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平成22年7月26日(月)発売
小学館
大新聞は国民の敵だ@
「消費税増税キャンペーン」各紙社説の「嘘」「変節」「詭弁」
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「社会の木鐸」の音色がおかしい。権力に擦り寄り、国民に負担を強いる政策の片棒を嬉々として担ぎ、自らの「利益」だけlは死守しようとする様は、もはや「権力の監視」を担う役割を放棄したと見るしかない。大新聞の国民裏切り行為を徹底検証する──。
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参院選で「消費税10%」掲げた菅民主党が大敗すると、大新聞は慌てて「それでも増税は必要だ」キャンペーンを展開している。
興味深いのは、その記事がコピー&ペーストしたかのように同じ論調なことだ。
朝日は 〈民意は、菅首相率いる民主党政権に退場を促すレッドカードを突きつけたのだろうか。(中略)そうではないと私たちは考える〉 としたうえで、〈消費税から逃げるな〉(7月12日付)と結論づけた。
〈参院選の敗因は、首相が消費税率引き上げに言及したことではない〉(読売7月13日付)
〈消費税論議についても私たちはこれで立ち消えになっていいとは思わない〉(毎日7月12日付)
日経も 〈国民生活を安定させるには(中略)消費税などの増税が欠かせない〉(7月13日付)とし、産経はついに「新聞」を主語にして、〈各紙は概ね、菅首相があえて増税を打ち出したこと自体は評価する〉(6月28日付)と書いた。
やたらと「私たち」「各紙は」というキモチ悪い書き方をしているのは産経ばかりではない。自由な言論機関のはずの新聞が「みんな同じ」であることを誇る感覚は到底理解できない。
写真あり
財務省はメディア懐柔に必死(野田佳彦・財務相)
いつから大新聞は「増税宣伝機関」になったのか。
かつて橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げた際、各紙は厳しく批判したはずだ。
朝日は 〈消費税の引き上げは(中略)景気への悪影響を避ける工夫を併せて示したうえで、国民の理解を求めるのが順序〉(96年5月12日付)と待ったをかけた。
毎日も勇ましかった。当時の自民党政権が 〈予算の食い荒らし〉 をしていると批判したうえで、そのしわ寄せが 〈消費税の引き上げであり、医療・年金などの負担増であり、(中略) つまり国民の苦しみのみ、なのだ〉(96年11月30日付)と書いた。
当時から消費税増税論を展開していた読売でさえ、消費税増税の翌年、〈働けば働くほど所得税に苦しめられ、買い物をするたびに消費税に苦しめられているのに、景気は一向によくならない〉(98年11月28日付)と庶民の苦しみを書いた。
「われら」「各紙」は、消費税増税がどんな結末を招くのか、よく知っているのである。彼ら≠ヘ、「当時と今では財政状況が違う」というかもしれない。しかし、税法学の専門家、湖東京至・前関東学院大学教授はこう語る。
「消費税増税は景気悪化を招き、国民の生活を苦しくさせる上に、税収増にも財政再建にもつながりません。
それは橋本政権当時も今も変わらない。国の財政が厳しいから増税はやむを得ない、というマスコミの論理は詭弁です」
そのなかにあって増税反対の論陣を張ったのは、なんと米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)だった。7月6日付社説で、
〈(消費税増税のl)議論を今、強いるのはおかしい。デフレにあえぐ日本経済は消費拡大を必要としている)と指摘したうえで、肥大化した政府の無駄を削り、規制緩和を進める必要を説いている。
日本の大メディアにはそんな当たり前の論調がまるでなく、各紙横並びの増税礼賛記事が紙面を覆っているのは、背後で霞が関の振り付けがあるからだ。
「不確実な試算」で記者を洗脳
ある大新聞のベテラン経済部記者は、参院選さなかに財務省の中堅官僚から1通のメモを見せられた。表題はなく、箇条書きで、
◆日本の財政の現状
◆ギリシャの財政破綻
◆各国との債務残高比較
◆欧州諸国の間接税(消費税)の税率比較
◆消費税率(3%、5%、7%引き上げ)ごとの財政寄与度
◆国内経済(GDP)への影響
──などの項目があり、表などの資料も付いていた。
そして財務官僚はこう付け加えたという。
「いま財政再建に手をつけないと、日本経済は一層の混乱に陥ります」
経済部記者は、消費税を引き上げた場合、景気に悪影響を与えて税収は増えないのではないかという経済学の常識的疑問をぶつけた。
「確かにデフレの状況で税率を上げても効果は薄い。
しかし、日本経済はリーマンショックから回復して出口政策を取る時期に来ている。近々、日銀も今年度の成長率見通しを上方修正するはずです。実質成長率は2%台に乗るでしょう。成長の中の税率引き上げであれば、マイナスは吸収できる。だから今しかない」
財務官僚は明快に言い切った。「必要な資料は後ほどメールします」といい、要点解説をつけた関連資料が送られてきた。
財務官僚が「消費税を増税しても景気への影響はない」とした根拠は、昨年6月23日に内閣府がまとめた試算だった。
『中長期の道ゆきを考えるための機械的試算』と題するレポートで、2011年から消費税をそれぞれ3%、5%、7%引き上げた場合の日本経済と財政への影響をシミュレートしたものだ。
試算の結果は、消費税率を5%引き上げた場合、経済が順調回復、急回復の両シナリオともに、日本の成長率は消費税を上げない時とほとんど変わらない、つまり増税による景気への悪影響はないことになっている。
折しも、財務官僚が経済部記者に予告したように、日銀は7月15日、10年度の実質経済成長率見通しを従来の1・8%から2・6%に上方修正した。 これは内閣府の試算では「経済急回復シナリオ」で想定されている数値(2・4%)を上回るものだ。財務省、日銀が一体となって「経済急回復」を演出し、消費税増税の世論づくりに懸命になっていることが窺える。
しかし、専門家の間からは、試算そのものに疑問の声が上がっている。元経済企画庁審議官でマクロ経済分析の権威、宍戸駿太郎・筑波大学名誉教授が語る。
宍戸氏は消費税率を5%引き上げれば5年目にGDPが約45兆円減少するという試算をまとめている。
「国内の代表的なシンクタンクの多くは私と同じく増税が経済成長にマイナスという試算を発表している。
内閣府の試算だけが違う結果なのは、悉意的な経済モデルを使っているからといわれても仕方がない。政府やメディアがそうした試算で増税の影響はないと判断するのは危険です」
ちなみに、内閣府のレポートにも、「ここで示す展望は、種々の不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある」と但し書きがあるが、新聞は一切報じていない。
官僚が「講師」を務める勉強会も
メディア対策は現場の記者だけにとどまらない。
財務省は1か月に1度程度の割合で事務次官と各社の論説委員・解説委員との「論説懇」、さらに局長・審議官クラスと経済部キャップとの懇談会などを定期的に行なっている。また、有力な経済評論家は、やはり局長や審議官が分担して個別に会合を持ち、「ご説明」を行なう慣習を続けてきた。
会合は庁内以外にレストランなどでも行なうが、その費用は多くの場合、財務省持ちである。時には、政治家がスポンサーとなって高級レストランで記者と勉強会を開き、財務官僚が講師役に呼ばれて財政問題をレクチャーするといったケースも珍しくない。官僚と大マスコミが財務省機密費(税金)≠ナ飲み食いしながら増税の談合をするなど、ブラックジョークにもならない。
「重要なのは消費税増税をいかに社の方針として掲げてもらうかだ。5大紙はじめメディアの経営トップとは事務次官や主計局長が会合をもって、必要性を説いてきた」(財務省主計局官僚)
読売新聞が先陣を切って今年5月に「消費税10%」の緊急提言を打ち出すと、自民党がそれに枕き、その後、菅首相が、自民党も読売もいっているから怖くない≠ニ「10%」公約を掲げた。その背景には、こうした周到な根回しがあったわけである。
新聞に登場するコメンテーターも、財務省御用達の学者ばかりだ。 その代表格が石弘光・放送大学学長だ。小泉政権時代に政府税制調査会会長を務めた増税論者で、財務省の信頼がとくに厚いとされる。石氏は参院選前には、
〈最も罪が重いのは無駄を排除すれば必要な財源を確保できるとし、消費税率引き上げなど正当な政策と真正面から向き合おうとせずに、逃げ回ってきたことだ。
いわば奇策に終始し、政策の王道を歩いていない〉(フジサンケイビジネスアイ6月16日付)と、これまでの民主党政権を批判。増税が「正当な政策」で、無駄の排除は「奇策」だという、まさに霞が関に都合のいい論理を展開してきた。
同氏は参院選後には読売新聞の「どうなる菅経済政策」という記事(7月19日付)で、「消費税率の引き上げについて、広く問題提起をしたという意味では成功だった」とコメントしている。
大手紙の経済部の幹部は、「記者の間にも消費税増税キャンペーンに疑念を抱いている者は多い。が、増税に慎重な学者を登場させようとしても、社の上層部の判断で、財務省に近い学者の評論を載せるように指示が出る」と打ち明ける。
大新聞の増税キャンペーンは紙面づくりからコメンテーターの人選まで、財務省にコントロールされているのである。
(写真あり)
小泉増税路線を推進した石弘光氏が復活
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