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菅総理は頭の良い政治家です。しかし、どんな理由であれ、選
挙前に増税宣言をするのは不利です。それなのに彼はなぜ急に増
税論者になったのでしょうか。理解できないのは、菅総理が消費
税増税を口にすると、記者クラブメディア、テレビまで増税容認
の論調になってきていることです。
財務省を中心として官僚や自民党の政治家、そして大手メディ
アが増税キャンペーンを張るときの根拠として必ず持ち出してく
るのは次の3つです。ひとつずつ検証してみることにします。
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1.日本は深刻な財政危機である
2.日本はギリシャのようになる
3.子孫に借金を残すべきでない
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第1は「日本は深刻な財政危機である」であるかどうかです。
財務省は国と地方自治体を合わせた借金は、2009年3月末
に900兆円に達し、GDPの2倍近くになるといいます。
これは議論のあるところですが、財政が危機的状況にあるかど
うかを見るひとつの指標は「長期金利」の動きです。
「長期金利」というのは10年物国債利回りのことです。この
長期金利が上昇すると、まさに財政危機そのものです。ギリシャ
国債の長期金利は8・8%に上昇しているのです。日本の現状は
どうなのでしょうか。専門家の意見を聴いてみましょう。
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日本国債利回りの低位安定が続いている。足元では、株式など
のリスク資産から国債へのシフトが一層進み、6月10日時点
で、日本の長期金利の指標となる10年物国債利回りは1・3
%を切る水準にまで低下している。もっともこの低位安定は今
に始まった事態ではない。1990年代末以降、10年物国債
利回りは、景気の波を通じて2%を切る水準を維持している。
──国際通貨基金アジア太平洋局エコノミスト/徳岡喜一氏
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長期金利が低位安定している理由は、いくつかありますが、一
番大きいのは、ストックベースでGDP比で約300%にも及ぶ
巨額の家計金融資産の存在です。これに関しては、日本金融財政
研究所の菊池英博氏の意見を聴くべきです。菊池氏は以前から一
貫してこの主張をされています。
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財務省が煽る財政危機論にはトリックがある。900兆円近い
借金の金額だけを宣伝し、日本政府が社会保障基金や特別会計
の内外投融資など約505兆円の金融資産を持っていることが
議論から抜けている。国の借金を問題にする場合、当然、資産
を差し引いて考えなければならない。計算すると日本の国家の
純債務は367兆円くらいで、他の先進国とそれほど変わらな
い水準です。 ──菊池英博氏/『週刊ポスト』7/9号より
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続いて第2の「日本はギリシャのようになる」について考えま
しょう。この論法は人に増税を訴えるときわかりやすいし、説得
力があるので、菅総理は今でも使っています。
しかし、これはやめた方が良い。なぜなら、こんなことをいう
と、菅という総理大臣は本当に経済がわかっていないことを宣伝
してしまうからです。国際金融論が専門の相澤幸悦埼玉大学経済
学部教授は次のようにいっています。
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そもそも日本とギリシャを同等に語る政治や行政の見識を疑い
ます。 ──相澤幸悦埼玉大学経済学部教授
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考えてみると、財政破綻する国が出ると「日本もそうなる」と
いうことが必ずいわれるのです。アルゼンチン、アイスランドの
ときもそういわれたのです。
相澤教授のいわんとしていることはこうです。ギリシャはもと
もと経済力の弱い国です。そういうギリシャの国債を多くの国が
買っているのです。ギリシャ国債の外国人保有率は約70%なの
です。なぜ、彼らはギリシャの国債を買ったのでしょうか。
それは国債に魅力があるからです。利回りは高いし、ユーロ圏
なので何かがあればEUが救うであろうと考えて、各国の金融機
関はギリシャの国債を買ったのです。
これに対して日本はギリシャと違って、独自通貨を持っている
ので、もし財政危機に陥れば、市場で株や債券が売られ、円安に
なります。そうすると、輸出産業が活性化してマイナスとプラス
がバランスを取り、調整機能が働くのです。リーマンショックで
財政が破綻したアイスランドが何とか生き延びているのは、この
調整機能があるからです。
最後に「子孫に借金を残すべきでない」について考えます。経
済評論家の上念司氏はこれについて次のように述べています。
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日本の国債の93%は国民が買っている。ということは次世代
に借金をほとんど残していないということです。わかりやすく
するために、少子化がどんどん進んで、人口が1になったとし
ます。最後の日本人は左手に借金、右手に国債をもっているか
ら相殺できる。本当の借金は外国が持つ7%の日本国債で、純
債務で見ると、国民一人20万円ほどの借金にすぎません。
──上念司氏/『週刊ポスト』7/9号より
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といっても、日本の財政は多くの問題点を抱えていることは確
かです。しかし、今日明日を争う問題ではないのです。時間は十
分あるのです。増税を先にやって、財政再建に成功した国はない
のです。菅総理は、いまひとつ納得できない小野理論に乗って、
消費税の増税するハラのようです。いくら秀才でも何人かの専門
家の話を聞き、本をちょっと読んだ程度で経済や財政のメカニズ
ムがわかるとは思えないのです。─[ジャーナリズム論/51]
≪画像および関連情報≫
●田中秀征氏による菅政権批判
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──「最小不幸社会の実現」についてどう思いますか。
政治家にとってそれは基本的な仕事だ。ただ、菅政権は「使
うこと」や「配ること」に関心が集中するあまり、「稼ぐこ
と」が二の次にならないか心配だ。菅首相、仙谷官房長官、
枝野幹事長が分配を優先しがちな旧革新トリオであることが
気がかりだ。 ──「週刊エコノミスト」6/29より
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(※引用者注:「週刊エコノミスト」6/29号の特集は「国債暴落の“ウソ”」
(南青山コメント)
「いくら秀才でも何人かの専門家の話を聞き、本をちょっと読んだ程度で経済や財政のメカニズムがわかるとは思えない」とはまことにその通りで、選挙カーで絶叫している姿を見ると、この人本当に誰かに洗脳されてしまったのではないかと心配になってくる。
半可通の生兵法ほど怖いものはない、の典型例ではないか。
鳩山も多くの人の期待を見事に裏切ってくれたが、この人のズッコケぶりは鳩山を超えているといっていい。
昔を知るものにとっては、本当にどうしてしまったのか、というほかない。
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