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http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/teigen/te100727.htm
伊井哲朗・コモンズ投信社長
子ども手当てのコンセプトには賛成
この6月から、「子ども手当」の支給が始まった。実施に至るまで、賛否両論さまざまな議論があった。政府(厚生労働省)は「日本の少子高齢化の進行を緩和するため、次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するという観点から実施する」と導入理由を説明している。財源などの議論は残るものの、子育てを未来への投資として、次代を担う子どもの健やかな育ちを個人の問題とするのではなく、社会全体で応援するというコンセプトには、賛同できる。
また、国際比較では日本における子どもの貧困率は、OECD諸国平均より悪くなっており、片親の子どもの貧困率にいたってはOECD諸国中最低だ。この点からも、何らかの対策が必要なのは明らかだ。
一方で、国民への各種アンケートみると、「子ども手当は、将来の教育資金を考えて貯蓄にまわす」という答えが半数以上を占めている。それもそのはずで、文部科学省などの資料をみても子ども一人が小学校入学から大学卒業までに必要な教育資金は、全て公立の学校に通っても800万円程度、全て私立に通うと2000万円程度かかる。この現状を考えると、親が子どもの将来の教育資金を確保したい、と考えるのは当然だ。子ども手当で支給される現金は、貯蓄や投資にまわり、すぐには消費されないだろう。
さて、親が子どもの将来をサポートするために、資産形成したいと考えるのは、もちろん、日本に限ったことではない。そこで、多くの国民が長期投資により手堅く資産形成を行うよう、ユニークで先進的な施策の例がある。それが、英国のチャイルドトラストだ。ここでは、「チャイルドトラスト」と「子ども手当」との対比をし、前者のメリットを確認する。われわれは、日本でもこうした制度を導入することを提言したい。
18歳までに資産形成させる英国チャイルドトラスト
チャイルドトラストは、次のような制度である。
2005年4月、英国政府は、2002年9月以降に誕生した全ての子どもを対象にチャイルドトラストを導入した。政府の公式見解では、導入の狙いとして以下の4点をあげている。
1.国民が貯蓄や投資の利点を理解するのを手助けする
2.親子で貯蓄の習慣を身につけて金融機関と付き合うことを推奨する
3.イギリスの全ての子どもが大人になった時点で金融資産を保有しているようにする
4.金融教育を補強する
一方、英国では政府の本当の狙いは、イギリス国民の金融知識を高め、イギリス国民の貯蓄率を高める2点だ、といわれている。
では、その具体的な仕組みを見てみよう。
1.親が生後1年以内に子ども向け税制優遇措置(401kの子ども版)付きの口座を開設する(金融機関は、この口座を提供する義務がある)。
2.この口座には、政府が子どもの生後1年以内、7歳の誕生日にそれぞれ250ポンド(約3.5万円)を支給する(所得が一定額以下の世帯には500ポンド)。
3.両親や家族は、年間1,200ポンド(約16万円)までを、この口座に拠出することができる。
4.投資先は、上場会社の株式や社債、投資信託、預金など。運用益に税金はかからない。
5.引き出しは18歳以上になった時のみ行う。
*英国チャイルドトラスト公式サイト(英語) http://www.childtrustfund.gov.uk/
*2010年5月の政権交代により新しく連立を組んだ保守党・自由民主党は、歴史的な財政削減を試み、総額62億ポンドの削減のため、チャイルドトラストファンドの減額も発表した。こどもたちの将来の負担につながる巨額の財政赤字の削減を優先させた。
今を手当てする日本、将来に備える英国
日本の子ども手当、英国のチャイルドトラストは、そもそも、どちらも子育て世帯を支援するためのものである。しかし、そのゴール設定が全く違う。
日本の子ども手当は、ただいま現在の子育て世帯の費用負担を軽減することをゴールにしている。これと対照的に、英国のチャイルドトラストは、子どもが18歳になり、社会に飛び立つ時に、一定の資産を用意しておき、進学や独り立ちなど、人生の次のステップにおいて自身で行動を起こせるだけの基盤を提供することがゴールだ。さらに、成人になるまでにある程度の金融知識を身につける環境も提供している。
「今」の助けを国が直接するこども手当、「将来」のための家庭内の自助努力を手助けするチャイルドトラスト。そもそもの目的は同じだったはずだが、発想の厚みが違い、実効性も違うように、われわれは感じる。
日本の年金制度は、自主的な運用が求められる確定供出型にシフトしている。日本では、GDPの約1・6倍、おおよそ800兆円が預貯金にまわっている。われわれは、個人金融資産を直接投資にシフトさせ、活性化させることこそが日本の経済・資本市場にも躍動感を与えられると考えている。
そのためには、国が現金を配って家計のやりくりを手助けするという発想の政策から、子どもの将来の教育資金を育み、金融リテラシーを向上させる日本版チャイルドトラストの導入に政策を転換してはどうだろうか。
微力ながらわれわれコモンズ投信では、民間から出来るイノベーションとして、英国チャイルドトラストの発想をベースにした「こどもトラスト」をスタートした。
0歳から15歳以下が加入でき、初回入金時のほか、子どもが3、5、7歳になった時に10から25万円の残高があれば3000円のボーナスを出すのが特徴だ。賢い資産形成を学び、子どもが社会にはばたくための基盤を確保する親子がもっと増えるよう、尽力していきたい。
(2010年7月27日 読売新聞)
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