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平成22年7月26日(月)発売
小学館 (通知)
〈徹底検証 大新聞は国民の敵だB〉
「鳩山政権バッシング」報道の真の標的は「放送法改正案」だった
国民資産2兆4000億円の電波帯を「不当占拠」する「メディア財閥」を解体せよ
「癒着構造を断ち切れ」「既得権益を許すな」とは、メディアが官民の間に横たわる腐敗を追及する際の常套句だ。しかし、「公共の電波」をタダ同然で占有し、莫大な利益を上げ続けてきたテレビ局、そして彼らの大株主として電波利権の維持を図ってきた大新聞で構成される「メディア財閥」こそ、国民の知る権利と情報・通信インフラの有効利用を阻害する巨大な既得権益集団である。
『新・電波利権』(アゴラブックス)の著者で経済学者の池田信夫氏がメディアの二枚舌を暴く。
*
2011年7月24日の「地デジ」完全移行まで、いよいよ1年を切った。
一連の地デジ化政策が推し進められてきた理由は、「有限な資源である電波を有効利用するため」である。
「電波」は電波法で「300万メガヘルツ以下の周波数の電磁波」と定義される。周波数の違いに応じて中波、短波、VHF(超短波)、UHF(極超短波)などに分類され、テレビやラジオなどに使われてきた。
日本では、電波は政府によって割り当てられ、無料で免許が与えられる。まず政府が特定の周波数帯をどのような用途に使うかという「分配」を決め、その中で利用可能な帯域・出力・用途を勘案して免許の「割当」を行なう。
中でも、アンテナ1本で半径数`にも届き、受信機も小さくて済むUHF帯は、もっとも使いやすいことから「プラチナ・バンド」と呼ばれ、その大部分はこれまでテレビ局の独占状態にあった。
しかし、いまや国民が1人1台を持つまでに普及した携帯電話も、使用する周波数はテレビと同じUHF帯。有限である電波は飽和状態になりつつあるのだ。
アナログよりも多くの情報を圧縮して送信できる地デジへの移行は、電波の再編のために必要な措置である。空いた周波数を携帯電話事業など、他の用途にも活用するというわけだ。
しかし現実には、当のテレビ局によって、電波の有効利用という目的が骨抜きにされている。
例えば、UHF帯の770〜806メガヘルツの帯域には、放送局基地に向けビームのように直線的に飛ばすFPU(フィールド・ピック・アップ)というテレビ中継のための業務用周波数帯が、地デジ移行後も居座る予定だ。FPUは遮蔽物があると使えない不便なもので、現在では通信衛星や光ファイバーで代替され、ほとんど使われていない。実際の利用実績は、月に数十時間程度だ。
しかし、このFPUが使用する36メガヘルツ分は、テレビ局以外にとっては大変に貴重なものだ。例えば、携帯電話会社のソフトバンクモバイルは、同じ帯域で2200万人以上のユーザーにサービスを提供している。
また、地デジに割り当てられている40チャンネル分の周波数のほとんどが利用されずに放置されていることも問題だ。これはホワイトスペース(空き地)と呼ばれるが、この空き地の広さは日本の大手携帯電話業者3社の使用枠を合計した広さに匹敵する。
これら余分な電波をテレビ局側が明け渡せば、まさに有効利用となるのだが、彼らは決してそうしない。
テレビ局にとって重要なのは、新規参入を妨害するため、電波の帯域をふさぐことだからである。
民放が儲かるのは、番組が優れているからではない。
無料でテレビが見られるチャンネルが他にないからだ。
そのことを誰よりもよく知るテレビ局は、必要のない電波帯域で、もっと面白いサービスを提供する業者が現われると困るので、使わなくてもそこに居座り続けようとする。
そもそも、デジタル放送を流すのに、100億円以内の設備投資で済む通信衛星を使わず、わざわざ1兆円以上をかけて地上波アンテナを設置させるのにも隠された意図がある。これは、キー局を中心に全国にまたがる既存の民放放送ネットワークを丸ごと温存するために他ならない。
仮に全国放送が衛星放送で行なわれるようになれば、中継局としての意義を失う地方の民放各局は無用の長物と化す。地デジ移行には「民放ローカル局の救済」という裏の目的が存在するのである。
系列の新聞社も口をつぐむ
免許は無料だが、テレビ局は一応、電波の利用料を国に払っている。ただし07年のテレビ局の電波利用料は総計でわずか34億4700万円。営業収益の総計は約3兆1150億円だから、利益の1000分の1しか負担していない。また、この額は日本の電波使用料の7%にすぎない。90%以上は携帯電話ユーザーが負担している。
日本と違って欧米では、政府による電波の「配給制」が廃止され電波の開放が進んでいる。周波数オークションなどによって、市場メカニズムを導入する工夫がなされている。周波数オークションとは、政府の持っている電波を競売にかけ、最高価格を提示した事業者に売却するものだ。
2000年に行なわれたヨーロッパの周波数オークションでは、新しく付与される電波の全欧での免許に1000億n(約11兆円)もの値が付き、鴨年のアメリカのオークションでは56メガヘルツの帯域が196億j(約1・7兆円)で落札された。
GDP比を勘案して試算すると、日本で地デジに割り当てられたUHF帯の240メガヘルツ分(40チャンネル)は、総額2兆4000億円の価値があると考えられる。
これだけの収入が国庫に入るかもしれないというのに、電波利権に巣食う総務省の電波官僚は、「電波の開放」や「周波数オークション」に踏み込もうとしない。
そこには、電波利権を支えるテレビ・大新聞の「メディア財閥」と、政・官の癒着構造が見えてくる。
テレビ局側は放送免許に関わる役人や政治家に擦り寄り、電波を既得権益にしてきた。資本で繋がった系列の新聞社もこの利権をめぐる談合に加担しているため、これら「電波利権」の問題は一切報道されることはない。
一方の官僚側も、メディアを支配するための武器として、電波を利用している。
免許の配給をチラつかせることで民放各局の生殺与奪の権を握る総務省は、地デジ化の過程でも、何かにつけ民放側に有利な取り計らいをして恩を売り、メディアを飼い馴らしているわけだ。
かつて新聞社・テレビ局の政治部には、記事も書かないのに総務省記者クラブに詰め、官僚から電波政策に関する情報を取ったり、政治家と懇(ねんご)ろになる「波取り記者」と呼ばれる政治部所属の記者までいた。
そんなテレビ・新聞に「第一権力」である霞が関の監視など望むべくもないのは自明のこと。大メディアの本当の姿とは、行政が主導する日本最後の「護送船団」なのである。
民主党はメディア財閥に屈した
その電波利権にメスを入れようとしたのが、昨年9月に政権交代を果たした民主党だった。
先の通常国会では、放送法改正案を提出したが、鳩山政権の退陣の影響を受け、廃案に終わった。この改正案には、@『マスメディア集中排除原則』の法制化」、A『インフラとコンテンツの水平分離』という2つの柱があった。
@は、特定企業による放送局の株式保有制限である。
新聞社の放送局に対する出資などを制限して、「読売新聞と日本テレビ」「朝日新聞とテレビ朝日」といった系列関係を解体し、系列内における言論統制をなくそうというものだ。
Aは、放送施設(インフラ)と番組制作(コンテンツ)をテレビ局という1つの組織で独占する「縦割り」システムを分離し、競争原理を働かせるのが狙い。ヤフーや楽天など放送インフラを持たないサービス業者にも、番組制作に新規参入できる道を開こうとしたものだ。
どちらも電波利権にメスを入れる可能性を秘めた改正案だったが、大メディアは「反対」の大合唱。ただし、われわれの既得権益を侵すので反対≠ニいう本音は口にせず、「当局による放送への不当な介入」や「表現の自由の侵害」などといった理屈で廃案に向けての論陣を張った。
私が聞いたところでは、メディアへの影響力を保持したい電波官僚までもが、「先生、メディアを敵にまわすのはいかがなものか」「この間題の解決には時間が足りません」などと、民主党議員に対して説得をしていたという。
結果的に鳩山前首相の退陣というアクシデントで、改正案は廃案となり、後継となった菅首相は、マニフェストから周波数オークションの検討などを削除してしまった。民主党は、官僚とメディア財閥に屈したわけだ。
が、私にいわせれば、民主党の改正案もまだまだ手ぬるかった。
例えば、新聞社から放送局への出資を制限しても、人的な関係で密接に結びついているため、いまのテレビ・新聞の系列関係は容易に解消しない。テレビ朝日のニュース番組のコメンテーターに「朝日新聞編集委員」を名乗る人物が堂々と出てくる限り、いくら言論の多様性を謳っても出資制限だけの集中排除原則など画に描いた餅だ。
本当の意味で電波利権を解体し、言論の多様性を確保するなら、使用もしていないのに不当に占拠されている電波帯域を開放し、ネットや通信、電機メーカー等も含めた新しいプレーヤーの参入を促すという、国や業態の壁を超えた業界再編が必要なのである。
自分たちに不都合なことに関しては口をつぐむばかりの日本の大メディアが、報道機関として信用されるわけがない。日本の「メディア財閥」に未来がないことは国民がすでに知っている。p-45
(写真あり)
通信・放送行政の改革をマニフェストに掲げた鳩山前首相は大メディアから袋叩きに遭った(上は放送法改正案に反対する自民党議員ら)
(写真あり)
電波利用の新規参入には高い壁がある
(写真あり)
『新・電波利権』著者 経済学者池田信夫
池田借夫(いけだ・のぶお)1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部卒業後、NHK勤務、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学経営情報学部教授、SBI大学院大学客員教授、アゴラブックス代表取締役。
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