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平成22年7月5日発売
小学館 (転載承諾済み)
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大新聞・テレビでは絶対わからない「空きカン内閣」の堕落A
何度でも言う!「財政が厳しいから増税やむなし」は大嘘だ
「消費税5%分」12兆円の「特別会計予算」が毎年「役人の隠し金庫」に消えている
消費税1%引き上げで得られる税収は年間2・4兆円。菅政権と財務官僚が推し進める5%増税は、「毎年12兆円」を国民の財布から奪い取ることを意味する。
しかし、官僚たちは、これほどの痛みを国民に強いる一方で、毎年、同額のカネを隠し金庫にせっせと移し替えている──。
*
菅直人首相は「税収が減ってマニフェストの財源がない」と国民に泣きついて消費税増税に取りかかった。
今年度の政府予算は過去最大の92兆3000億円。
そのうち税収は37兆4000億円で、不足分は借金(国債発行)などで賄っている。
数字だけを示されると財政は火の車のように思える。
しかし、国民に財政難をアピールするために見せられる金額は消費税、所得税、法人税などからなる「一般会計」の話だ。政府には「特別会計」という別の財布≠ェあり、こちらは年間予算総額176兆円(純計)に達し、一般会計よりはるかに多い。
特別会計(特会)とは、年金保険料(年金特会)、雇用保険料(労働保険特会)、道路や空港整備に使われるガソリン税や空港税(社会資本整備事業特会)、自動車の自賠責保険料(自動車安全特会)など、特定の目的のために国民が支払う税金・保険料を管理している会計で、全部で18ある。
厚労省の役人が年金のカネで役所の施設にゴルフの練習場をつくったり、国交省の役人がガソリン税で公用車を買いまくるなど無駄遣いの温床となってきたことでも知られる。
「霞が関の埋蔵金」という言葉を覚えている読者は多いだろう。各省の役人は特会の資金の流れを複雑にして実態をわからないようにしてきたが、財務官僚の高橋洋一氏(現・嘉悦大学教授)が数十兆円もの 眠った財源≠発掘し、本誌に証言した。発掘された埋蔵金のざっと30兆円あまりは自民党の歴代政権が景気対策などに使い、民主党政権になると、藤井裕久・元財務相が「埋蔵金は残っていない」と発表した。
掘り尽くされたと思わされていたのである。
とんでもない。この「特会予算」こそ、霞が関の役人たちにとって最後の聖域であり、いまだに巨額の財源が隠されているのである。
ここに、財務省主計局が作成したA4判の資料がある。今年初め、民主党特会改革チームの要請に基づいて提出された資料の一部だ。
〈一般会計、特別会計及び政府関係機関の不用額〉
と題された文書には、06、07、08年度の特別会計の「不用額」がそれぞれ、
●10兆5308億円
●10兆8259億円
●11兆7625億円
と記されている。
「不用額」とは、事業実施のために予算計上されながら、年度内に使いきれなかったカネを指す。国民から見れば明らかに「不要」なカネだが、官僚にとってはあくまで「たまたま用いられなかったカネ」として「不用」という文字が使われる。
一般会計は財務省主計局の厳しい査定を受けるため、使い残しがあれば翌年度は予算が削られる。その点、独自財源を持つ特会は各省庁が甘く査定し、必要額を大幅に上回る予算が計上されている。そのため、年間12兆円もの巨額の財源が使われずに残され、「埋蔵金」として年々積み上がっていたのだ。
菅首相が国民に増税を求めている消費税5%アップで得る税収はこの不用額と同じ年間12兆円だ。この余りガネを充てれば、増税など必要ないではないか。
「国債を買って運用」の甘い汁
そもそも特会の「不用額」はどうやって発生し、積み上がっていくのか。
一例を挙げると、急激な為替変動に対応する為替介入資金である財務省の外国為替資金特会(外為特会)はざっと100兆円分のドル資金を保有している。その金は現金としてではなく、米国債などを購入して運用しているため、特会には毎年4兆円前後の利息収入が入る。そこから人件費など経費を引くと08年には3・4兆円の剰余金が出た。企業でいえば利益にあたる。
財務省はこのうち2・4兆円を一般会計に繰り入れたが、残りの1兆円は「不用額」となった(08年度)。
その金はどこに行くのか。
外為特会では、保有する米国債が暴落した場合に損失をカバーするという名目で、100兆円とは別に「積立金」を貯め込んでいる。
不用額の1兆円はこの財務省の貯金箱≠ノ入れられるのだ。積立金は06年には17・5兆円だったが、07年に2兆円、08年に1兆円が繰り入れられて20・5兆円へと年々増え続けている。
そうした積立金は損失補填目的としては必要以上に巨額だという批判が強い。しかも、「外為特会は財務官僚の海外留学資金などに流用されてきた」(財務省0B)といわれるように、その使途は疑惑だらけである。
第一、財務省はこれだけ円高で輸出企業が苦しんでいるにもかかわらず、この5年間、一度も為替介入を行なっていない。100兆円もの介入資金が必要なのかも疑問だ。
同じく財務省所管の特会である、巨大地震に備えた地震再保険特会の08年度歳入は654億円あったが、この年は巨大地震が起きなかったために歳出は事務経費の7600万円のみ。収入のほとんどが「不用額」となり、そっくり積立金として貯蓄された。この特会、設立以来45年間で支払った保険金は阪神・淡路大地震の時の62億円だけだ。毎年の保険料収入の「不用額」は積もりに積もって1・2兆円に達している。阪神・淡路大震災で支払った保険金の額と比較しても、1・2兆円も貯め込んでおく必要はあるのか。
巨額の資金量を誇る年金や労働保険をはじめ、特別会計の不用額の多くはそれぞれの特会が持つ積立金に組み入れられ、「埋蔵金」と化していくのである。
国会議員の元政策秘書で『特別会計への道案内』(創芸出版)の著書がある松浦武志氏が語る。
「官僚はせっせと積立金を増やし、その金で国債を買う。1兆円の積立金があれば金利が1%でも年間100億円の運用収益があがる。
その利息で無駄遣いをしてきたわけです。特会の中には不用額をそのまま財源にできないものもあるが、少なく見積もっても、フローで毎年6兆〜7兆円の財源は捻出できる」
国債発行額の増加を理由に増税を求める一方で、自分たちはへそくり≠ナ国債を買い、その利息で私腹を肥やしているのだ。
「特会仕分け」はアリバイ工作
枝野幸男・幹事長と玄葉光一郎・政調会長、そして蓮紡・行政刷新相の3人は、6月23日、「10月中旬から特別会計を対象にした事業仕分け第3背を実施する」と大々的に打ち上げた。
民主党は政権交代前、マニフェスト実行に必要な年間約17兆円の財源は、「一般会計と特別会計を合わせた総予算207兆円を組みかえることで捻出できる」(菅氏)と説明していた。
最初から特会にまだまだ財源が眠っていると見当をつけていたはずである。
民主党内でも、昨年9月の政権交代直後から、「まず特会を仕分けすべき」との声があがっていた。しかし、当時の行政刷新相だった仙谷氏、第2弾仕分け当時の行政刷新相だった枝野氏も、そうした声に耳を貸さずに、大した支出削減にならないスパコンや公益法人の仕分けを優先させた。
枝野氏や玄棄民も「財源がない」と消費税増税方針を打ち出した後に、特別会計の仕分けというのだから順番が明らかに違う。
それでも遅ればせながら、この問題に取り組むのなら歓迎すべき話だ。が、官僚はすでに埋蔵金を使わせないための予防線を張っている。
枝野氏らが特会仕分けの方針を発表した前日、菅内閣は財政健全化のための「財政運営戦略」を閣議決定した。そこには次の一文が盛り込まれている。
〈確保された歳入が一時的なものである場合には、国債発行額の抑制に活用するものとする〉
つまり、一時的な歳入である不用額や埋蔵金を発掘しても、子ども手当や社会保障などの財源には使わせないという意味だ。
実際には、前述のように特会では毎年10兆〜12兆円の不用額が発生する仕組みがあり、余分なカネをしっかり吸い上げれば十分恒常的な財源となるのだが、菅内閣が、ここでも官僚の求めに応じて自ら特会仕分けを妨害する規定をつくり、そのうえで特会仕分けを発表しているのだから、やる気のほどが知れよう。
閣議決定の進行役だった仙谷官房長官は、財源の宝庫が目の前にあるのに、「残る『税金のムダ遺い』はせいぜい2兆円だ」と、早々と発掘の目標値を引き下げた。最初から特会には手をつける気がなかったとさえ思えてくる。
内閣府の幹部はこううそぶく。
「財務省が菅政権に消費税増税を早くやらせようとしているのは、このままの税収では嫌でも特会のカネに手をつけるしかなくなることを恐れているからだ。特別会計にも無駄削減のメスを入れたという姿勢は見せておく必要があるが、まァあれは増税を前提にしたアリバイづくりにすぎない」
菅氏らは、ここまで官僚に馬鹿にされてもなお、国民を裏切って彼らのために働くつもりなのか。
(写真あり)
○聖域に踏み込む気はない
(野田佳彦・財務相と仙谷官房長官)
○官僚の掌の上で転がされている
(各省の事務次官の前で訓示した菅首相)
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