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大野和興 農業ジャーナリスト
2010年07月01日 09時00分
【参院選】農村票はどう動くか 民主党・戸別所得補償政策の神通力は通じるか
自民党から民主党への政権交代の流れの底流に農村票の大変動があったことは、あまり注目されていない。2007年参院選における1人区での自民党惨敗と民主党躍進、09年総選挙での農村部での自民党壊滅といった経過をたどると、政権交代のカギは農村票であったとさえいえる実情が浮かび上がってくる。今回の参院選で農村票はどう動くのか。
自民党の支持基盤は農村にあることを疑うものは誰もいなかった。その農村票がなだれを打って自民党から離れていった背景にあったのは、農村の貧困化である。
経済のグローバル化は海外からの安い農産物の流入と農村工場の国外流失という両面で農村を直撃、地域経済を疲弊させた。政府の農家経済動向調査を分析すると、96年から07年の11年間で農家の農業所得は12%減、農外所得に至っては64%も減っている。米価だけを取り出すと、この間に農家の手取り米価はほぼ半分になった。
コメを出荷すればするほど赤字になる実情に、まず悲鳴をあげたのは借金をして規模拡大してきた大型農家であった。借金が返せないどころか、借りた土地の地代や水利費まで滞納する大型経営が続出した。いずれも自民党と政府が国際競争に勝てる農業づくりとはやし立てて育ててきた経営体である。
そこに民主党が、市場価格が生産費を割り込んだ部分を補償する「戸別所得補償政策」をマニフェストに掲げて農村に攻勢をかけた。この小沢戦略が見事に当たり、農村自民党は壊滅、政権交代が実現した。そして10年度から戸別所得補償政策のモデル事業が始まっている。11年度からは本格実施に入るとことになっている。
では今回の参院選でも戸別所得補償の神通力は効くのか。山形や新潟など米どころの生産者の話を聞いて歩いた。
結論的には、民主党に流れた農村票に、若干も目減りはあるにしろ大きな変動はなく、自民党の回復は難しいという印象を持った。
「この政策は始まったばかりで、結論を出すのはまだ早い、もう少しやらせてみよう」というのが一般的な空気とみてよい。自民党に今の農村の状況を切り開く対案がなく、利権を離れて候補者も次第にお粗末になっている状況が、民主党に有利に働いているという現実もある。
自民党2世候補が立つ選挙区で、大規模経営の取り組むある農民は「自民にはろくなやつがいないからね」と話していた。
さらに、戸別所得補償制度の実施は、農村票の自民党への集票機関として働いてきた農協を金縛り状況に陥らせている。農協の政治組織である農政連は全国組織も地方組織もまったく動けないでいる。その足元では、戸別所得補償の申請や配分に地域の農協がほとんどかかわれないという状況が出ている。
長く続いた自民党時代、農協は農業補助金を農民に流す導管の役割を果たし、それが農協の集票マシンとしての機能を支えていた。いまその仕組みから農協が排除されつつあるのだ。民主党農政はまだ始まったばかりだが、農協の地盤が足元から切り崩されているのである。
また、村を歩いて気づくのは、東京でメディアやエコノミストと称する連中が言うのとは逆の動きがあるということである。
彼らは、戸別所得補償は小規模農家を温存し、大規模農家の成長を阻害する、大規模農家のためにならない、と主張している。しかし、現実には、この政策を最も歓迎しているのは大規模農家である。
今年度実施されるモデル事業で、10アール1万5千円が経営の赤字補填として生産調整を実施したコメ作り農家に支払われる。小さな農家にとってはたいした額ではないが、借金を抱える大規模農家にとってはかなりのまとまった金額になる。20ヘクタール経営では300万円がコストのかかっていない金として入るのである。
これを借金返済にまわせれば、土地を売り払って廃業しなくてもすむ、と打ち明けてくれた大型稲作経営者がいた。ついこの間まで、規模拡大のスターとして行政から注目されていた人である。
だだ、この戸別所得補償も、民主党がマニフェストで公約したほかの政策と同様、財政の壁に突き当たって、来年度の本格実施を前に次第にトーンダウンしてきている。今回の選挙で、「もう少し様子を見よう」と猶予期間を与えられたとしても、次の総選挙では農村票の厳しい裁断を受けることになるだろう。
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