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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/791
霞が関への接近という"禁断の実"に手を伸ばす菅総理。「一兵卒」となり、虎視眈々と復権の機を窺う小沢前幹事長。内閣を飛び出し、生き残りの道を探る亀井前大臣---。
未来を誰に託すべきなのか。
●あなたは財務省の代弁者
「これぞ"菅落ち"(完落ち)ってやつかな」
菅直人首相を"落とした"と頬を緩めているのは、霞が関の最高峰・財務省のキャリアたちである。
「2010年度内に、消費税の改革案をとりまとめたい。税率は10%を参考とする」
首相が記者会見でこう話した際、身内の民主党議員も、閣僚たちでさえも驚愕した。「10%」という具体的な税率目標は、寝耳に水だったからだ。
ところがこの発言を、財務官僚たちは「してやったり」と、ほくそ笑みながら聞いていた。1%で2.5兆円の税収増---。消費税のアップは、財政規律至上主義をとる財務省にとって、長年の悲願だったからだ。
「かつて菅さんのような優秀な総理がいただろうか。菅さんは歴史に残る名宰相になる」(財務省キャリア)
財務省は万歳三唱。この世の春を謳歌せんばかり。
しかし、こんな簡単に完落ちしていいはずがない。民主党政権は、「行政のムダを徹底的に排除する」と宣言。公務員の人数や給与を削減し、官僚機構の既得権益にメスを入れることで、増税なしに10兆円規模の財源を作ってみせると豪語していたのではないか。
なのに、その公約は菅首相の一言でいきなり反故にされた。国庫にカネはなかったので、年金や社会福祉が欲しければ、国民一人ひとりがもっと負担をしろという。まさに財務省の論理そのものだ。
「最初のアップ幅は3%くらい、つまり8%が限界かなと思っていた。それがいきなり10%とは、+2%のおまけ付き。これも菅首相のおかげで、棚ボタみたいな気分」
(財務省関係者)
プライドが高い菅首相は、「自分は日本の未来のため、困難な決断ができる男だ」などと、自画自賛していることだろう。だが、今回の「10%」は菅首相が決断したようでいて、そうではない。財務省のシナリオ通り、つまり首相はまんまと、財務省の掌の上で転がされてしまったのだ。
「財務官僚たちはこの数ヵ月間、菅氏を"歓待"してきた。勝栄二郎主計局長らをはじめ、時には丹呉泰健事務次官までもが加わり、毎朝せっせと財政レクチャーを行い、資料を届け、徐々にその思想を"財務省色"に染めてきたのです」(全国紙政治部デスク)
その結果、菅氏の思想は劇的に変わった。政権交代直後は、「財務省の役人はとんでもない。平気で政治家をダマす。気をつけないと、簡単に取り込まれる」と罵倒していたのに、最近は、「財務省の役人はやっぱりモノが違う。痒いところに手が届くとは、ああいうことを指して言うんだ」などと、畏敬の念を込めて話すようになった。
要するに取り込まれてしまったのだ。
「増税して景気が良くなった国など、聞いたことがありません。菅総理の"菅"という字から、草の根の心を取り去れば"官"になる。結局、そういうことです」
(みんなの党政調会長・浅尾慶一郎氏)
かつて菅首相は、役人と見ればすぐに噛み付く、霞が関にとっては危険で厄介な存在だった。しかし、専門知識の提供で自尊心をくすぐる財務省の巧妙な愛玩により、その野性は失われてしまった。国民の利益を守るため吠え続けてきた男は、いつしか、官僚なしではやっていけない"霞が関の愛犬"に成り果てたのだ。
脱官僚どころか、"官僚温泉"にどっぷり浸かるという、国民に対する重大な裏切り行為。しかし、本人はそれに気づかず、ひたすら増長していくだけだ。
首相の「変節」は、メディア対応にも表れている。
野党時代、首相は多くの報道機関と協力関係を築き、自民党政権と霞が関の癒着を追及してきた。ところが最近は、些細なことで報道陣と衝突し、険悪な空気を醸し出す。というより、もはやメディアを「敵視している」と言ってもいい。
たとえば6月18日、首相官邸での「ぶら下がり会見」でのやり取りだ。
記者 消費税率について、民主党内からも、「議論が十分でない」という声があがっているが・・・。
菅首相 あの、(党内で)かなり議論して、今回の場合は(玄葉光一郎)政調会長とか、主だったメンバーには相談しておりまして。私の会見の後、皆さんからきちんとフォローしていただいたものと思っています。
秘書官 はい。ここで会見を終わります。
記者 昨日も総理はぶら下がり会見を受けなかった。もう1問、答えてください。
菅首相 ・・・。(無視)
記者 総理!
菅首相 ・・・。(無視して立ち去る)
この日、記者団が首相に申し入れていた代表質問は3問。しかし、会見の開始自体が約1時間も遅れた上、消費税についての質問がお気に召さなかったのか、一方的に2問で会見を打ち切ってしまった。
もともと短気で知られる首相は"イラ菅"と呼ばれていたが、こうしたメディアとの関係悪化により、元の異名はそのままに、このところは"ダマ菅"(だんまり)、"菅黙"(完黙)など、新たなアダ名が関係者の間で飛び交っている。
「報道各社の幹部との懇談でも、『言質を取らせない』という態度がありあり。自分だけでなく閣僚にも、『自己判断で勝手な発言をしないように』と釘を刺しています。しゃべり過ぎて墓穴を掘った鳩山前首相を反面教師にしているのでしょうが、これはやり過ぎです」(別の全国紙デスク)
菅首相の情報管制は徹底しており、恒例だった朝一番の公邸玄関でのぶら下がり取材も中止になった。首相曰く、「どうせ何も話すことはない」のだとか。トップがこの有り様のため、官邸のスタッフも貝と化した。それどころか、6月中旬に行われた秘書官クラスと各社記者との懇談では、
「発言内容を外部に漏らしたことが判明したら、その記者は出入り禁止にする。菅政権は信義に違反する者とは一切、付き合わない」
との前代未聞の通告までがなされている。「開かれた政府」を標榜していた民主党の基本精神は、いったいどこに消えたのか。
●役人たちに税金で大盤振舞い
民主党ベテラン代議士の一人は、「これでは完全に独裁者だ」と、菅首相の言動に不安を隠そうとしない。
「そもそも菅さんは、他人をまったく信用していない。消費税アップも、『10%』という具体的数字は、仙谷由人官房長官にすら伝えていなかったんだから。
他人は利用するもの、彼はそう考えている。もちろんボクらもバカじゃないから、それは分かっている。しかし総理になってからはあまりに酷い。小沢さんという重石が取れたことで、まさに独裁者と化してしまった」
もっとも権力を握った菅首相が、こうなるだろうという素地は以前から垣間見えていた。今年3月、まだ副総理だった首相は、参議院の内閣委員会で、驚くべき発言をしている。
「ちょっと言葉が過ぎると気をつけなければいけませんが、議会制民主主義は、期限を区切った、あるレベルの独裁を認めることだと思っております」
政権を取ってしまえば独裁政治は正当化されると、公然と主張していたのだ。
菅首相の質疑応答の相手だった自民党の古川俊治参院議員はこう語る。
「彼にとって選挙とは政党の選択であって、政策は二の次。勝ってしまえば後は何をしてもよい、という考え方をしています。だから平気で『消費税を4年間上げない』という公約も反故にする。内閣総理大臣になれば何をしてもよいとは、憲法のどこにも書かれていないのですけどね」
民主党で「独裁者」と言えば、小沢一郎前幹事長の専売特許だった。だが、その小沢氏が消えたと思ったら、実は小沢氏以上に小沢氏的な政治家が、首相に就いていたのである。
独裁と、官僚依存。 6月22日、この日の閣議で、菅政権が実は「官政権」であることを象徴する重要な決定がなされた。「国家公務員の退職管理基本方針」だ。
民主党はこれまで、「官僚の天下り禁止」を高らかに謳いあげて来たはず。ところがこの「基本方針」は、公約とまったく逆の制度になっている。何しろ、政府のお墨付きで、官僚を天下りさせたり、再雇用して面倒を見るというのである。
「完全に役人の思惑通り。退職金の積み増しを決めた上、出世の望みがない部局長以下の職員を、"専門スタッフ"として、なんと千数百万円の年収で定年まで雇い続けるという。独立行政法人や公益法人への出向枠も拡大されました。大臣のお墨付きで、いままで以上に天下りができるようになったということです」(全国紙政治部記者)
この措置は本来、公務員制度改革関連法案が成立してから導入される予定だった。ところが菅政権は、選挙を急いで通常国会をすぐに閉会したため、法案は廃案に。
にもかかわらず、官僚救済の部分だけは、どさくさ紛れに閣議決定してしまったのだ。もちろん役人は大喜びだという。
「菅さんの官僚依存は、1月の参院予算委員会で、自民党の林芳正議員から経済用語について突っ込まれ、大恥をかいた時から。林氏は、子ども手当で国民所得がどれくらい増えるかという『乗数効果』の質問をしたのですが、菅さんは『0.7くらい』と、支給額が消費に回る割合を示す『消費性向』を答えてしまい、赤っ恥をかいた。菅さんは財務大臣室(当時)に戻った後、書類を机に叩きつけたりして、大荒れだったそうです」
(民主党中堅代議士)
傷ついた菅氏の心の隙間に滑り込んだのが、霞が関の"優秀"なキャリアたちだったというわけだ。
「百戦錬磨のキャリアにしてみれば、プライドの高い菅さんは御し易いでしょうね。『今度の総理は理解力があって素晴らしい』とか、そんな噂を流すだけで、本人は有頂天になってますます官僚の言いなりになる」(前出・ベテラン代議士)
いまや菅首相は、官僚の助けなしには、会見もできなければ、海外との交渉もまったくできない。
「ほとんどの場合、秘書官が横から差し出す官僚の原稿を棒読みしている。6月6日の米国オバマ大統領との電話会談も、菅首相は自他ともに認める外交オンチということもあり、事前に外務省に想定問答を作らせ、その範囲内での会話しかしなかった。ひたすら官僚の言う通りにしていれば失敗しない、そう思い込んでいる」(民主党幹部)
「脱官僚」はどこに消えた?
官僚の力を利用して失点を最小限に抑え、政権の基盤を固める・・・。現実主義者とされる菅首相は、そう考えているのだろう。
しかし、霞が関の論理に乗っかっての独断専行に、振り回される現場の議員はたまったものではない。7月の選挙での改選を控える民主党参院議員の一人は、不安を隠そうとしない。
「16年前、細川護煕政権は、旧大蔵省の事務次官だった斎藤次郎氏(現日本郵政社長)らの、『支持率が高いうちに増税を』という口車に乗って国民福祉税構想をぶち上げ、すぐ崩壊した。今度も菅さんは、財務省に騙されているんじゃないか」
そして、こうした身内の中でも、菅首相にもっとも批判的な態度を強めているのは、小沢一郎前幹事長を中心としたグループだ。
民主党には、反小沢・非小沢系議員のリーダー格の集まりである、仙谷官房長官、枝野幸男幹事長、岡田克也外相、前原誠司国交相らを中心とした「七奉行」が存在する。
これに対し、小沢氏の側近の一人、高嶋良充参院幹事長は、「七人の侍」(細野豪志、松本剛明、樋高剛、三井辨雄、伴野豊、樽床伸二各氏らとされる)の結成を宣言。9月の代表選では菅首相に対抗して、この7人の中から「小沢派の総理候補」を出すのだという。
「首相が消費税10%構想を打ち出した日の夜、この"七人の侍"に加え、小沢氏の秘書的存在の青木愛議員や、鳩山前首相側近の平野博文前官房長官が、東京・赤坂の日本料理店に集まりました。席上では、消費税発言に非難が集中。地元でばら撒くため、『消費税アップ反対』というビラを作り始めた議員もいる」(別の全国紙政治部記者)
鍵を握る小沢前幹事長は、参院選の公示日となった6月24日は、山梨県入り。同県選出の側近・輿石東氏の応援に駆けつけると同時に、その政治生活上の師匠である、金丸信・元自民党副総裁の墓参りをした。
金丸氏は'93年に脱税容疑で東京地検特捜部によって逮捕され、その汚名を晴らすことができないまま、'96年にこの世を去った。同じく金銭疑惑で特捜部の追及を受けている小沢氏が、このタイミングで師匠の墓の前に立ったというのは、何を意味するのか。
「菅総理は、参院選の勝敗ラインを現有の54議席にしていますが、小沢氏は『単独過半数だ』とハードルを上げて牽制している。官僚とタッグを組んだ菅さんが勝つか、負ければ後がない小沢氏が復権するのか、参院選はまさに"決戦"です」(前出・中堅代議士)
真夏の戦いは、目前だ。
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