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民主党の参院選マニフェストは、強い経済、強い財政、強い社会保障、「第三の道」の新成長戦略を掲げ、消費税を政治の俎上に載せた。成長と財政の両立が課題になるのは、リーマンショックのアメリカ、ギリシャ・ユーロ危機のEUも同じで、G8・G20のテーマともなった。だが、菅内閣が掲げる成長と財政の両立は、ギリシャ・ユーロ危機で不安感に覆われる金融市場向けメッセージでしかない。
リーマンショック後、各国が執った経済対策は、政府の市場介入から社会主義化と評された。また政府ファンドや資源・エネルギー・インフラ輸出など、政府と多国籍企業主導の経済戦略が報じられている。
金子勝は、これを国家資本主義と呼び、グローバル経済下の政府の役割として特徴付ける。戦前の帝国主義・国家独占資本主義は、政府と企業の強い国家が、内需の不足を海外に求め、植民地市場を争奪するものであった。社会主義も、その中で生まれている。
冷戦が終わって、21世紀は、G7からG8・G20の時代に移行した。多国籍企業と政府が融合する国家資本主義は、アメリカの軍産複合体、中国など新興工業国・資源国のグローバルな展開に象徴されている。強い経済、強い財政、強い社会保障も、同じグローバル時代の国家資本主義に他ならない。
新成長戦略は、名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長(2020年度までの平均)、政府と日本銀行が協力して集中的な取り組みを進め、早期にデフレの克服が目標だ。「第三の道」と、強い経済、強い財政、強い社会保障を要約しよう。
「第一の道」は、公共事業中心、高度成長に貢献、財政赤字。「第二の道」は、市場原理主義、デフレ、リストラ、国民生活は不安定。「第三の道」は、環境・少子高齢化、アジア、観光分野などで雇用を拡大し、経済の拡大(強い経済)、財政の再建(強い財政)、社会保障の充実(強い社会保障)という好循環を作り出す。そして改革の目標に、「最小不幸社会」の実現を掲げている。
確かに第一の道は、列島改造型の公共投資と貿易立国で成長を遂げた。第二の道は、構造改革の規制緩和・市場開放で、グローバル化を受容し、外需傾斜と内需の衰退、格差とワーキングプアーを生み出している。だが「第三の道」は、「第二の道」の市場開放・規制緩和を継承し、政府・多国籍企業が一体で、アジアなど海外展開を進めるものではないだろうか。
具体的には、官民一体のインフラ輸出(高速鉄道、原発、上下水道の敷設・運営、海水淡水化などの水ビジネス、国際協力銀行、貿易保険、ODA、ファンド創設)が主軸だ。また医療観光、EPA・FTAを促進し、法人税引き下げ、低金利政策をとっている。大都市圏活性化の総合特区も、その一環だ。
そして、これにグリーン・イノベーション(環境・エネルギー分野の自然力・原子力発電、スマート・グリッド、エコカー・エコ家電・エコ住宅)と、ライフ・イノベーション(医療機器・医薬品の開発、ICT(情報通信技術)と医療・介護産業の融合による遠隔医療、再生医療や介護ロボットの実用化)を加えている。
また生産・加工・流通までを一体的に担う農業の6次産業化、住宅のバリアフリー・耐震補強改修支援、少子高齢化対応、アジア、観光分野などで雇用を拡大し、経済の拡大(強い経済)、財政の再建(強い財政)、社会保障の充実(強い社会保障)という好循環を作り出すと言う。グローバル時代の国家資本主義なのだ。
次に、新成長戦略の具体的な政策を、企業・家計・政府・海外の4部門で仕分けしよう。当否は別として、+記号は、促進。−記号は、抑制。△記号は、疑問だ。
新成長戦略 企業 家計 政府 海外
「第三の道」 強い経済 強い社会保障 強い財政 (日米深化)
経済成長 企業収支 家計収支 財政収支 国際収支
基軸 国際競争力 少子高齢化 国債依存 市場開放
法人税引き下げ + − − +
インフラ輸出 + △ △ +
EPA・FTA + △ △ +
オープンスカイ + △ △ +
ビザ要件緩和 + △ △ +
国際対応人材養成 + △ △ +
東アジア共同体 △ △ △ △
日米同盟を深化 △ △ △ △
地位協定の改定 △ △ △ △
沖縄の負担軽減 △ △ △ △
消費税増税 △ △ △ △
固定価格買取制度 + − △ △
温暖化対策税 + − + △
事業仕分け △ △ + △
子ども手当 △ △ − △
診療報酬引上げ + − + △
戸別所得補償 △ △ − △
地方一括交付金 △ △ △ △
幼保一体化 △ △ △ △
求職者支援制度 △ △ − △
脱ダム治水 △ + △ △
6次産業化 + △ △ △
生活技術開発 + △ △ +
大都市圏戦略 + △ △ 〇
「交通基本法」 △ △ △ △
郵政改革 △ △ △ △
このうち法人税引き下げ、インフラ輸出、EPA・FTA、オープンスカイ、ビザ要件緩和、国際対応人材養成などは、鳩山政権が掲げた東アジア共同体と表裏で、アジア主軸の経済外交だ。ところが普天間移設の日米合意は、日米同盟の深化が踏襲されている。東アジア共同体と日米同盟の深化というジレンマを、どう統合し再構築するのか。
経済と外交・安全保障の戦略を欠いては、地位協定の改定、沖縄の負担軽減も、展望は開けない。オバマ東京演説は、アメリカのアジアシフトの中で、その拠点・足場として日本を位置付けているのだ。
また内需では、消費税増税・固定価格買取制度・温暖化対策税・事業仕分けなどを財源に、子ども手当・診療報酬引上げ・戸別所得補償・地方一括交付金
に充て、幼保一体化、求職者支援制度、農業の6次産業化、脱ダム治水、生活技術開発、大都市圏戦略、「交通基本法」、郵政改革を進めると言う。
だが消費税を始め財源に具体策を欠き、子ども手当の当否や持続性、診療報酬引上げと医療危機・健保財政の先行き懸念、戸別所得補償の政策効果への疑問、地方一括交付金と地方財政の危機を抱え、地域主権の中身も不明確だ。
幼保一体化・求職者支援制度は、少子化高齢化の根源である雇用・貧困を打開する産業・最低賃金・生活保障と分断され、対症療法に終わっている。また農業の6次産業化は、企業の野菜工場化を含み、脱ダム治水は事実上棚上げされている。
生活技術の開発は省エネのイノベーション依存で、大都市圏戦略は企業の多国籍化と表裏の関係にある。「交通基本法」も、料金の均衡に目処が立たず、郵政改革も国債運用依存からの脱却が問われているのだ。
経済成長は、マクロ経済の定式で、企業・家計・政府・海外の4部門によって担われる。新成長戦略は、強い経済、強い財政、強い社会保障が好循環する日本を掲げた。換言すれば、企業部門で国際競争力の強い経済、家計部門で少子高齢化に強い社会保障、政府部門の国債依存に強い財政、海外部門の日米同盟深化である。
だが経済の安定成長は、企業収支・家計収支・財政収支・国際収支が、それぞれ均衡することが基本だ。また成長が特定部門に依存し、部門相互の均衡が欠けると、国民経済を歪曲し不安定にする。
リーマンショックで、海外依存の多国籍企業・系列企業が赤字を計上した。またトヨタのリコールは、グローバル企業経営の先行きを不透明にしている。ギリシャ・ユーロの危機も同じだ。
次に企業の収支は、売り上げと費用(商品価格・コストの数量との積)の差だ。そこでは、品質と生産量、それを生み出す設備投資と労働生産性、規模の利益と比較優位が追求される。また家計収支は、給与所得と生活費用の差で、賃金・生活財価格と人口に規定され、企業の製品価格と雇用賃金で結ばれている。
さらに財政収支は、税収と政府支出、公共的投資の差で、企業所得・家計所得に依存する。財政と家計は、仁徳天皇と民のかまどの煙なのだ。加えて国際収支は、貿易・サービスと資本収支の計である。企業・家計・政府部門と海外部門が、モノとカネで結ばれている。
そこで問われるのは、供給か需要かの選択ではない。規模の利益・比較優位と、商品・産業・国民経済4部門の均衡と連関・集積ではないだろうか。そして適地適産の品目連関、地場産業など地域経済・地域市場の懐を深くする産業
連関・集積を下支えするのは、その再生産を可能にする均衡した価格の連鎖した絆なのである。その基軸は、商品の価格と最低賃金・生活保障水準の均衡だ。
自然と人間優先の技術開発と、同心円型成長モデル
ー成長の基軸は、仕事と暮らし
アダム・スミスの産業の優先順位は、一次→二次→三次産業→社会資本→海外と書き換えてもよい。また市場構造は、商品市場と土地・労働・資本市場を、同心円で囲む地域市場→国内市場→海外市場と捉えることができる。
そして、商品には価格・費用(償却費・労働費)、土地には地代・地価、労働には賃金、資本には利潤・利子率が、地域市場には地産地消、国内市場には国産優先、海外市場には輸入補完が対応する。
また有効需要の原理が言う企業の投資性向は、商品の価格・費用(償却費・労働費)と賃金・利潤・利子率・地代・地価に、家計の消費性向は商品価格と賃金に対応する。そして地代・利潤を除けば、他は商品・土地・労働・資本(貨幣)の価格なのだ。
こうして雇用と消費、仕事と暮らし、労働市場と商品市場、賃金と物価という成長の基軸が明らかになる。また国民経済の視点に立つと、この有効需要の定式に、政府と海外部門が加わって、マクロ経済は次のように示すことができる。
マクロ経済の定式
国民経済 企業 家計 政府 海外
Y = I + C + G +EX−IM
雇用 消費 財政 交易
(仕事)(暮らし)
(労働市場)(商品市場)
(賃金)(物価)
では成長の基軸である仕事と暮らし、賃金と物価は、産業政策、すなわち商品・産業連関・市場構造と、どのように関わっているのだろうか。
商品・産業連関と市場構造の同心円型経済モデル
これまで経済学は、商品を価格や交換価値の視点で捉え、品質などの使用価値を限界効用に倭小化し、外部経済の中に位置づけてきた。また産業構造論は、第一次、第二次、第三次産業の区分と高次産業比重の増大(ペティ・クラークの法則)以外には、選択と集中でスクラップ アンド ビルドが当然視され、イノベーションとリストラを軸に、産業空洞化と産業調整を是認してきた。
だが産業構造は、商品生産の母体である。商品の体系(物産複合)は、産業の均衡・連関・集積が必要で、分業の利益が機能するのだ。そこで商品の体系と産業構造は、使用価値の概念だが、これを経済学の基軸に据えた経済モデルを提示したい。その国民経済は、次の枠組みで示すことができる。
国民経済の枠組み
技術・生活文化様式(イノベーション・商品の体系・産業連関・市場構造)
商品・生産要素(土地・労働・資本)市場、
社会構成(企業・家計・政府・海外)、
社会規範 (価格・利潤・利子率・地代の体系)
アダム・スミスの産業の優先順位、国内の農業→工業→商業→海外貿易は、現在の一次→二次→三次産業→海外だ。これを、均衡・連関・集積した同心円型の商品・産業構造・社会資本・海外部門として捉え直す。また市場構造は、商品市場と土地・労働・資本の生産要素市場が、地域市場→国内市場→海外市場へ同心円型につながっている。
この経済モデルは、企業・家計・財政・海外部門が、技術・生活文化様式を軸に商品の体系・産業構造・イノベーションを担い、商品・生産要素市場が価格・利潤・利子率・地代の体系で結ばれ、三位一体に位置づけられている。
浜矩子は、ヒト・モノ・カネの黄金三角形を提起した(09.10.4NHKテレビ.)。ヒトは、労働で、生活文化と社会をつくり、賃金に集約される。モノは、商品で、人間の営みでつくられ、価格に集約される。カネは、貨幣で、市場経済の交換手段、価値の尺度、蓄積の手段で、利子率(貨幣の価格)に集約される。
ヒト・モノ・カネは、賃金・価格・利子率という、労働・商品・貨幣の価格で結ばれているのだ。
これまで価格には政策価格、利潤・利子率・地代には公定歩合、賃金には最低賃金・生活保障、課税には税制、関税・為替にはWTO・IMFが対応してきた。
これを、ヒト・モノ・カネの黄金三角形、労働・商品・貨幣の価格を軸に、政策・制度の仕組みを再構築する必要があるのだ。
<ヒト・モノ・カネの黄金三角形(市場経済の枠組み)>
ヒト 人間優先で生活スタイルを変革し、「新しい公共」社会、自助の家族、 共助の地域・企業、公助の政府を再構築。
モノ 現場主導の自然と人間を活かし・つなぐ技術開発で、環境と生活経済 主軸、品目・産業の均衡・連関・集積の利益重視、地産地消と国産優 先の互恵経済に転換。
カネ 域境課税と関税を含む税制改革で内外価格差を調整し、最低賃金・生 活保障が下支えする政策価格の体系を樹立。また内外経済を結ぶ新基軸 通貨を創設し、固定相場制の国際通貨体制を構築。
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