41. 2010年7月12日 05:38:53: ZsUNOgGnko 「にせ龍馬」で終わるな首相 政治部長・乾正人 2010.7.12 05:14 長州で生まれ育った菅直人首相は、やはり坂本龍馬にはなれなかったようである。 投票日直前、大量に流された民主党のテレビCMでワイシャツ姿の首相は、腕まくりをして白い布をゴシゴシ洗っていた。「日本を、洗う」のキャッチコピーも「日本を今一度洗濯いたし申し候」の名文句を残した龍馬を意識したのは明らかだった。 だが、選挙戦での首相の言動は、動乱期を駆け抜けた龍馬とはほど遠いものだった。「争点は安定か、混乱かだ。これ以上、物事が進まない不安定な政治を続けるのか」と訴えたが、幕末の志士どころか麻生太郎元首相をはじめ、歴代の自民党総裁と寸分も変わらない発言だった。 安定だけを有権者が求めているのなら、昨年の衆院選で政権交代は実現しなかったはずである。第一、3年前の参院選で衆参ねじれを実現させた後、日銀総裁人事やガソリン税の暫定税率など自公政権のやることなすことに何でも反対し、政治を必要以上に混乱させたのはどの党だったのか。 参院選での民主党の敗因について、首相が唐突に消費税問題を持ち出し、発言がぶれにぶれたことが挙げられているが、それだけではない。マニフェスト(政権公約)も参院選向けに手直しが施されたが、有権者に「将来のビジョン」が見えなかったのも理由のひとつだろう。もちろん、自民党が過去の失敗を心から反省し、出直しに成功したからでもない。改選第一党に復調したが、民主党の自滅によるところが大きい。現に都市部や政党の総合力を反映する比例代表では伸び悩んでいる。 それよりも民主党の最大の敗因は、政治とカネや普天間問題で迷走を続けた鳩山由紀夫政権9カ月間への反省が、菅首相をはじめ幹部たちからほとんど聞かれなかったことだと思う。 聞かれなかったどころか、前政権の主役である鳩山前首相と小沢一郎前幹事長は、選挙期間中、全国を遊説して歩き、健在ぶりを誇示した。ことに小沢氏は、マニフェスト変更に反対する姿勢を明確にし、菅執行部を揺さぶった。 もし、民主党が単独で過半数を占めれば、政治を混乱させた2人が選挙後に何事もなかったかのように復権し、元の木阿弥(もくあみ)になるという懸念を多くの有権者が抱いたのではないか。マニフェストに載っていない外国人参政権付与法案や夫婦別姓法案を参院選後に提出しないとの確約もなされなかった。有権者は、今回の選挙で政局の安定よりも民主党の暴走を止める方を選んだのである。 与党が参院で過半数を割ったことで、与野党対決法案は成立しなくなり、9月に予定される民主党代表選での菅首相の立場はかなり厳しいものとなった。小沢氏の復権もささやかれ、またしても首相交代が現実味を帯びてきている。だが、たとえ「ポスト菅」に誰がなっても参院の勢力が基本的に3年間変わらない以上、政局の混乱は続くことになる。 こうなれば、首相は政界再編の好機として開き直るしかあるまい。「新たなねじれ」は、国会や参議院のあり方そのものが問われるからだ。議院内閣制の国で、上院(参院)と下院(衆院)がほぼ同じ力を持っている例はほとんどない。国会を「国権の最高機関」と規定している現行憲法が、衆院の優越を首相指名と不信任決議、予算案議決などごくわずかしか認めていないからだ。改憲に消極的だった首相もようやく憲法の不備に気づいたのではないか。 首相が「にせ龍馬」ではないならば、憲法改正に手をつけるべきだろう。その過程で数合わせでない政策と理念による政界再編が起こりうるはずだ。それ以外に首相が歴史に名を残すすべはない。 http://sankei.jp.msn.com/politics/election/100712/elc1007120514054-n1.htm |