自信をもって死刑判決を出せるようになる、とね。実際、裁判員制度において、死刑判決はまだ出ておらず、死刑求刑もない。現状はその手前で引いているわけですからね。

───刑場公開したら、国内では死刑制度支持が強まる?

 僕が過去に刑場に入った時の印象を言うと、そこは、一種の完成された空間でした。人間の死、命を奪うという究極の殺人行為が行われる場所ということを感じさせないで、法の名のもとに、正義の実現であるかのごとく、人間の命を粛々と消していく場所。そしてその執行については、みんなが重い気持ちにはなるけれども、自分がやった、というふうに背負わなくてもすむ仕組みがきちんとできている。要するに、よく考えられているわけですよ。(刑場の図は こちらのサイトにあります)
 刑場に一緒に見学に行った議員さんの中にも、「いい体験をした。厳粛な気持ちになった。感動した」という感想を述べていた人がいましたね。刑場を見ると、妙な感動をする人がいるのです。「国家が国家の名の下に、死刑を執行する特別の場所に入れた」ことについての感動と、組織として死刑執行という難行に立ち向かっていく人たちの大変な労をねぎらいたい、というような気持ちになるわけです。
 刑場が公開されたら、そこにテレビカメラが入ったら、メディアではすごい扱いになるでしょう。そうすると、これは100%言えることですが、被害者遺族は、死刑執行が見たい、と言い出すでしょう。それは被害者遺族の権利であると主張するかもしれません。すると、モニター中継とかで見せるという話になるでしょう。

 被害者遺族が死刑執行を見届けるということが一つの「てこ」になって、死刑執行が停止できにくくなるでしょう。もう一つは、国民もいくらか見たいと言い出すでしょう。鳩山邦夫さんが法務大臣の時、死刑の情報公開として、執行された人を発表するようになりました。この時、メディアでは、事件についての検察の起訴状に描かれた事件概要とともに、発表するようになりました。伝えられるのは事件と執行のことだけ。死刑囚がどのようにその間を独房の中で送ってきたか、仏画をずっと書いていたかもしれないし、何百通という謝罪の手紙を書いていたかもしれない、そういうことはいっさい報道されずに、事件のことと、執行した事実だけが伝えられるのです。

 もしかしたらこれからは、死刑執行がある朝には、NHKなどで刑場だけの映像をながして、重々しく執行を発表とするというような、特別番組が朝10時とかから始まるかもしれない。そうなるとみんなそれを楽しみにし始めるのではないでしょうか。人間の深層心理として、古今東西、殺されるところがみたいわけです。そうなると、千葉大臣の今回の執行、そして刑場の公開は、「死刑廃止」という議論が、あと2、30年はどこ吹く風といったようになるのではないか、少なくともマスコミはそう動いていくのではないか、という読みが、法務省刑事局にあったと思います。

 今話したことは、「真夏の夜の悪夢」に終わればいいのだけれど、刑場が公開されたところで、「死刑制度、これでいいのか」という議論がこの国で高まるとは、とうてい思えないのです。なぜなら、先日も今みたいな話をテレビ局の取材で30分ぐらい話したけれど、使われたのは8秒ぐらい。マスメディアは、法務・検察がやろうとしていることを、疑ったり問うたりすることことはダメだと思っているんですね。以前、明日死刑が執行されるようだというリークがあって、それについて私たちが抗議声明を出し、それをいくつかの新聞が記事に書いたことがあった。そうすると、なんと記者クラブの方から、クレームがついたんです。「これは死刑執行への妨害ではないか」と。

 ですから今回の「刑場公開」も、法務省にとっての理想的な形で行われるだろうと思っています。唯一彼らが描いているシナリオが崩れる可能性は、フリーランスの記者が入り、また海外メディアが入るなどして、BBCなどで世界に配信される時でしょう。国連の人権理事会にも加盟して現在理事国でもある日本が今も絞首刑をやっているというのは、「人権」という観点から見たときに大きな驚きであり、国の信用を落とす要因になると思います。
 

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コメント
 
01. 2010年8月11日 23:35:33: H9nRCP9HkA
香田くんの動画を見たあとで何をどうしろと?

いえ、ちょっと言ってみただけです。本当ですよ?


02. 2010年8月11日 23:39:12: FSyPN1ESQM
「最近の小沢一郎氏をめぐる検察とマスメディアの一連の報道の関係をみても、わかるでしょう。」

よーく分かります。「異常」のひとこと。

「仏画をずっと書いていたかもしれないし、何百通という謝罪の手紙を書いていたかもしれない、そういうことはいっさい報道されずに、事件のことと、執行した事実だけが伝えられるのです。」

保坂氏、少数派だと思いますし、選挙にも不利にはたらくかもしれませんが、今後もがんばってください。


03. 2010年8月12日 00:24:28: kTARymwEOc
私は超消極的死刑容認論者だ。
けれども今般の千葉法務大臣の見解には唖然とするほかなかった。
この人の法務大臣就任が見せ掛けの腰掛けなのはいまさらいうまでもないが、それよりなにより保坂氏も指摘するように「死刑制度の国民的議論」を刑場公開と併せて問題提起するその無茶苦茶さだ。
私は被害者感情を考慮すればギリギリ考えてどうしてもこれを放置できない凶悪犯罪の被告だとすれば極刑もやむなしと考えているが、なにも被害者感情におもねてそれを積極的に行使すべきだとは考えていない。
ひとつには殺意というものに蓋然性があるのかどうか疑わしいということと、もうひとつは言うまでもなく冤罪の恐れである。
そのためにはなんとしてでも取調べの可視化を導入し、何十にも公正性を担保して後、「死刑制度の国民的議論を喚起するというなら納得もするが、千葉の言っていることは人が刑場の露と消える場所を見せて死刑ありやなしや?を話し合おうというのだからわけがわからない。
裁判員裁判もそうだが、人が人を裁くということは傍聴ブログやテレビの2時間ドラマのような劇的で人間くささがフューチャーされることでなく徹底して個人と向き合うことでありしんどい作業である。
だからこそ、こうした凶悪犯罪の弁護人は世から蛇蝎のように嫌われ攻撃排撃を受ける。
それでも人が人を裁くことの困難さを知らずして死刑論議の提起もない。
刑場の公開で死刑の合否を提起しようなどとはそれ以前の問題である。

04. 2010年8月12日 00:33:19: RnC5sETXic
死刑を見て感動した・・・罰するのは当然の話ですが、
死刑は感動するべきものではありません。病み過ぎでしょう。

05. 2010年8月12日 04:06:43: EJj3Xw6yF2
>死刑の刑場を公開すると、死刑への信頼と支持がより強まる。

逆じゃないかなあ。たとえば屠殺場を生で見たら、肉を食べるのが嫌になると思う。
01さんも、そんな思いではないだろうか?
私も見たけど、吐き気をもようしたもの。



06. 2010年8月12日 09:33:38: EJj3Xw6yF2
>(刑場の図は こちらのサイトにあります)

死刑執行方法
http://www.geocities.jp/aphros67/030600.htm


07. 2010年8月12日 10:01:19: EJj3Xw6yF2
>これは100%言えることですが、被害者遺族は、死刑執行が見たい、と言い出すでしょう。
>もう一つは、国民もいくらか見たいと言い出すでしょう。

私は死刑制度容認論者ですが、上記のような世論が形成されるならば、即刻死刑制度廃止論者になります。
被害者の遺族が、加害者に対して極刑を望む事は事実としてある。その感情はどのようなものだろうか?国家権力が被害者に代わって加害者を殺してくれと望んでいるのだろうか?それとも、加害者に死をもって償って欲しいと望んでいるのだろうか?私は、後者であると思っている。

保坂展人さんが、この様な思考回路の持ち主だとは思わなかった。


08. 2010年8月12日 12:10:44: tXeRGquu5w
裁判で死刑判決が確定したら、法務大臣は死刑執行を命令する義務を負う。
「命令しなければならない」ことになっている。

ゆえに法相として命令するのは当たり前。
法相が勝手にボイコットするのは職権濫用。

「自分は死刑反対、死刑執行命令なんていやだ」という奴はそもそも法相になるべきでない。


09. 2010年8月12日 18:28:01: OU45NNHkXI
>>08
「命令しなければならない」はわかるが、死刑執行の順番が官僚に勝手に決められ
ていることは、どう思われますか。昨今だと冤罪が問題であり、冤罪の死刑執行囚
を先に死刑執行することもできてしまうわけです。

また、法律は、絶対ではなく少なくとも憲法に従う必要があります。法の本での
平等(死刑執行の順番)や冤罪の場合の個人の基本的な権利(やり直し裁判の請求
権など)を考えると、死刑執行に関しては、いろいろな議論があって当然だと
思います。もっと細かい(具体的な)省令や慣例についても議論が必要かも知れま
せん。


10. 2010年8月12日 19:41:20: PMdrnQmxwE

保坂さんのお話は、よくわかりますし、素晴らしい内容です。
早く、国政に復帰して、御活躍して頂きたい。

応援してます。


11. 2010年8月12日 19:56:56: pgxx8GMMiM
僕は若い頃、鶏の処理場で働いていて、1日に三千羽以上捕まえて首を切っていたけど、鶏をたべるのがいやになったりはしなかった。鶏の頸動脈を切ると、なま暖かい鶏の血が顔にかっかてくるが、そのとき「ああ俺は今生きているんだ」という感覚がわいてくる。牛の屠殺場に行き、牛を殺すのを見ていたら、死ぬ前に牛の目に涙がたまっていた。牛の頸動脈を切ると、血がバケツいっぱいほども流れ出してきてすごい量だ。こうしたとき、自分が生きていると言うことに感動を覚える。だけど牛を食べるのがいやになったりはしないね。やっぱり、牛は旨いよ。
死刑も被害者が望むなら、被害者の身内に執行させたらどうだろうか。そのうち人を殺すのがやみつきになるかもしれないね。僕は、サスペンスドラマで殺人のシーンがあると思わず血がたぎるような快感にとらわれるよ。まだ一度も人を殺したことはないけど、人を殺したらどんな感覚になるんだろうか。サカキバラは、猫を殺していたそうだが、そのうち人間を殺してみたくなったのだろうね。

12. 2010年8月12日 20:14:33: qFruYzZTOU
やはり、慣れと云うものは恐ろしい。

13. 2010年8月12日 20:28:23: tXeRGquu5w
>9

冤罪かどうかを判断するのは、裁判所である。
法相の職務ではない。そもそも法相にそんな権限はない。

裁判所で死刑判決確定したら、粛々と執行命令するのが法相の職務である。
控訴しなければ、あるいは控訴しても棄却されれば、判決確定。

然る後に執行命令出しても、何ら憲法に抵触しない。
現実に死刑廃止議連なんかは「裁判所の違憲立法審査権の発動」を求めてないだろ。
刑訴法の当該規定が違憲でないことは、議論の余地のない明白なことなんだよ。


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