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菅直人首相は、「三つのもの」、すなわち「金、人、国民の顔」 が見えなくなっているのではないか {板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」} 2010年07月19日 17時35分51秒
◆評論家の伊藤肇さんが、著書「現代の帝王学」(プレジデント社刊)のなかで、「総理になると三つのものが見えなくなる」という項目を設けて、なるほどと思わず頷いてしまう文章を書いている。菅直人首相の現状を理解するうえで参考になるので、以下、引用して紹介しておこう。
◆「二・二六事件の時の総理、岡田啓介が『総理になると、三つのものが見えなくなる』といっている。
第一に『金』、職権で思う存分に金が使えるから、金の価値がわからなくなる。
第二に『人』。しらずしらずのうちにとりまきがふえ、総理に気に入った情報しか入らなくなる。その結果は真実が陰に身をかくしてしまう。
第三に『国民の顔』。国民がいったい、どちらを向いているのか、皆目わからなくなる。
『そして、この三つがわからなくなった時、総理大臣は野垂れ死にする』と岡田啓介の断定である。したがって、人間の上に立てば立つほど、『直言してくれる側近』が必要になってくるが、池田勇人は『そのために三人の心友をもて』と口ぐせのようにいっていた。
『三人の心友』とは、『一人はすぐれたジャーナリスト。一人は立派な宗教家。一人は名医』である。『すぐれたジャーナリスト』がなぜ心友として必要か。総理たるもの、耳に快いフォーマルな情報網だけでは不十分で、時には砂を噛むような思いも耐えねばならぬインフォーマルな情報網をもっていないと判断を誤るからである」
◆菅首相は、自らの失言を恐れて番記者でさえ、近づけるのを嫌って、いわゆる「ぶら下がり」を避け続けている。もちろん、若いころから親しくしている「すぐれたジャーナリスト」を何人か手持ちにしているのであろうが、日々生起している情報は、案外と番記者から得られるものである。それを避けているようでは、情報に疎くなる。ましてや「情報真空地帯」と言われている首相執務室にいたのでは、真実の生情報を手に入れることは難しい。
◆菅首相は、民主党のマニフェストの第二番目に掲げていた「国家戦略局構想」を諦め、首相に提言する単なるシンクタンクを直属機関として設けることを決めたという。重要政策は、首相と仙谷由人官房長官、野田佳彦財務相、玄葉光一郎政策調査会長(公務員制度改革担当相)の4人で検討し、決定するそうである。
「国家戦略局構想」は、民主党の目玉政策の一つだったはずである。それを下ろすとは情けない。消費税アップ発言を詫びる以上に幻滅である。日本の偉大な政治家と言われる吉田茂、池田勇人、中曽根康弘の三人の首相は、いずれも何人かの「すぐれたジャーナリスト」に囲まれ、側近の政治家に加えて大物財界人や高級官僚、学者らの支援を受けて、日本を経済大国に押し上げた。
これらの先人たちに比べて、菅首相は、いかにも貧弱である。こんなことで、煮ても焼いても食えそうにない小沢一郎前幹事長に勝てるのであろうか。疑問である。
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