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続・弛緩国家(国会探検:田中良紹)
http://www.asyura2.com/10/senkyo92/msg/152.html
投稿者 判官びいき 日時 2010 年 8 月 09 日 09:54:31: wiJQFJOyM8OJo
 

http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2010/07/
連日猛暑が続いている。思えば参議院選挙で自民党が大敗し、「ねじれ」が現実となった3年前の夏も猛暑だった。与党の大敗は政治に緊張感をもたらす筈だが、敗北の責任を取らずに続投を表明した安倍総理は改造人事も国会の召集も先送りし、奇妙な沈黙を守っていた。その2007年8月17日に私は「弛緩国家」という一文を書いた。

政権延命のための施策も打ち出さずに沈黙する安倍総理とは対照的にアメリカで派手なパフォーマンスを繰り広げていた小池防衛大臣の背後に裏の権力が存在し、安倍総理を退陣に追い込もうとしているのではないかという文章である。小池防衛大臣は同時に「防衛省の天皇」と呼ばれた守屋事務次官を退任させるため、計画的に送り込まれた「刺客」であるとも書いた。守屋事務次官には普天間問題を巡って地元沖縄から反発があり、またイージス艦の機密漏洩問題や軍事専門商社との癒着が問題視されていた。

安倍政権が国際公約したインド洋での海上給油を継続させるためには、8月中に国会を開いてテロ特措法案を衆議院通過させる必要があった。「ねじれ国会」ではそれが絶対条件である。しかし総理の意に反して自民党国対は国会を開かせず、安倍総理は国際公約を裏切る状況に追い込まれていた。ところがメディアは自民党内部の権力闘争に目を向けず、「閣僚候補の身体検査には時間がかかる」などとピンぼけな解説を繰り返していた。

「弛緩国家」と題したのは大事が起きても緊張感を感じさせない国家の状況を指したのである。その後、安倍総理はぶざまな辞任表明を行い、守屋氏は退任にとどまらず東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕された。その守屋氏が先月「『普天間』交渉秘録」(新潮社)を上梓した。普天間問題を巡るアメリカ、沖縄、外務省の対応とそれに振り回される政治家の動きを実名で記載している。

これが極めて面白い。無論本人に都合良く書かれているのだろうが、全てを失った者だけが書ける生々しさがある。逮捕されていなければ官僚であった守屋氏が公表する事はあり得なかっただろう。そう思うと我々が目にする事が出来たのは逮捕のお陰である。元外務省職員の佐藤優氏をはじめ、リクルート事件の江副浩正氏、前福島県知事の佐藤栄佐久氏らの著作が面白いのも、失うものがなくなった者だけが語れる迫力に満ちているからである。

ところでこの夏も3年前と酷似している。参議院選挙で与党が大敗したにもかかわらず政治に緊張感が感じられない。まず民主党の選挙総括である。両院議員総会が開かれた7月30日まで選挙から2週間以上の時間があった。それだけの時間があれば3年前の参議院選挙、昨年の衆議院選挙、そして今回の参議院選挙を比較検討し、何が国民に支持され、何が支持されなかったかを検証することは出来たはずである。ところがそうした「厚み」のある総括は行われなかった。

「菅総理の消費税発言が唐突で説明不足だったのが敗北の原因」という薄っぺらな総括に終わった。それで良しとするならば、菅総理が政治リーダーとしての適性を欠くために民主党は議席を失った事になる。菅総理の責任が問われる総括なのだが現実はそうならない。総理の首をコロコロ代えて良いのかという話になる。これでは何のための総括なのかが分からない。だから緊張感のない政治になる。

鳩山・小沢時代の「政治とカネ」と「普天間」が敗北の原因だと言うのなら、それを総括すれば良かった。以前から私が指摘しているように「政治とカネ」は民主党政権に対する官僚権力からの攻撃であり、「普天間」は民主党政権にとってアメリカという権力との戦いである。政権を取れば当然に予想された二つの権力と民主党は対峙したのである。

かつて政権交代のない時代、自民党政権が戦う相手は野党ではなく官僚とアメリカだった。勿論相手を「敵」と呼ぶ事はないが、最も知恵とエネルギーを要する相手であった。そのため自民党政権は時として野党と水面下で手を握り、力を結集して自らの立場を有利に運ぶ算段をした。政権を握った民主党がこの二つの権力と対峙するのは当然であり、政権にいる限り戦いは続くのである。従って「政治とカネ」と「普天間」では党全体が認識を共有する必要がある。しかしそういう作業が行われた様子もない。

もっと問題なのは初の予算委員会である。民主党政権は開く気など無かったろうが、「ねじれ」になって開かざるを得なくなった。そのせいか見事なまでに訳の分からない議論に終始した。衆参合わせて4日間、菅総理は何を聞かれても何も答えていない。昔の自民党単独政権時代に「言語明瞭、意味不明」の答弁が優等生とされたが、その意味で菅総理はまさに優等生中の優等生だった。

野党から考えを質されても、「野党の考えを聞いた上で検討する」と言うだけである。「ねじれ」だから自分の考えを言ったところで通らない。全ては野党の言い分を聞いてから決めると言う訳である。これに対して野党は「政権が考えも出さないのに野党から案を出せる筈がない」と応える。まるで「後出しじゃんけん」の競争みたいな議論であった。

菅総理が一つだけ力を込めたのは「財政健全化に不退転の決意で臨む」と言う事である。そこで「総理の評価は歴史が決める」と大見得を切った。ところが言葉とは裏腹にそれを言う菅総理の表情に力がない。目が虚ろなのである。予算委員会を通してこれほど張りのない表情の総理を見るのは初めてだった。

そしてもう一つの問題は野党自民党である。政権交代を実現する野党になり切れているかと言えばとてもほど遠い。民主党の弱点をつついているだけでまるで昔の社会党なのだ。政権交代が繰り返される政治体制において、与党の弱点をつついているだけの野党が政権を取ることなどあり得ない。

昨年の総選挙で国民は自民党政治を拒絶し、民主党の「生活が第一」路線を選択した。仮にその路線がうまくいかなくなったとしても、民主党政治のその先の政治の在り方を提示しない限り国民は自民党には戻らない。いったん実施された民主党の政策を「全てやめて昔に戻す」などと言い出したら、選挙で勝てる筈はないからである。自民党にそうした政策形成の準備が出来ているかと言えばそれも全く見えない。

しかも仮に政権交代を果たしたとしても「ねじれ」は自民党にも付きまとい、衆議院で三分の二を獲得する事などあり得ないから、福田、麻生政権よりさらに弱体の政権が出来るだけの話である。それも理解せずに批判を繰り返すのはやはり政治に緊張感がない証拠である。日本の政治が依って立つ構造を見直さないとこの国は弛緩した状態から抜け出せないのではないか。

3年前に書いた「弛緩国家」で私は最後に「例えばアメリカの核の傘から脱却して自力で生き抜く決意をし、そのために持てる力の全てを動員して外交を研ぎ澄ます、そんなことでもしない限りこの国は永遠に弛緩したまま朽ち果てていくのではないか」と書いた。今年の8月6日に広島の秋葉市長が「核の傘からの脱却」を訴えたのに対し、菅総理は「核抑止力は引き続き必要だ」と述べただけであった。
 

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コメント
 
01. 2010年8月09日 10:38:17: VErS8w1yls
>「政治とカネ」は民主党政権に対する官僚権力からの攻撃であり、「普天間」は民主党政権にとってアメリカという権力との戦いである。政権を取れば当然に予想された二つの権力と民主党は対峙したのである。政権を握った民主党がこの二つの権力と対峙するのは当然であり、政権にいる限り戦いは続くのである。
>従って「政治とカネ」と「普天間」では党全体が認識を共有する必要がある。しかしそういう作業が行われた様子もない。

まさにおっしゃる通りです。
ここを総括できない民主党は、お子様政権のままごと遊びだ。


02. 2010年8月09日 14:52:43: P3j1fw4uIo
日本人はなにも考えてない。意見というものはまったくない。
日本人は他国のものを抵抗なく取り入れ、日本的に発展させることには長けている。
なにが日本的というのは日本人の間では議論ないし何となく意見が一致するらしい。
しばしば日本人は、「私はこう思う」ではなく「日本人はこう思う」という変な言い方をする。
日本人は外国人に不合理な恐怖感を持っている。より一般的に「他者」を非常に恐れる。
論理も議論もなしに不可解な仕方で意思を共有し、集団でて固まって暮らしているゾンビのような人種である。

日本人は普通の人間ではない。なんだか分からない、特殊な人種である。


03. 2010年8月10日 16:31:49: GVHiOtJRs9
日本人は、人類とサルの中間の生物種でしょう。

人類との違いは「事実を確かめず見聞きしたことを雰囲気で記憶するため、テレビと現実の区別がつかない。」、サルとの違いは「言葉を話し、文字を書く。」です。


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