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PJニュース 2010年6月14日】菅直人政権発足後3日で内閣を去った亀井静香前金融・郵政改革担当相。抗議とも取れる引責辞任と引き換えに交わした民主党との合意書(確認書・覚書)には、郵政改革法案成立の期限はない。郵政をめぐる亀井氏の決断には、計略より信頼にこだわる政治信条がうかがえる。
覚書の不備は信頼の証し
亀井氏が大臣のいすを降りたのは、今国会で郵政改革法案成立が見送られたからである。代表を務める国民新党は、小泉改革で進められた郵政民営化見直しを政策の1丁目1番地に掲げてきた。5年間の辛抱の末、少数政党にようやく訪れた一打逆転のチャンスだった。
今国会での審議未了・廃案を民主党から聞かされた10日夜、国民新党は森田高(たかし)参議院議員と江木さおり次期参院選東京都選挙区公認候補の街頭演説を中止。党本部で開かれた緊急両議員総会は4時間に及んだ。亀井代表は連立離脱を主張した。裏切られた気持ちがあったのだろう。しかし、閣外で参院選挙を迎えれば「討ち死に」(下地幹郎国対委員長)との声があり、亀井氏は連立維持をのんだ。合意書の交換は、苦肉の策だった。
ところが、11日に発表された合意書には肝心な部分が抜けている。参院選後も連立を維持することや今国会で衆院を通過した同一法案の提出をうたいながら、「速やかな成立を図る」と書かれた。期限がない。代わりに、「両党の信頼関係を再確認し、信義に基づき、誠実にこれを実行する」と精神論で結ばれている。
契約文書としては、実効性のない表現である。この文章に落ち着いた理由を、自見庄三郎幹事長が同日夜金融庁で開かれた大臣就任会見で明かした。「今国会までに」と作るべきとの意見も党内にあったが、亀井代表が「そんな国会対策的なことは両党の合意で書くべきではない」と反対したというのだ。「これは信用の問題だ」と。
自見新大臣は代表の決定を擁護し、最後に漏らした。「政治は詰め将棋のように詰めをしても駄目。最後は信頼関係。亀井代表は人を信頼する人だから、そうされたのかな」
信頼が返ってくる世界は美しい。しかし、今回の辞任劇はそもそも、良心に託した空疎な文言に原因がある。亀井前大臣と菅首相とが4日交わした合意書には「審議中の郵政改革法案は速やかに成立を期す」とあり、菅首相は記者会見で今国会での成立を明言していた。
文書は不備だし、口約束は法律的に何の効力も持たない。しかし、政治家は政策決定と約束に命を賭ける職業と肝に銘じる者同士なら、その必要はない。これが亀井静香氏の政治家としての美学なのだろう。「地位に恋々としない」と口にすることがあったが、今回の辞任は、自分の身を自分で裁く覚悟ありの姿勢を見せる機会でもあった。
こうした亀井氏の崇高な理想は、ことごとく裏切られてきた。二〇〇一年の自民党総裁選で出馬を表明するも、小泉純一郎氏と政策合意を結び、直前に辞退する。人事を含め、亀井氏の意向を全面的に採用することを約束され、小泉氏の応援に回った。しかし、当選後、反故(ほご)にされている
郵政見直しを阻むマスコミのデマ
そもそも、郵政族でも何でもない亀井氏がここまで郵政見直しにこだわるのはなぜだろう。その理由はただ1つ、郵政事業の下に集まったわが国の庶民の虎の子350兆円を外国金融資本の略奪から守るためである。米国が毎年わが国に突き付ける『年次改革要望書』の1995年版に簡易保険の廃止と保険市場開放を求める条項が登場して以来、郵政3事業の民営化が事細かく指示されてきた。
賢明な読者はこうした事情をご存知だろうが、マスコミ情報にしか接しない大衆は「100万票の郵政票が欲しいだけ」「既得権益を守るため」「民業圧迫」「財政規律が守られなくなる」などの報道を信じ込まされている。
郵便局組織が集票マシンとして機能したのは1980年までのこと。経済ジャーナリストの東谷暁(ひがしだに・さとし)氏によれば2001年の参院選で特定郵便局長会の集票力は47万票にすぎず、2004年の参院選に至っては28万票まで低下している。2007年の民営化後は非正社員化や切り崩しなどにより、さらに衰退しているのは間違いない。参議院選挙で1人当選させるには、100万票は必要と言われている。
「既得権益」は、米国保険業界に向けられるべき言葉である。傷害・疾病をカバーするわが国の「第三分野」は1974年にアメリカンファミリー保険ががん保険を初めて発売して以来、外資の独壇場。市場開放を検討した政府に猛抗議を掛けてきた始末だ。ここに来てテレビが連日のように郵政改革を批判するのは、かんぽ生命の新事業展開をくじくことが喫緊の課題となっていることを示す。
「民業圧迫」というが、他の金融機関の預金額は青天井。ゼロ金利の下、ただ同然でお金を集め、その大部分は企業に貸し付けずに高利な海外運用や手数料で稼ぐ。しかも、政府から12兆円の資金を投入してもらいながら、過去の赤字を理由にほとんどの銀行が納税していない。
「財政規律が守られなくなる」と言うが、ゆうちょ銀行があるから国債を発行するわけではない。小泉流に民営化して引き受けをやめたら、メガバンクも続いて長期金利が上がり、大規模な信用収縮起きるだろう。公務員や政治家の給料も払えなくなる。むしろこうした引き受け手を大事にして積極的な景気対策を打ち、税収増による財政規律の健全化を図ることが急務ではないか。
マスメディアは情報による支配装置にすぎない。報酬の源泉を考えれば、国民を利する原稿などに一体誰がお金を払うのかという問題に行き着く。最もお金を持つ者が、最も自由に情報を流布できる。終日浴びせられる報道から影響を受けない現代人などいない。【つづく】
四面楚歌の中、国民の覚醒を信じて
国民新党の支持率が0.0%と報じられた4月初めから、亀井氏は「支持率がマイナスになっても構わない」と発言するようになった。世論に迎合するのではなく、こちらが提案し、国民の意識を変えるのだと。4月28日の党会見では戦時中、翼賛政治に反対した三木武吉(みき・ぶきち)、中野正剛(なかの・せいごう)、鳩山一郎の勇敢な姿勢を挙げ、「そのとき世論調査したら、あの3人を支持する国民がいたか」とマスコミ記者たちに向けた。「支持を得てる世論が後世から見て必ずしも、その国の人たちを幸せにしているとは限らない」と持論を展開した。
もっとも、わたしは世論調査など全部うそだと思っている。新しい首相の支持率がいつも高いのは、大きな力に後押しされている証拠である。支持率0.0%ということは、1000人に1人いないということ。あなたの周りに国民新党の支持者は皆無か。わたしの周りにはごろごろいる。ネット上で民主党新執行部と亀井前大臣の評価を比較すれば、うそは一目瞭然(りょうぜん)だ。亀井氏の支持が圧倒的である。
産経新聞が4月16日付朝刊に掲載したアンケート結果では、郵政改革法案について8割前後が「民業圧迫」「限度額引き上げはやめるべき」「正社員を10万人増やすべきでない」と批判している。しかし2日後、わたしが講演に招かれた際、五十数人の聴衆に郵政見直しの是非を尋ねたら、8割以上が「賛成」に挙手。反対は1人もいなかった。政治色のない普通の市民である。マスコミは国民が望むものを見せるのではなく、国民に望むものを見せるのである。
外圧という最大の権力に逆らう小政党は常にマスコミの総攻撃を受ける。存続に求められるのは忍耐だ。今回の郵政廃案は、民主党の一部と自民党との合作と解せないこともない。自民党は政治と金の問題を連呼するとともに衆議院総務委員会の開催が「夜遅い」などと審議になかなか応じず、民主党は社民離脱を理由に内閣改造を決行して時間を稼いだ。マスコミはこれらを大げさに騒ぎ立てた挙げ句、「1日だけの審議で強行採決」と宣伝した。
参議院選挙後、民主党と自民党の大連立の可能性もささやかれている。菅首相は11日の所信表明演説で、超党派の「財政健全化検討会議」の創設を提唱した。消費税を含めた税制の抜本改革を議論するためである。民主党が練っている「中期財政フレーム」の原案は、自民党が作ったものだ。民・自両党の執行部には、財政出動による景気刺激策でわが国の産業と財政を立て直す気が見られない。亀井氏には、両党の類似性も見えていたはずである。
国民新党が政権にとどまった最大の理由は、全国郵便局長会(全特)の柘植芳文(つげ・よしふみ)会長から「希望の灯を消さないでほしい」と涙ながらにすがられたことである。亀井代表がこれを斟酌(しんしゃく)したのは、票のためでも利権を守るためでもなく、5年間地獄を共にした仲間を裏切れないとの気持ちからだろう。「義理と人情」は綿貫民輔(わたぬき・たみすけ)名誉顧問の信条だ。
野党とマスコミに加え、連立を組む友党からもはしごを外された国民新党は四面楚歌といった状況だ。敵の後ろには強大な外圧が控える。それでもやけを起こさず信じる道を訴え続ける。いつか国民が信じてくれることを信じて。
ハゲタカによる国民資産略奪の企てがついえるかどうかは、国民が悪意に満ちた雑音を振り払って亀井氏らの叫びに耳を傾けるかどうかにかかっている。【了】
http://www.pjnews.net/news/490/20100612_7
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