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森永卓郎(SAFETY JAPAN)
厳しい時代に「生き残る」には
経済アナリスト 森永卓郎
2010年 7月27日
菅内閣は「危うい」。「日本の反対」で「金融規制強化」の「G8合意」が見送りに。「本家・英国」で「金融バブル」を招いた「第3の道」は「不吉なシナリオ」!
■「第2自民党」に成り下がった民主党
今月(2010年7月)の本コラムでは、先月6月8日に発足した菅内閣および民主党執行部の「危うさ」について論を展開してきた。
振り返れば、6月以降の政治の世界の変転は誠にめまぐるしい。
鳩山由紀夫・前首相と小沢一郎・民主党前幹事長の「ダブル辞任」に始まり、それに続く菅内閣の発足(6月8日)、そして参議院議員選挙(7月11日)での民主党の「敗北」――。
一連の流れを追いながら、改めて実感したことがある。
今月たびたび言及してきたように、前原・野田グループ(前原誠司・国土交通大臣、野田佳彦・財務大臣を中心とする2つのグループ)ら「政権右派」が菅内閣の実権を握ったことで、民主党政権が大きく変質した、ということだ。
菅直人首相の消費税増税発言に象徴されるように、現政権は昨年(2009年)の衆議院議員選挙(総選挙)で民主党が国民に約束した社会民主主義的なマニフェストを覆そうとしている。
政権右派の政治理念はもともと、新自由主義的な政策を推進した「小泉構造改革」と共通するところが多い。
そのせいか、もはや民主党そのものが「第2自民党」に成り下がってしまった感すらある。
■大連立は「国民の選択肢」を奪う暴挙だ!
実際、民主党と自民党がともに参院選で「消費税10%」に言及するなど、両党の政策の違いが分かりにくくなっている。
その上、菅首相が所信表明演説で消費税率引き上げを視野に超党派の「財政健全化検討会議」を設置するように野党側に提案したことに如実に表れているように、民主党はいまや昨年の総選挙であれだけ批判した自民党との「談合」さえ辞さない構えだ。
当然その先には、「消費税問題」「普天間問題」「年金・医療問題」など積年の懸案の一挙解決という大義名分の下での自民党との「大連立」が視野に入ってくることも想像に難くない。
参院選での与党(民主党、国民新党)過半数割れによる「衆参ねじれ」で、菅内閣の今後の政権運営が困難になることを考え合わせれば、そうした大連立シナリオはいっそう現実味を増す。
そうなれば、それこそ「国民の選択肢」を奪う暴挙である。
残念ながら、菅内閣および民主党執行部には、常にそうした危うさがつきまとう。なぜなら、彼らには自民党と政治理念・政策上の共通点が多いからだ。
■菅首相は政権右派に近い言動を弄している
こういうと、確かに前原・野田グループはそうかもしれないが、少なくとも市民運動家出身の菅首相はどちらかといえば「政権左派」に属するのではないか、といった指摘もあるかもしれない。
しかし、菅首相が必ずしも政権左派とはいえず、むしろ政権右派に近い言動(少なくとも首相就任後の言動)を弄しており、だからこそ「菅内閣は危うい」という事実を紹介して、今月のコラムを締めくくることにしよう。
先月6月25日にカナダで開かれたG8サミット(主要国首脳会議)でのこと。
周知のように、先のG8サミットの大きなテーマは、先進各国が経済成長と財政再建をいかに図るか、ということだった。
リーマン・ショック(2008年9月)以降、大規模な財政出動で景気失速を防いできた先進各国は、いつ財政を引き締めたらよいのかという共通の悩みを抱えていた。
この議題については結局、経済成長と財政再建とのバランスが大切という無難な結論に落ち着いた。
一方で、参加国間の深刻な対立によって合意ができなかった議題もあった。
世界的な金融規制に関する議論がそれだ。
■欧米は金融規制強化にいち早く舵を切った
そもそも、世界経済を深刻な不況に追い込んだ金融危機は、投機マネーが生み出したバブルとその崩壊がもたらしたものだ。
だからこそ、投機そのものを抑えなければ、世界経済は再び危機に直面しかねない。
欧米諸国は、いち早く動いた。
サミットの3日前、6月22日に、英仏独の3カ国は、新たな銀行税を導入して金融機関が破綻したときの処理費用を負担させるという共同声明を発表した。
先の金融危機では、各国とも経営難に陥った銀行の救済・破綻処理のために多額の公的資金を投入した。3カ国の共同声明には、今後そうした事態を避ける狙いがある。
裏を返せば、各国政府は銀行側に投機の失敗などで経営難に陥らないように経営上の圧力をかけているわけだ。
同様に、米国もサミット当日の6月25日、銀行による投機を原則禁止するとした金融規制改革法をまとめ上げた。
そのため、欧米諸国は当然、G8サミットでも金融規制の強化で足並みをそろえていた。
ところが、あろうことか、日本が金融規制強化に反対して参加国間の合意ができなかったのだ。
■菅首相がG8サミットで放った「KY発言」
実際、菅首相は6月25日のメルケル独首相との会談でも、こんな趣旨の発言をしている。
「金融規制は各国の実情に即して議論すべきだ。経済への影響にも配慮する必要がある」
要するに、日本には欧米と同様の金融規制を行うつもりはないし、その実施を日本に強制しないでもらいたい、と述べているに等しいのだ。
金融危機とその再発防止策(金融規制強化)に関する各国指導者と菅首相との認識の違いをこれほど如実に物語るものはなかった。
米国のオバマ政権をはじめとする各国政府はいずれも、自国の金融界の強硬な反発に遭いながらも、危機再発防止のために金融規制強化を断行しているのだ。
そうした中で、ひとり菅首相だけが日本の金融界(ひいては財界)におもねるような発言(場の空気を読めないKY発言とでもいおうか)をしているのは、どういうことか。
これでは、自民党政権の首相と何ら変わりがないではないか。
菅首相が市民運動家出身であれば、本来なら率先して(市民生活を脅かす金融危機の再発防止のための)金融規制強化に取り組むべきではないか。
■小泉内閣が誕生したとき以来の「嫌な予感」
菅首相はいつから「市民派」から「財界寄り」に転向したのか。
それとも、菅首相は元来、巷間言われているような「野心家」であり、権力を握るためなら政治理念・政治姿勢を180度変えることすら厭わないマキャベリスト的な政治家なのか。
実は、菅首相が「第3の道」を唱え始めたときから、私はすごく嫌な予感がしていた。その嫌な予感は、小泉内閣が誕生したとき以来のものだ。
周知のように、「第3の道」とは、英国でブレア元首相率いる労働党政権が誕生したときに、盛んに唱えられた政治スローガンだ。
一言で言えば、新自由主義的でもなく社会民主主義的でもない政策の追求・遂行である。
ところがブレア政権は、表面的には新自由主義政策を推進したサッチャー政権を否定したかのように見えて、実のところは同政権と類似の政策をとっていたのだ。
その結果、英国では製造業が衰退する一方で金融バブルがみるみる膨らみ、後任のブラウン政権下では国家税収の3割近くを金融業が占めるまでに至った。
■「本家・英国」と同じ轍を踏まないことを祈る
この2代の労働党政権下(の大部分の期間)で英国経済は好調を維持し、ブレア政権が提唱した「第3の道」は一見うまくいったかのように映った。
しかし、水面下では金融バブルの矛盾がどんどん積み上がり、その矛盾が一気に噴き出したのがリーマン・ショックだった。
そして、リーマン・ショックで大打撃を受けた金融業に代わる「牽引役」が見当たらないため、英国経済はいまやエコノミストらの間で先行き不安視される存在にまでなっている。
前述の菅首相のG8発言も念頭に置くと、日本の菅首相率いる民主党政権と英国のブレア元首相率いた労働党政権とは、なにやら共通するところがあるのではないか。
もっとも、菅首相自身、英国の政治に範をとっているわけだから、そうなるのは当然といえば当然なのだが……。
いずれにせよ、菅首相の目指す「第3の道」が本家・英国と同様の結果(惨状というべきか)を招かないことを祈るのみである。
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