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2010年7月27日10時00分
日刊ゲンダイ2010年7月24日掲載
●奥の手をなぜ使わないのか
菅内閣が来年度予算の概算要求基準の骨子をまとめたが、そこから見えてくるのは、やはり「財務省主導」である。一般会計の歳出額を71兆円以下に抑えるという方針を掲げたが、この前提がそもそもマヤカシなのだ。
「71兆円の大枠は、過去最大92兆円の今年度予算から、国債の元利払い費約21兆円を除いた額です。菅内閣は『国債の元利払い費は動かせない』と思い込んでいるようですが、実は奥の手があります。元利払い費のうち、利払いは停止できませんが、元金返済に充てる分はストップが可能です。その額は、約10兆円にも及びます」(霞が関関係者)
正確に言えば、「国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止」という方法である。元金返済ストップは、別に奇策ではない。財政事情が苦しい時には、しばしば行われてきた。平成以降でも、89年度と93年度から95年度にかけて停止された。
10兆円もの財源が生まれるのだから、政府・与党で2兆円規模の特別枠をめぐって大モメしているのが、バカみたいな話だ。「子ども手当」などマニフェスト関連の増加分にだって振り分けられる。菅首相は新規国債発行額についても、「今年度の44.3兆円以下に抑える」と大見えを切ったが、その達成もグーンと楽になるのだ。
「実は、元金返済に充てる10兆円も、わざわざ新規国債を発行して調達しているのが現状です。つまり、借金返済のために借金を重ねている。逆に、元金返済分の10兆円を取りやめれば、その分だけ11年度の国債発行額を減らせるのです」(霞が関関係者)
これだけメリットばかりの元金返済ストップに、菅内閣は踏み切る気配すら感じられない。本当に疑問だ。エコノミストの紺谷典子氏は、こう断言する。
「結局、財務省が国債発行額を増やしたいのです。増税による財政再建を狙う財務省にすれば目先の借金が膨れ上がった方が好都合です。消費税増税の“地ならし”に『また、借金が増えた』とアピールするもくろみです。そんな思惑を許す菅政権は、財務省の振り付けどおりに動いているとしか思えません」
みじんもリーダーシップを発揮せず、予算編成の主導権を財務省に簡単に奪われるなんて、菅首相は財務官僚に金玉を握られたも同然だ。
[ 2010年7月27日10時00分 ]
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