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http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20100712/236273/
森永卓郎 厳しい時代に「生き残る」には
2010年 7月13日
「民主党惨敗」は当然。「政権右派」が「小沢マニフェスト」を覆す「暴挙」に。「菅内閣」の「最大の裏切り」は「消費税率の引き上げ」だ!
■前原・野田グループが菅内閣で実権を握る
2010年7月11日の参議院議員選挙で、民主党の獲得議席数は44議席と、単独過半数を得るための60議席はおろか、国民新党を合わせた与党で過半数を確保する57議席にも大きく届かなかった。
民主党にとって参院選は「惨敗」ともいえる結果に終わった。
菅内閣は今後、連立政権の組み替えも含め、難しい政権運営を迫られることになる。
私は、この選挙結果を「当然のこと」と受け止めている。
菅内閣誕生の経緯からして、昨年(2009年)の衆議院議員選挙(総選挙)で民主党を支持した国民の期待を裏切るものだったからである。
前回のコラムで述べたように、鳩山由紀夫前総理の辞任とそれに続く菅内閣の発足は、「政権右派」ともいえる前原・野田グループ(前原誠司・国土交通大臣、野田佳彦・財務大臣を中心とする2つのグループ)による「クーデター」でなかったか、と私は見ている。
政権右派は、自派にとって「目の上のタンコブ」ともいえる小沢一郎・民主党前幹事長、福島瑞穂・社民党党首、亀井静香・国民新党代表の3氏を追い落とし、菅直人副総理(当時)を担いで新内閣で実権を握ったのだ。
それを如実に物語るのが「亀井辞任劇」だった。
■郵政法案成立に自信満々の亀井氏が2日後に辞任
亀井氏は6月11日に、先の通常国会での成立を目指していた郵政改革法案の審議が参院選後の臨時国会に先送りされることになったことへのケジメをつけるために辞任した。
実は、私はその2日前、6月9日にテレビ朝日の情報番組で亀井氏と会っている。
そのときに、私が「郵政改革法案は今国会(先の通常国会)で成立するのか」と尋ねると、亀井氏は自信満々に概ねこんな趣旨の発言をした。
「何をバカなことを言っているんだ。党の代表と党の代表がちゃんと連立協議をして約束したんだから、徹夜審議でも何でもして(法案を)成立させるに決まっているだろう」
事実、亀井氏は前日の6月8日に菅総理と首相官邸で党首会談を行い、「現在国会で審議中の郵政改革法案については、速やかに成立を期す」とする民主党と国民新党との「合意書(6月4日付)」を再確認しているのだ。
にもかかわらず、その3日後に亀井氏が辞任に追い込まれたのはなぜか。
郵政改革法案の臨時国会への審議先送りを事実上取り仕切ったのは、前原・野田グループに属する枝野幸男・民主党幹事長だ。
■「亀井辞任劇」で内閣の強権的体質を垣間見た
枝野氏は、国民新党との協議を、強硬姿勢で貫き通した。そして、最終的に独断に近い形で郵政改革法案の先送りを国民新党に最後通告してしまった。
そのとき菅総理は寝ていたそうだし、実際に亀井氏に菅総理から連絡が入ったのは、亀井氏が辞任会見を開いている最中だった。
それにしても、与党間の連立協議の合意を一方の党の幹事長が勝手に覆すなどということがあってもよいものだろうか。通常なら、あり得ない。
この一件を通じて、菅内閣の強権的体質の一端を垣間見た思いがした。
もっとも、菅内閣の閣僚・党役員人事を見たときから嫌な予感がしていた。
これだけ嫌な予感にさいなまれるのは、小泉純一郎元総理が竹中平蔵氏を経済財政担当大臣に指名したとき以来、実に9年ぶりのことだった。
その嫌な予感とは、菅内閣で小泉構造改革の再来、すなわち新自由主義政策が復活するのではないか、とういうものだ。
■「小泉・竹中路線」と共通点の多い政権右派
菅内閣は、鳩山前総理の「突然」の辞任を受けて発足しただけに、閣僚人事は小幅にとどめた。
ところが、新任の閣僚・党役員の陣容を見て驚いた。
官房長官に仙谷由人氏、財務大臣に野田佳彦氏、行政刷新担当大臣に蓮舫氏、党幹事長に枝野氏と、前原・野田グループの4人に主要ポストが割り当てられていたのだ。
そもそも、「凌雲会(前原グループ)」には26人、「花斉会(野田グループ)」には21人の国会議員が属している。その人数は両会合わせても47人。たかだか民主党の国会議員の1割強を占めるに過ぎないのだ(いずれも参院選前の議員数)。
その「小所帯」が内閣・党の主要ポストを独占した。
凌雲会と花斉会は、言わずと知れた「反小沢グループ」。私見によれば、その基本理念は「日米同盟最優先」「財政再建」「新自由主義」だ。
つまり、前原・野田グループの基本理念は「小泉・竹中路線」と共通点が多いわけだ。
私が両グループを「政権右派」と称する所以でもある。
■菅内閣と小泉内閣の政権誕生の構図は似ている
今回の「政変」でも、前原・野田グループは小泉元総理のやり口に似た「政争劇」を演じてみせた。
小泉氏は、自民党内の「郵政族」や「道路族」などを「抵抗勢力」と呼び、派手な対立図式を意図的に作り上げた。
そして、その「劇場型政争劇」に拍手喝采を送るメディアと国民の圧倒的支持を背に、同勢力を党内から次々と排除していった。
同様に、前原・野田グループは小沢グループを小泉氏のいう抵抗勢力に仕立て、同グループを切り捨てることで「党刷新」を世間に印象づけようとした。
現に、民主党の副幹事長人事でも小沢グループをほぼ一掃している。
そうした前原・野田グループによる「小沢色一掃劇」がメディアや国民に受けたのだろう。
菅内閣発足直後の共同通信の世論調査(6月8〜9日)によれば、内閣支持率は61.5%に上り、鳩山内閣末期の支持率19.5%から「V字回復」した。
要するに、菅内閣と小泉内閣の政権誕生の構図は似ているわけだ。
■菅内閣はマニフェストの基本政策を次々に変更
くしくも、小泉氏が抵抗勢力と呼んだのは主に旧田中派・旧竹下派の所属議員であり、前原・野田グループのそれはかつて同派に属していた小沢氏が率いるグループだ。
また、小泉氏は内閣発足時に国民的人気の高かった田中真紀子氏を外務大臣に起用したが、今回は行政刷新担当大臣に就いた蓮舫氏がその役割を担っている。
ともあれ、前原・野田グループが菅内閣で実権を握った以上、民主党政権の政策は大きく変わらざるを得ない。
事実、菅内閣は昨年(2009年)の総選挙で民主党が国民に約束したマニフェスト(小沢氏が実質的に取り仕切った「小沢マニフェスト」ともいえる)の基本政策を次々に変更するという「暴挙」に出ているのだ。
菅総理は6月12日に、月額2万6000円の子ども手当の満額支給を見送ることを表明した。子ども手当は月額1万3000円でとどまるのだ。
確かに、私は以前このコラム(2010年4月27日付)で、子ども手当の「現金給付」は月額1万3000円にとどめ、残りは公立小・中学校を完全無料化(給食費や教材費など諸経費の無料化)する「現物給付」に充てるべきだ、と主張した。
一見、菅内閣の方針もこの提案に沿っているように映る。が、根本的な違いがある。
■子ども手当ては「看板の付け替え」に過ぎなかった?
菅内閣は、残りの財源を使って保育サービスを拡充するというが、これは通常の社会保障予算で対応すべき性格のもので、子ども手当とは無関係だ。
要するに、菅内閣は事実上、子ども手当の予算総額(満額支給時の予算)を半減しようとしているのだ。これでは、子ども手当の存在意義が問われる。
そもそも、民主党は政権を獲得するや否や、子ども手当の導入を理由に従来の子育て支援に関する手当を廃止した。
12歳までの子どもに月額で最大1万円を支給する児童手当や、平成20(2008)年度に行われていた就学前の3年間、第2子以降に年額3万6000円(月額3000円に相当)を支給する子育て応援特別手当が、それだ。
そうすると、児童手当と子育て応援特別手当の支給(最大支給額)を受けていた世帯では、両方合わせた月額1万3000円の支給がなくなり、代わって月額1万3000円の子ども手当が支給されることになる。つまりは、支給額はプラスマイナス・ゼロということになるのだ。
こう考えると、月額1万3000円の子ども手当は、子育て支援どころか、「看板の付け替え」に過ぎなかったのではないか、と思わざるを得ない。
■民主党は自民党と談合して消費税率の引き上げを図る?
そればかりか、来年(2011年)からは、子ども1人当たり38万円が所得から控除される扶養控除も廃止されることになっている。
ケースによっては、逆にマイナスに作用してしまうこともあり得るのだ。
菅内閣の政策変更は、子ども手当だけではない。
内閣発足と同時に、前原誠司・国土交通大臣はそれまで掲げてきた「高速道路無料化」の方針を「高速道路原則無料化」に変更した。これは事実上の「無料化撤回」とも受け取れる。
そして、最大の国民への裏切りは、消費税率の引き上げだ。
菅総理は所信表明演説で、消費税率の引き上げを視野に、超党派の「財政健全化検討会議」を設置するよう、野党側に提案した。
つまり、自民党と談合して消費税率の引き上げを図るというのだ。
昨年(2009年)の総選挙で民主党は、ムダの徹底的な排除によって財政再建を目指すことを国民に約束したはずだ。また、「国民に財源を求めない」とも。
にもかかわらず、菅内閣はその国民との約束を180度転換させ、国民に負担を強いる消費税増税に前向きな姿勢を示した。だからこそ、民主党は参院選で惨敗を喫したのだ。
■惨敗を喫したにもかかわらず、居座りを決め込む菅総理
菅内閣は、いわば国民からイエローカードを突きつけられたのだ。
ところが、菅総理はこれだけの惨敗を喫したにもかかわらず、居座りを決め込んだ。
連立協議もままならないまま、「ねじれ国会」での法案成立は困難を極めるだろう。
しかも、景気動向指数が14カ月ぶりに悪化に転じるなど、景気は踊り場を迎えている。何も対策の打てない内閣への支持率は急速に下がっていくだろう。
驕る平家は久しからず――。
9月の民主党代表選挙が、政界再編の幕開けとなるのではないだろうか。
森永卓郎(もりながたくろう)
1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)を経て2007年4月独立。獨協大学経済学部教授。テレビ朝日「スーパーモーニング」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。
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