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菅直人政権が成長戦略の一環として証券・金融・商品先物を一体化して取り扱う総合取引所構想を打ち上げた。証券は金融庁、商品は経済産業省と農林水産省と監督官庁が分かれていることによる垣根を取っ払い、アジアの一大金融センターを作ろうという構想だ。似たような構想は安倍晋三政権下の2007年にもあったが、経産省や農水省の反対でとん挫した。現在は国内の商品先物市場そのものが急速に縮小しつつあり、総合取引所の実現性には不透明な点がある。
国内の商品取引所は長年、経産省と農水省の天下り先となっている。農水省OBの指定席である関西商品取引所は取引低迷で、値段を表示するための形式的な売買が大半の状態だが、それでも保有する不動産の家賃収入で存続している。このため、大手総合商社や海外投資家などから、取引所ごとにシステムの異なる不都合を解消して欲しいと、取引所の再編要望は以前から多いが、なかなか実現に至らない。
2007年4月に政府の経済財政諮問会議が、金融・資本市場改革に関連し「総合取引所」を創設し、国際競争力を高めるべきと提言した。しかし、当時の甘利明経済産業相が「商品先物取引は産業インフラだ。単なる資産運用とは違う」と反対した。ただ、関係者によると経産省内部で、商品先物は「デリバティブ」だとして管轄は金融庁に一任すべき、との事務方と、省益重視の上層部で見解にズレがあったとされる。
その後、商品先物市場は縮小の一途をたどり、国内4取引所の2009年度の売買高はピークの6年前から8割減少した。商品先物会社は、電話で個人を勧誘する営業手法が主流で、投資知識の浅い投資家が損失を抱える例が後を絶たず、2005年に国が、個人勧誘行為の規制を強化したのが直接のきっかけだ。
業界のアマチュア依存脱却と、ヘッジ目的などの法人の利用促進を同時に進める考えだったが、流動性の低下でかえって石油元売りなど実需家による利用は進まなかった。規制強化で廃業した商品先物会社の多くは外国為替証拠金取引(FX)などに活路を見出した。商品先物取引会社は2003年には100社あったが、現在は約3分の1に減少している。
中部大阪商品取引所は5月、石油・貴金属市場の2011年1月ぎりで取引を休止し、事実上解散することを決めた。7月5日は、商品取引会社の業界団体である日本商品先物振興協会が東京穀物商品取引所に対して、解散など経営の抜本的な再編を提言した。東穀取の渡辺好明社長は、自公政権下で実現できなかったコメ上場などを実現することで生き残りを目指す考えを強調したとされる。
しかし、商品業界所関係者によると「あまりに取引の少ない中でコメを上場すると、価格が急激に変動してしまう。食糧のコメにそれは許されないはず。上場の機会は事実上失った」。09年度赤字決算となった東穀取は、仮に取引所のビルを売却しても数年しか生き延びられないという。ゴムやプラチナなど国際的に指標性のある上場商品を持つ東京工業品取引所も、経営状況は厳しく今後の動向は予断を許さない。
証券・商品取引所と並び再編対象として取りざたされるのが東京金融取引所だが、FXブームに乗り単独の生き残りに自信があるとして、総合取引所への参加には消極的なようだ。
仮に証券取引所と商品取引所の統合が実現しても、目玉となる上場商品などがなければ海外投資家の耳目を集めることは難しい。小豆ではないが投機性の高い上場商品の方が一部海外投資家に注目されやすいとの指摘もあるが、投資家保護の行政スタンスとの整合性が問われそうだ。
一方、日本とは対照的に、中国では大連商品取引所が製鉄原料であるコークスの上場を検討していると報道されるなど、産業基盤となる商品を上場して国際的に価格主導権を握る動きを着々と進めている。
経済産業省のまとめによると、09年上半期の出来高による世界の商品取引所ランキングは、1位がニューヨーク商業取引所(NYMEX)の2億690万枚、2位が大連商品取引所1億7090万枚、3位が上海期貨交易所で1億5150万枚。日本は、10位にようやく東京工業品取引所(東工取、1460万枚)が入っている。日本は1730年に大阪堂島でコメ先物市場を開設した先物発祥の地。しかし、地盤沈下が続く中で、周回遅れの日の丸総合取引所構想に残された時間は少なそうである。
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