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昨年七月一三日に成立した「改正臓器移植法」が今月一七日、施行された。施行日には、都内で、(社)日本臓器移植ネットワーク主催による説明会が開催された。同ネットワークは、国が唯一認めている臓器あっせん業である。
施行にあたって説明を受けたのは、臓器移植推進策をとる国(厚生労働省)側の表現によると「臓器提供施設」(大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定・日本脳神経外科学会の専門医訓練施設、救命救急センターとして認定された施設、日本小児総合医療施設協議会の会員施設)の医療従事者たち。つまりは現場の医師たち約四〇〇人であった。
「改正臓器移植法」では、「脳死」の位置づけと対象が改正前とは根本的に異なっている。臓器移植法第六条第二項「脳死した者の身体の定義規定」から「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除したため、「脳死は一律に人の死である」との報道がされた。
これを「誤解」とする厚労省は改正法解釈上の留意点として、今年一月一四日付で全国自治体に通知文書を出している。
「『脳死を一律に人の死としたものではないか』との論議があったが、脳死が人の死であるのは、改正後においても改正前と同様、臓器移植に関する場合だけであり、一般の医療現場で一律に脳死を人の死とするものではない、というものであるので、十分留意の上、関係者への周知、広報に当たっては、配意をお願いしたい」
しかし、あわてて出したこの文書は詭弁にすぎず、混乱を深めるだけであった。すでに厚労省は、実質、小児から大人まで全ての国民が、脳死判定、臓器提供の対象となりうる「脳死は人の死とする」と解釈できうる指針を打ち出していたのだから。
ところで、実施にあたって国が詳しい指針(ガイドライン)をまとめたのが六月二五日。改正臓器移植法の施行日まで、実施一カ月を切っていた。国(厚労省)が自治体の担当者を集めて、説明会を開いたのが七月一五日。これは臓器提供普及のお願いのようなものだったという。実施日直前に、当事者たちを集めての説明会とは、まるで一夜漬けのようなものである。主催が臓器あっせん業の日本臓器移植ネットワークというのも「はじめに提供ありき」である。 ある救命救急センター長は「ガイドライン」の位置づけとその意味について疑問を呈していた。ともあれ、ガイドラインに従って説明は進められた。手順はこうだ。
救命救急センターに頭部外傷の瀕死の患者が搬送されてくる。緊急手術などあらゆる治療を施しても、脳死状態に陥った。患者は「脳死判定・臓器提供」に対して何の意思表示もしていなかった。主治医の判断で家族に「脳死判定と臓器提供」の話を持ちかける。家族が承諾すればネットワークに連絡し、移植コーディネーターを呼ぶ。詳しい話はコーディネーターが行なう。
現在、ネットワーク所属のコーディネーターは全国に二五人。国の資格をもっているわけではない。日本移植学会の希望的推計の如く、臓器提供がいっきに増加すればパンク状態になる。その位置づけや資格などについて二〇年来論議されてきたが立ち消えになったままだ。一連の作業は、救命に徹する現場の医師にとっては煩雑きわまりなく、本来の「いのちを救う」という仕事に支障をきたすと危惧する声も多い。まして小児の脳死は限られた施設でしか診ていない。ガイドラインでは二回目の判定は二四時間後、果たしてそこで生死を区切れるのか。回復力の高い小児の判定は難しい。長期脳死者の症例も小児が多い。
この日論議が集中したのもこの問題だった。都の調査ではすでに実施可能という施設は約一%。小児科医も救急医も不足している。WHO(世界保健機関)のイスタンブール宣言(渡航移植の禁止など)の誤解を楯に政治的決着を急いだ決定は、過酷な医療現場にさらに負担を押しつけることになる。
これひさかつこ・文筆業
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