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織姫と彦星が年に一度だけ会える日があるように、2年か3年に一度だけ、国民が社会の主人になって政治を決める日が訪れる。劇場の観客にすぎない国民が、舞台の主役になる日が来る。投票に行こう。5年前の郵政選挙投票日の前々日、金曜夜のNEWS23で筑紫哲也がそう言ったのを覚えている。すでに情勢は小泉自民党の地滑り的大勝利が確実で、それを折り込んで、立花隆と沈鬱で憔悴した政治論議を交わした後、「多事争論」の中でそう語った。
知識人のメッセージだった。そうした報道番組を持っていたことが、国民にとってどれほど大きな幸福だったことか。空気のような、水のようなもの。けれども、それを失って初めて人はそのありがたさに気づく。最新の共同通信の世論調査では、民主が50議席割れの危険水域に達した状況が報じられている。が、一方で、同じく消費税10%増税を公約に掲げている自民党が復調し、現有議席を上回って躍進すると予想されている。
Harf is good, half is bad. 民主と自民が合計で95議席も取る事態は、絶対に避けなくてはいけない。現有は民主が54で自民が38の合計92議席。この議席を上回らせてはいけない。確実に下回らせることが必要で、両党で90議席を割らせる必要がある。選挙後、マスコミは確実に大連立をプロモーションしてくる。この参院選の民意について、民主と自民の合計で意義づけするだろう。両党で現有92議席を上回れば、国民は消費税10%増税を認めたと、そう言うだろう。
昨夜(7/6)TBSの夜の報道番組で党首討論があり、普段は見ないその番組を久しぶりに見たが、企画も進行も面白くなく、印象の残らない散漫な情報内容だった。公示日の夜のNHKの7時のニュースの方が、党首を出した選挙報道としてよほど水準が高い。一点、見逃せない場面があった。消費税論議を一巡させた後、膳場貴子がおもむろに、「それでは無駄の削減の問題に移りたいと思います」と言い、議員定数の削減の話に議題を振り向けたことだ。
テロップには「無駄の削減」と出て、そのテロップの表示を常駐させたまま、各党の党首が議員定数の削減について主張を述べていた。国会議員は無駄な存在なのか。日本の財政再建を論議する上で、真っ先に無駄として削減の対象に措定されるのが、国会議員のヘッドカウントなのか。主権者である国民が、国政の運営のために国権の最高機関に送っている国民代表が、税金を食い潰して赤字を発生させている最大の元兇なのか。
国民代表を平気で無駄だとして政治を議論する番組スタッフの感覚に対して、天国の筑紫哲也は何を思うことだろう。今回の選挙では、消費税を増税する前提として議員が身を削れという主張が言われ、それが国民の正論のように一人歩きしている。もともと、民主や自民やマスコミや経団連が言っている言説だが、財政赤字の削減と国会議員の定数とは何の関係もない問題だ。
言わば精神論の問題として前面に立てているわけだが、その言説が撒き散らされることで、本当の無駄である天下りを含む官僚行政の浪費と散財の問題が隠蔽されている。TBSの番組の中で、やはり注目させられたのは、谷垣禎一に対して、「選挙後に民主党と連立を組む意思があるのか」と質問が及んだとき、即答で否定しなかった点である。山口那津男と渡辺喜美は、どのテレビ局の討論会でも連立拒否を明言している。
このような場合、野党は、仮に選挙後に連立を組む展開になるとしても、選挙中はそれを断固否定する発言で通し、与党批判の姿勢を貫いて集票を狙うものだ。態度が曖昧だと有権者に不信を買い、投票に悪い影響を及ぼすからである。ところが、谷垣禎一はそのセオリーを破って、大連立に対して含みを示唆する曖昧なニュアンスで言葉を濁した。
視聴者の前で、民主との連立を一言で否定する行動に出なかった。この訝しい言動は、公示日(6/24)の夜にNHKの生放送で見せた菅直人の意外な反応と全く同じだ。特に谷垣禎一の場合、この態度が異様に思われるのは、この時点で自民党は選挙戦の優勢が伝えられていて、テレビで菅直人を痛快に一刀両断すればするほど、票の勢いに弾みがつく状況だからである。
5日後に投票が迫った時間軸で終盤戦略を考えれば、ここで苦戦の菅民主党を圧倒し粉砕する気迫を見せ、民主党主導の連立協議など考慮の余地は微塵もないと突き放した方が効果があるに決まっている。解散総選挙に追い込むことしか念頭にないと断言した方が、汗を流して終盤の選挙区を駆け回る運動員を後押しする力になる。ところが、谷垣禎一はそれをしない。集票にとっては逆効果の、含みを持たせる対応で逃げている。普通に考えれば、これは谷垣禎一の正直な意思の表明だ。
すなわち、選挙後の民自大連立ありのサインの発信である。谷垣禎一は、この選挙で民主党に勝とうとしていない。与党を追い詰め、政権を奪回しようとする野党の姿勢が全く見られない。民主党批判の論陣を張らない。むしろ、公約であり争点となった消費税10%増税の実現の方に強い執着を示している。民主党の「消費税10%増税」公約よりも、自民党の「消費税10%増税」公約の方が、政策の中身がよくて信頼できると訴えている。
この主張は、全く意味不明で、論点として無意味で、有権者は呆然とするばかりだが、マスコミはその谷垣禎一の説明がさも意味がある議論であるかのように受け取り、頷き、視聴者に紹介して選挙討論を進行させている。討論番組を見ながら感づかされるのは、自民党は野党ではなく与党の立場だということである。与党が二つあり、二つの与党が(対立点もなく)同じ主張で時間を潰し、残りの短い時間が幾つかの小野党に割り振られ、タイトな時間枠で与党批判の主張をしている。
志位和夫の消費税論や税制の問題提起は、当を得た重要で有効な選挙情報なのだが、十分な説明時間が与えられず、窮屈に押し込められたまま封殺され、菅直人との有効な論戦に発展させられない。消費税問題については、菅直人と志位和夫が15分間フリーに論戦するのが、本来、選挙討論として有意味な情報提供になるはずで、国民が求め、国民に責任を果たす報道のあり方だと思うが、そういう機会をマスコミが提供することはない。討論の中で増税派(菅・谷垣)は余裕の表情で、国民の反対世論など意識しておらず、選挙後の増税断行に何の不安も障害も感じていない。
不思議な光景だ。事実上、すでに大連立が始まっている。民自2党は現有の92議席を1議席でも増やせばいいのであり、その情勢を楽観している。50議席割れも伝えられる中で、菅直人のあの余裕綽々の表情は、ポーカーフェースの演技だけだとは思えない。水面下で、選挙後の政策大連立の動きが調整され準備されている。今、その物的証拠を示すことはできないけれど、3年前の大連立が渡辺恒雄の手で進められ、発覚後にわれわれを愕然とさせたように、後から、「あのとき実はこうだった」という真相が漏れ出るのではないか。
この選挙で民自が95議席を取れば、非改選も95議席だから、参院で計190議席。定数242の78%を占める数だ。たち日等を含めれば80%を超える。衆院では民自の合計が423議席。定数480の88%の圧倒的多数。昨夜のTBSの番組で、菅直人が、日本の「政治改革」の意義を強調し、小選挙区制の下での二大政党制の一般論を垂れ、政権交代の偉業はこの制度のおかげだと神に感謝するように言い、日本でもあと数回は二大政党間での政権交代が必要だと力説した。
しかし、谷垣禎一の方は、鼻先でせせら笑う表情で菅直人の高説を聞き流している。二大政党による政権交代など、谷垣禎一にとっては何の意味もない言説なのだ。この参院選でどれほど勝っても、それを衆院選の勝利には繋げられない。自民党はそのような主体的な力を持った政党ではない。そのことを谷垣禎一は知っている。今回の参院選での議席増はフロックであり、菅直人のエラーによるラッキーなサクセスに過ぎない。世襲党である自民党には再起再生の余力はなく、マスコミ(官僚と経団連)の支持を受ける選挙戦術の選択しかないのだ。
自力で票を取れない。馬糞の川流れ的な党解体の将来しかない。だから、谷垣禎一は、国民に向かって政策をアピールしていない。経団連と官僚とマスコミに向かってアピールしている。経団連と官僚とマスコミの支持で生き残ろうと模索している。自民党は昔のような国民政党ではないのだ。次の衆院選で小選挙区を戦う能力と基盤がない。資金がない。自民党が、民主党と並ぶ二大政党の一として堅固な組織で半永久的に存続するとは誰も考えていない。
小選挙区制の制度が続く以上、政党が二つに収斂する傾向と作用は否めないが、それは同時に絶えざる政界再編の連続であり、政界再編の衝動と圧力が継続する過程であって、安定的な二大政党が体制として固まる図ではないだろう。日本においては、権力は官僚と経団連とマスコミが握っている。それを裏で操っているのは米国である。権力は一つであり、従って、政界再編でどのような政党が誕生し、大政党が分裂融解して政治の世界が混迷しても、カオスの中から再編組成される二大政党は、一つの権力が求める政策意思を担い、それを実現しようとする。
二つの政党は同じ政策に収斂する。それをせず、国民生活を重視した政策を掲げると、鳩山由紀夫の二の舞になり、小沢一郎の二の舞になる。検察官僚が動き、マスコミ官僚が動き、支持率を崩落させ、政治の世界から葬り去る措置に出る。だが、野党として選挙で国民から票を得ようとすれば、小沢一郎的な「国民の生活が第一」の路線しかない。今回は、その政党がなく、国民が投票する野党がないだけだ。国民の世論や志向が、決して保守・ネオリベの民主と自民にあるわけではなく、同じ政策の二党での政権交代のキャッチボールを望んでいるわけではない。
政治に絶望しそうなとき、心が折れそうになるとき、政治の不条理の前に胸が潰れそうになったとき、卑劣な裏切りに歯噛みして奥歯が割れそうになったときは、小泉時代に孤高に頑張っていた筑紫哲也を思い出そう。がんの苦痛を顔に出さず、立命館で鶴見俊輔の講義をノートしていた姿を思い浮かべよう。余命わずか数か月の身なのに、書生のように夢中にメモを録っていた姿を思い返そう。その遺言を思い出そう。「少数派になることを恐れてはいけない」と説いた言葉を噛み締めよう。投票日までは4日もある。
絶望する必要はない。共同の予想記事では、まだ投票先を決めてない有権者が3割もいる。この3割の有権者が、比例の票を国新・共産・社民の3党に流せば、民主・自民の現有議席超えを阻止することができる。迷っている有権者には、消費税増税に反対している少数政党に投票することを呼びかけよう。少数派になることを恐れるな、と、そう自分に言い、そう他の人にも言おう。最後の最後まで、この戦いに勝利できると信じよう。星に祈ろう。
もし、民主と自民が選挙後に政策大連立に動き、岸井成格・与良正男・星浩・一色清の一団が猛然とテレビ言論を制圧してきたら、そのときは、国民の世論は消費税増税に反対であり、国民は投票で消費税増税に反対の民意を示したと言って反撃しよう。ネットを拠点にして言論戦を戦い、マスコミを包囲しよう。国民の審判は菅直人の公約(社会契約)を拒否したと言おう。官僚の思うようにはさせない。日本は民主主義の国で、有権者の投票で政治を決せられる。デモスが支配するパラドックスは、2年に一度、3年に一度の七夕的な瞬間機会という特殊条件の下で真理化される。この瞬間機会において、まさに官僚は、この国の超越的支配者から憲法の言う公僕になり下がるのだ。
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