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野中広務氏の公共の電波を使った
"華麗なる勘違い発言"に反論す
【第136回】 2010年7月29日 上杉隆 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/8903
永田町を取材していると時々、理解不能な人種にめぐり合うことがある。その種の人々は時に微笑ましくもあり、時に呆れてしまうこともあるが、まぁ、いずれにせよ、同じ人間のやること「変人」ぶりに驚いてもいられない。
野中広務、森喜朗、安倍晋三の3人の共通点は、物忘れと思い込みの激しいことにある。何らかの病気であるならば仕方ない限りだが、不幸なことに、この3人は今なお政治家(ひとりは評論家)として国政に関わっている。被害が、国民や国家に及ばないことを祈るばかりだ。
この3人の健忘症と思い込みの被害者のひとりが、何を隠そう、この筆者である。
きのう(7月28日)、関西テレビの情報番組「ニュースアンカー」に野中氏が生出演した。そこで、またしても野中氏の健忘症と華麗な勘違いぶりが発揮されたのだ。
〈私はね、この上杉さんというのは無責任だと思う。あの人、私に、いっぺんもですね、インタビューなんかしたことがないですよ。それに、その「週刊ポスト」とか「フライデー」とかこういうところでね、電車のつり革に「野中激白」とかこういうのでですね、みなさん、その中を読んだら、私の名前なんか一回もないですよ〉
これは、評論家の宮崎哲弥氏が筆者と週刊ポスト編集部が取材している「マスコミに渡った機密費問題」について質問した時の野中氏の回答である。
取材依頼を断り続けながら
「取材を受けていない」とは…
安倍氏も同様だが、この3人の共通点は「繰り返しの取材を断っておきながら、取材を受けてない」と強弁する点だ。野中氏は1999年から20回以上、安倍氏に関しては2001年から30回以上、インタビューか取材を依頼しているがすべて断ってきている。せっかくの機会だから、この2人には僭越ではあるが、正しい日本語の使い方をお示ししよう。
その場合は「インタビューを受けていない」「取材を受けていない」と言うのではなく、「取材を断った」「取材を拒否した」というのだ。国会議員であるのだからもう少しきちんとした日本語を使用していただきたい。
http://diamond.jp/articles/-/8903?page=2
ついでに、また、残念なことではあるが、官房機密費について、筆者は「フライデー」に寄稿したことは一切ない。野中氏はなにか大きな勘違いをされているようだが、ぜひとも、よく調べてから発言をしてもらいたい。
さらに、驚くべきは、「野中激白」という「週刊ポスト」の記事についての野中氏の言及部分だ。官房機密費マスコミ汚染問題についての追及キャンペーンの第1回目、「週刊ポスト」にそのような記事が載っていたのは確かである。
だが、それは筆者の記事ではないし、そもそも、筆者はその週の「週刊ポスト」を手に取るまで、一切、その記事の存在すら知らなかったのだ。逆に、手に取った瞬間に「週刊ポスト編集部」に電話して、「大丈夫だろうか、この記事。野中氏の〈激白〉とは言えないんではないか」と、親切にも心配の電話を入れてあげたくらいだ。それはそこに知らぬ間に筆者のコメントが使用されていたということもあるが、その点では野中氏とまったく同感であったのだ。
さて、筆者の記事ではあるが、それは「評論家たちに渡った官房機密費のリスト」というまったくこの記事とは別の記事である。
自分のまったく知らない記事が理由で、公共の電波を使って批判されるのはたまったものではない。ただ健忘と思い込みの激しい野中氏であれば、それも仕方ないのかもしれない。野中氏には、速やかな訂正と謝罪を求める。それができないようであれば、番組で筆者に投げつけた「無責任」という言葉をそのままお返ししようではないか。
昨今の評論家は
物忘れの激しい方が多い!?
さて、野中氏の驚愕の発言はまだ続く。司会者の「取材を受けたことはないんですか?」という問いに対して、こう答えたのだ。
〈ないですよ!顔もみたこともない〉
三宅久之氏ではないが、昨今の評論家はもの忘れが激しい人物が多いようだ。ちなみに1994年以来、野中氏とは何度も顔を合わせている。とくに1999年には名刺交換までしてインタビュー取材もしている。
http://diamond.jp/articles/-/8903?page=3
もしかして、筆者があまりに存在感がないためにお忘れになっているかもしれない。そこで、手っ取り早くその証拠を示そうではないか。
2年ほど前、筆者は「久米宏のテレビってやつは」(毎日放送)という番組の準レギュラーであった。長い収録の最中、筆者の隣には野中氏が座っていた。そこで繰り返し会話を交わしたものだった。
「上杉さんね、いろいろと、がんばっておりますな」
こう話しかけられて、改めて挨拶したのを覚えている。打ち合わせのための控室でも話をした。もちろん放送では筆者と野中氏が一緒に映っている。政治がテーマということもあって、掛け合いもある。
しかし、早とちりはいけない。あれは野中氏ではなく、野中氏によく似た代理だった可能性もある。
幸いなことに今週末の土曜日、TBSラジオの「久米宏のラジオなんですけど」に筆者は生出演することが決まっている。
テーマはもちろんマスコミに渡った官房機密費、VTRよりもより確実な証人である久米氏が司会だ。これは確認してみる必要があるだろう。
さらに関西テレビの番組で、野中氏はこうも語っている。
〈非常にね、あの人がジャーナリストで、あーいうようにね、ポストを通じてこられるというのはね、みんな中身見てください、私の言葉がどこに出ておられるのか〉
そうだ、是非ともみんな中身を見てほしい。筆者の記事がどこにあるのか。
野中氏の妄想は
さらに暴走
さらに野中氏の無責任な妄想は止まらない。
〈都内の電車のつり革にはですね、『野中広務激白』とかみんな私の名前が出てくるんですよ。迷惑至極ですね。やっぱり私はああいう記者の方も自らモラルを持っていただかないと非常に残念に思っております〉
http://diamond.jp/articles/-/8903?page=4
まったく野中氏は非常に残念である。公共の電波で何百万人もの前で話すのなら、事実を確認するくらいのモラルを持っていただかないといけない。繰り返すが無関係の記事で名前を出されて迷惑至極である。
こうしたことは「ラジオ日本」の番組で、「上杉とは会ったこともみたこともない」と言い放った森喜朗氏にもある。その発言の少し前、筆者は森氏の永田町の個人事務所で相対して座り、1時間あまりのインタビューを行っていたばかりだ。
変人たちの巣食う楽しい町
――それが永田町
また自身のHPに「上杉は逃げ回っている」と書いている安倍氏も同様だ。繰り返しの取材依頼にも関わらず、自分が逃げ回ったことは棚にあげて、「一度も取材を受けていない」と話すのである。
門を閉じて、繰り返し、繰り返し、追い返しておいて、「何で会いにこないで、逃げるんだ」と言われても、それは返す言葉もないというものである。また、それを真に受けて自身のブログに書き込む、ヒマな産経新聞の政治記者についても同様だ。そしてまた、さらにそれを鵜呑みにしてウィキペディア等に懸命に書き込む人々――。
じつは、こうした理解不能な「変人たち」がいるからこそ、永田町は楽しい場所なのかもしれない。
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