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http://www.pjnews.net/news/490/20100720_2
【PJオピニオン 2010年7月21日】2006年12月に米国政府が公表した「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」という米国の指令で強行された郵政民営化は反小泉・竹中勢力の奮闘で09年12月に凍結されたが、参院選での国民新党敗北で息を吹き返しかねない。同党と連立を組む最大政党、民主党の真価が問われる。
民主党は今年6月4日、国民新党と「郵政改革法案は速やかに成立を期す」との合意書を交わしたが、国会の会期延長を一方的に拒否して参議院選挙に踏み切った。郵政出身の長谷川憲正氏(国民新)が落選しながらも、枝野幸男民主党幹事長は直後に「(新たな)連立は考えていない」と明言した。
しかし、約束を一度ほごにしている民主党は参院選で議席を10減らし、みんなの党や公明党に秋波を送る。もともと郵政民営化への同調者が多い民主党が数をさらに減らした国民新党にどこまで付き合うのか、支持層にも不信感が広がっている。
政治評論家の森田実氏は15日、選挙結果を総括する講演会で、「郵政改革は6月の通常国会で無理をしても、決着させるべきだった。永遠にこの問題を引きずるのはよろしくない。どこかで決着を付けておいた方がいい」と述べ、憲法59条に定める衆議院の3分の2条項を使ってでも、郵政改革を成就すべきと強調した。
選挙後、国民新党は参院での民主党との統一会派を解消したが、14日の党会見で社民党と政策面での連携に意欲を示した。亀井静香代表は「法案は社民党も賛成し、みんなで作った法案、無修正で通せる」と修正の可能性も否定。公約通り、衆議院での採決に懸ける意思表示ととれる。
衆議院は現在、480人の定員に2人欠員があり、議長は裁決に加わらないため、318議席あれば参議院で否決された法案も再度の可決で成立できる。社民党の7人に国民新党・新党日本の会派と統一会派を組めば、所属議員は11人。これに民主党会派を加えれば、ちょうど318人になる。
15日の森田実氏の講演後のパーティーでは、来賓として訪れた重野安正社民党幹事長と下地幹郎(みきお)国民新党幹事長が会場の隅で話し込む場面があった。記者が重野氏に郵政の行方を尋ねると、「連立を離脱した身だが、あれ(郵政改革)はやらなきゃならんよ」と強い口調で語った。
郵政民営化はエコノミストの植草一秀氏も指摘するように、郵貯・簡保合わせた国民の金融資産350兆円を外国資本に供与するために推進された政策である。民主党がすり寄る公明党・みんなの党は根っからの民営化賛成派だ。公明党は自民党と郵政民営化法案を作った当事者である。
みんなの党の浅尾慶一郎政調会長はテレビ番組で「政府は日本郵政株を100%売らないと言っているが、これを100%売れば少しでも財政再建になる」と公言している。野中広務元衆議院議員は「みんなの党の裏側には竹中平蔵が付いている」と発言している。
なるほど、渡辺喜美代表が口にする「アジェンダ・セッティング」という言葉は竹中氏が輸入したものであり、世界の支配層がビルダーバーグ会議などで各国に命じる政策一覧を指す。これに基づいて、わが国に郵政民営化や大店法廃止をはじめとした規制改革を迫ってきた。
民主党とみんなの党との接近は6月21日、ジャパンハンドラーのジェラルド・カーティスが菅首相に命じたことがきっかけになっている。
インターネット上では、参院選前の消費税論議が郵政問題隠しを意図したものとの指摘がある。菅直人総理による「10%引き上げ」発言は確かに、巨大金融資産の行方を有権者の関心からそらした。「10%」の専売特許について自・民間が争うお芝居の陰で、郵政民営化推進政党がいずれも議席を伸ばした。
今回の参院の結果には、多くの国民が疑いの目を向けている。その中心は、国民新党が1議席も取れなかったことだ。世論調査でも0.0%の数字が宣伝されてきたが、得票も「不自然だ」との声がネット上で絶えない。大統領選で不正選挙を実施し、わが国にも選挙工作をした実績のある米国なら朝飯前のはず。
国民新党が通常国会で3分の2条項を使わなかったのは、亀井代表の美学からに違いない。野党側から委員長解任決議案などが提出されたり、夜間の審議に応じないなど時間稼ぎをされた挙げ句、「衆議院で強行採決」とのマスコミの悪宣伝に遭った。正攻法ながらも、強権的なイメージが浸透するのを避けたかったのだろう。
亀井氏はもはや体裁にこだわらない覚悟があるように映る。かつて党会見で「戦時中、大政翼賛政治に反対した三木武吉(みきぶきち)や中野正剛(なかのせいごう)、鳩山一郎が当時の国民に支持されたか。支持を得ている世論が、後世から見て必ずしもその国の人たちを幸せにしているとは限らないと」と持論を展開したことがある(4月28日)。良き政治とは民意に従うことではなく、最終的に国民を幸せにすることだとの信念がのぞく。国民がどう思っていようと、郵政民営化を見直すことが皆のためになるとの強い思いが。
郵政改革法案成立の約束をした民主党には、野党からの圧力がかかる。森田実氏によれば、秋の臨時国会で参議院本会議に問責決議案が出れば、政権そのものが崩壊するという。賛成する造反組が出て衆議院に飛び火する可能性が大きいからだ。
圧力をかけるのは郵政見直しを阻止したい、かいらい野党勢力だが、国民は見ている。いずれ歴史的な評価の裁きを受けることに。臨時国会での郵政法案の扱いで、民主党が国民を守る政党か否か、その本質が明らかになる。【了】
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