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http://diamond.jp/articles/-/8838
来年度予算の概算要求に向けたプロセスが動き出しました。しかし、これまでの動きを見る限り、既に二つの問題点が明確になりつつあるように思えます。このままでは、財務省主導&財政再建至上主義の予算編成となり、来年度の日本経済にかなりの悪影響を及ぼすのではないでしょうか。
政治主導の放棄?
第一の問題点は、既に様々なメディアも報じている“政治主導での予算編成の放棄”です。
菅首相は、予算編成プロセスが始まろうとする段階になって、政治主導の象徴であった国家戦略室の役割を、“経済財政政策の司令塔”から“首相の助言役”へと格下げすることを決めました。
それに対して各メディアが“政治主導の放棄”と非難を始めたところ、菅首相は「内閣官房に新たな部署を設置し、そこで官房長官と政調会長が主導して予算編成を行なうので、政治主導は維持される」と反論しています。
国家戦略室の格下げ自体、随分と無責任な話です。参院選マニフェストの中で、これまでの政権運営の成果の一つとして「国家戦略室の設置による政治主導の実現」と明記しているのに、その舌の根も乾かないうちに突然格下げしたからです。
一説には、仙谷官房長官以下が、荒井国家戦略担当大臣には予算編成を任せられないと判断して、国家戦略室の格下げを菅首相に進言したらしいですが、そんな経緯はどうでもいい話です。それよりも問題なのは、この件に関するメディアや識者の批判の内容が間違っていることです。
国家戦略室の格下げ自体は必ずしも政治主導の放棄を意味しません。どの組織が経済財政政策の司令塔の役割を担うにしても、そこが政治主導を実現するために必要な要件を満たしているかの方が重要なのです。
政治主導の政策決定が成功した例としては、小泉時代の経済財政諮問会議があります。当時、私は竹中大臣政務秘書官としてその運営の中核にいましたが、諮問会議が政治主導を実現できた理由として以下の3つの点が挙げられます。
・ 総理が議長を務め、官僚の横やり抜きで主要閣僚と議論を行い、トップダウンでの意思決定を行なった。
・ 委員の民間有識者が正論を主張することで、政治家だけでは困難な、官僚の小細工や説明を論破し、族議員の既得権益擁護を否定することができた。
・ 議論の内容を公開することで、官僚や族議員の小細工や横暴を牽制できた。
そもそも今までの国家戦略室も、これらの条件をまったく満たしていませんでした。政治主導の実現という取り組みは既に失格点だったのです。新たな組織に司令塔の役割が移っても、おそらくそれは変わらないでしょう。
つまり、今回の格下げと新組織への司令塔の移行は、政治主導の放棄ではないのです。政治主導という理想は既に失敗に終わっており、それを白日の下にさらけ出したに過ぎません。
来年の景気は大丈夫か?
その結果、来年度予算は財務省主導で編成されることになります。政権としてどう取り繕おうと、形式が官房長官/政調会長主導となるだけです。財務省は、財政再建を最優先しつつ与党にも配慮した手堅い予算に仕上げるでしょう。
そこで第二の問題点が出てきます。それは、財政再建を最優先した予算編成で、来年の日本の景気は本当に大丈夫かということです。
来年度予算の政策経費は、今年度とほぼ同じ71兆円に抑える方針のようです。財務省は、その範囲で社会保障費の増加分を賄うべく、他の政策経費に一律10%削減のシーリング枠を設定したいが、多くの閣僚や民主党政調がそれに反対している、という構図が連日報道されています。
もちろんこうした議論は大事です。無駄な政府支出は極力削減すべきですし、その観点からは、子ども手当などの政策効果の薄いバラマキ予算についても同様の見直しが必要です。
ただ、それと同時に政治の側が考えるべきは、来年度予算の規模が今年度と同じで、来年の日本の景気は本当に大丈夫かという点なのではないでしょうか。来年度予算が今年度と同額だと、政府支出は来年度の経済成長に対して中立的となります。来年度は、政府支出は経済成長に貢献しないのです
しかし、日本経済の状況を見ると、今年の1−3月は年率5%という高い成長を達成し、4−6月も良い数字となりそうですが、エコポイントなどの景気対策の効果が切れることもあり、秋以降は景気がかなり減速すると多くのエコノミストは見ています。欧州経済の混乱などを考えると、為替レードは年内に1ドル80円になるという声もあります。景気の先行きはかなり厳しいと考えるべきなのです。
それにも拘らず財政再建最優先の予算編成を行なって、来年の日本の景気は本当に大丈夫か、民主党の重視する雇用を増やすことができるのか、消費税増税の前提条件となるデフレ脱却の道筋がつけられるのか、といった点がもっとしっかり議論されるべきではないでしょうか。もちろん財政再建は必要不可欠ですが、国民生活も同様に大事なのです。
そうした財政と経済を一体的に考え、両方にバランスの取れた予算を編成することこそ、それが国家戦略室なのか別の部署なのかはともかく、経済財政政策の司令塔の役割なのです。
財務省が自らの所掌の財政を最優先に考えるのは当然ですから、財務省主導の予算が財政再建至上主義となるのは当たり前です。経済のことを考えて主張すべき内閣府は非力ですから、財務省に抗うことなど期待もできません。
だからこそ政治主導の予算編成が必要なのに、本来目指すべき政治主導は終焉し、与党の政調が財務省に文句を叫ぶという、過去の自民党時代と同じパターンが繰り返されつつあります。
さらに嘆かわしいのは、民主党の政治家の経済オンチが悲しいまでに露呈されていることです。新聞報道によると、民主党は来年度予算編成に関連して「財政非常事態」を宣言しようとしているようです。雇用など国民のことを最優先に考えるべき政治家が、日本とは前提がまったく異なるギリシャの危機に洗脳されて、財務省に媚びるような主張をして、恥ずかしくないのでしょうか。
しかも、秋以降の景気は厳しいものになる可能性が高いのに、報道では“景気は回復傾向にあるのだから経済危機に備えた予備費は不要”という意見が強まっているらしいです。この認識の浅はかさには、空いた口が塞がりません。
心ある政治家が立ち上がるべき
このように、参院選以降の民主党政権下での政治主導と予算編成を巡る動きはかなり厳しいと評価せざるを得ません。一部の閣僚などからも異論が出始めていますが、民主党は政権与党として今一度初心に立ち返り、何を目指し何を達成しようとしていたかを思い出す必要があるのではないでしょうか。
その意味では、9月の民主党代表選は非常に大事な機会になると思いますので、それを奇貨として正しい政策の議論が行なわれることを切に期待したいものです
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