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あのね菅さん、「増税で成長」はありません
畏兄・野口悠紀雄氏の卓見を再録するまでもなく、「増税で経済成長は、語るに落ちた愚論」なのです。古今東西、増税で経済成長を成し遂げた国家は存在しない、と冷徹に認識すべきです。
と申し上げるや、「菅から眠(みん)」を貪(むさぼ)っていた副総理時代の冬眠から目覚めるや、「官から民」ならぬ「菅から官」へと豹変した“啓蟄(けいちつ)”の君子は、口角泡を飛ばして、以下の如く反論されるかも知れません。
いいですか、既に欧州では財政再建の為に増税が具体化しているんです。だから、私が申し上げている「強い経済、強い財政、強い社会保障」は、サミットでも各国首脳から評価されたんじゃないですか。こうした経緯をきちんと踏まえて、議論して下さい、と。
あのね、菅さん、前提条件が日本とは違うのですよ。“第2のギリシャ化”を防げ、と唱和する欧州各国は、2年前の「リーマンショック」に際し、勇猛果敢に経済対策を実施し、デフレならぬインフレ基調なのです。だからこそ、物価上昇分を社会保障へと“誘導”すべく、増税が議論となっているのです。
日本は「先進国」で唯一、デフレから脱していません。こうした状態で、国民所得の1.5倍以上にも達する労働貴族な地方公務員の給与に切り込みもせぬ儘(まま)、安易に増税へと逃げ込んだなら、消費は更に冷え込み、深刻なデフレ・スパイラルに陥ります。本会議の代表質問でも提言した様に、仮に全国350万人の公務員給与を10%削減するだけでも2.5兆円、消費税1%分の「財源」が生まれるのです。
が、「地方公務員の給与をどうこう言うのは、地方分権の考え方として問題」と「菅から官」の惹句(じゃっく)に“相応しき”驚愕の答弁を行った彼は、他方で、善男善女の反応が芳しくないと知るや、「議論を呼び掛ける所までが私の提案だ」と逃げ足の早い奇兵隊発言を打ち、複数税率や低所得層への還付制度も検討、と甘言を弄する迷走です。
おいおい、複数税率や還付制度の導入とは即ち税制の複雑化。役人組織の人員と人件費の肥大化を齎(もたら)します。「フェア・オープン・シンプル=公正・透明・簡素な徴税」とは対極に位置する話じゃありませんか。
財政再建と経済成長は二律背反に非(あら)ず。無論、仰有(おっしゃ)る通りです。が、その前の哲学と、その先の戦略が、凡(およ)そ異なる“奇兵隊”内閣なのです。
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